コメで糖尿病予防

コメで糖尿病予防なるか 新品種開発、商品化を加速

日本人の主食であるコメを食べて生活習慣病を予防・・・。
九州大学が世界で初めて開発した新品種のコメに、血糖値の上昇を抑える働きがあることがわかった。
消化されにくいデンプンを含んでいるのが特徴で、「難消化米」や「超硬質米」と呼ばれる。
大阪府立大学新潟大学などのグループがそれぞれ企業と組んで商品化を進めている。
近い将来、コメやその加工食品を食べて、糖尿病など生活習慣病を未然に防ぐ時代が来るかもしれない。

たわわに実る黄金の稲穂・・・。
滋賀県近江八幡市の田園地帯の50アールほどの水田に、血糖値の上昇を抑える働きがあるという不思議なコメが栽培されている。
背丈がやや低いことを除けば、一見して普通のコメと変わらない。
 
このコメは九州大学農学部の研究チームが「金南風(きんまぜ)」という品種を基に2種類の突然変異体をかけあわせて作った「アミロモチ」。
米粒の70~80%を占めるデンプンが、普通のコメに比べて消化されにくく難消化米と呼ばれる。
 
デンプンは主成分の構造の違いが食感や味、消化されやすさに大きく影響する。
普通のコメに含まれるデンプンは、ブドウ糖が直線状につながったアミロースが約20%と、枝分かれが多いアミロペクチン約80%からなる。
コシヒカリのように粘り気のあるコメは、アミロースの量が少なくなり、モチ米になるとアミロースをまったく含まず、アミロペクチンだけとなる。
 
アミロモチもアミロペクチンだけだが、炊いても、もちもち感はなく、ぱさついている。
枝分かれ構造を持つアミロペクチンの1本1本の枝の長さが、モチ米に比べて長いからだという。
炊飯米としては日本人の口に合わないので、主に米粉にして使うことになるが、ピラフには向くという。
 
長い枝の多いアミロペクチンは消化酵素で消化されにくい。
デンプンは消化酵素で分解されてブドウ糖になり、小腸からすぐに吸収されて血糖値を上げる。
アミロモチのデンプンは消化されにくく、ゆっくりと吸収されるので血糖値の上昇が緩やかになる。
 
九州大学と共同研究する大阪府立大学の研究チームは、動脈硬化のマウスに血糖値を上げやすい高濃度の脂質とショ糖を含む餌を4週間与える実験を試みた。
餌にアミロモチの米粉と普通の米粉を混ぜ、血糖値の上がり具合を調べた。
アミロモチの米粉を含む餌を食べたマウスは、普通の米粉を含む餌を食べたマウスに比べて4週間後の空腹時血糖値が1割程度低いことがわかった。
 
健康な人にアミロモチを膨らませたものを水と一緒に20グラム食べてもらうと、約30分後に現れる血糖値のピークが、普通のコメの場合より4割程度低くなった。
 
アミロモチは血糖値の上昇を防ぐだけでなく、コレステロールの吸収を抑えるガンマ―オリザノールや食物繊維も多く含む。
マウスの実験では肝臓への脂肪蓄積を減らす働きもあったという。
今後、人で試験し、糖尿病など生活習慣病の予防米としての普及が期待される。
 
アミロモチは近江八幡市新潟県上越市山梨県富士吉田市で合計約4.7ヘクタール栽培されており、今年の生産量は約19トンを見込む。
来年度は25ヘクタールで100トンの生産を目標にしている。
グリコ栄養食品など7社からなる「WX/AE米推進協議会」がパンやクッキーなどを試作、商品化に挑む。
 
新潟大学の研究チームも、10年前から九大の佐藤教授が開発した難消化性のデンプンを含む超硬質米「EM10」の商品化に取り組んでいる。
EM10はアミロースを含むが、枝分かれ構造を持つアミロペクチンの枝が長く、消化されにくいという。
 
米粉と生トマトを使ったトマトパンの製造技術を開発し、新潟県内のパンメーカーに技術供与する話を進めている。
茨城キリスト教大学と坂井製粉製麺新潟市)とは米粉麺を共同開発。
人で食後の血糖上昇が緩やかになることを確認している。
 
コメは多収量やおいしさを追求する時代から、血糖値の上昇抑制など健康維持に役立つ機能性米を開発する時代に入っている。

 
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参考・引用
日経新聞・朝刊 2011.10.9