大腸ポリープ、新たな切除法

大腸ポリープ、新たな切除法 焼き切らず、出血リスク減

成長するとがん化する恐れもある大腸ポリープを、金属の輪などを使って簡単に切り取る新たな方法が広まっている。
従来の熱で焼き切る方法と違って合併症のリスクが減らせる利点がある。
ポリープを全て取り除き、将来のがん化を防ぐ動きも広がっている。

Kさん(男性、70歳)は昨年末、便潜血検査で異常が確認され、大腸ポリープが6つ見つかった。
大腸ポリープは大腸の粘膜にできるいぼ状の突起物。
8~9割が良性の「腺腫」だが、大きくなるとがん化の恐れがある。
 
今年1月、内視鏡から送り込んだ輪っか状のワイヤでポリープを絞り込んで切る「コールドポリペクトミー」と呼ぶ新たな方法で直径3~6ミリのポリープを四つ取った。
大きかった他の二つはワイヤに電流を流して熱で焼き切る従来の方法で取った。
ともに痛みはなく約1時間で終わった。
 
その後の病理検査でポリープは最大13ミリあり、がんが見つかった。
Kさんは「ショックだったが、将来がん化する可能性があるポリープを全て取れて安心した」と話す。
 
大腸がんによる死亡者数は年々増えて2015年は約5万人。
がんの死因では男性は3番目、女性で最多だ。
大腸がんの多くはポリープからで、11の医療機関が参加して6千個以上のポリープを調べた大規模臨床研究によると、5ミリ以下は0・2%、6~9ミリは3・1%、10ミリ以上は31・4%からがんが見つかった。
 
そのため一定の大きさ以上は予防のために切除する。
ポリープの茎部分にワイヤをかけて焼き切る手法が主流で、茎がない平らな場合は粘膜の下層に生理食塩水などを注射して盛り上げて同様に切る。
ただ血管が通る層に熱が伝わってやけどが広がり、切除の数日後に出血や大腸に穴があく合併症の恐れがある。
 
熱を使わない新手法は、合併症のリスクを抑え、治療時間も短いのが利点だ。
欧米で広がり、国内では器具が承認された13年から急速に普及した。
切除する大きさはガイドラインで定められていないが、「10ミリ未満の良性腺腫」が一般的。
10ミリ以上の大きなポリープやがんなどは従来法で切除する。
今後は小さなポリープ切除の標準的な治療法になる。
 
注意も必要だ。
ポリープ下層にがんが浸潤している場合もある。
取り残しても熱でがんが壊死しやすい従来法と比べ、新手法はそのまま残る恐れがある。
拡大内視鏡などで十分な治療前診断を行うことが必要だ。

全切除、がん発症抑制
日本消化器病学会のガイドラインは6ミリ以上のポリープの切除を推奨する(がんの疑いがあるものや進行が早い陥凹型は5ミリ以下でも切除)。
ただ見つかるポリープは半分以上が6ミリ未満で、多く見つかるほど再発やがん化のリスクは高まるといわれる。
ここ数年、ポリープを全て切除する「クリーンコロン」が進んでいる。
 
背景にあるのが12年に米国で発表された研究結果だ。
全て切除した患者2600人を平均16年間にわたって追跡した結果、大腸がんによる死亡率が53%減少。
がんの発症は76~90%抑えられたという。
欧米ではクリーンコロンを前提にガイドラインが作られ、標準的な治療になっている。
 
日本では大規模臨床研究が03年に始まった。
2回にわたりポリープを全て切除した40~69歳の患者約1400人を2群に分け、一方は1年後と3年後に、もう一方は3年後に再検査した。
14年に発表された結果によると、がんなどの発症率はいずれもわずかで差はなし。
現在は1年後に再検査することが多いが、全て切除すれば3年以降でよいと結論づけられた。
 
全て切除すれば、再検査の間隔が広がって患者の負担が減り、大腸がんの発症や死亡の抑制も期待できる。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.5.10