アルコール依存症治療

アルコール依存症治療、大塚製薬が「減酒」新薬 アプリで禁煙カウンセリングも

飲酒やたばこなど成功率が低い依存症の治療を変える新たな手法が登場しそうだ。
大塚製薬は年内にアルコール依存症治療薬の製造販売承認を申請する。
断酒ではなく欧米で普及する減酒治療を目的とした日本初の新薬となる。
キュア・アップ(東京・中央)は在宅での禁煙アプリで2019年にも初の保険申請を目指す。
患者の苦痛を減らし、無理なく依存から脱却する治療を後押しする。

大塚製薬厚生労働省の承認を得ればアルコール依存症治療の新薬「ナルメフェン」を18年度中にも発売できる見通しだ。
脳内の分泌物に作用して飲酒したい欲求を抑える。
ただちに断酒するのではなく、まずは多量の飲酒を減らす減酒治療を想定した初の新薬となる。
従来の治療薬は飲酒時に不快感を与えて断酒させるなど患者の負担が重かった。
 
すでに国内で660人の患者を対象に最終段階の第3相臨床試験(治験)を終えた。
多量飲酒(ビール中瓶3本相当以上)した日数は、服用前の月間23日から服用後約半年で同11日まで減った。
 
国内では治療が必要なアルコール依存症の患者数が100万人とされるが、医療機関の受診率は10%未満と低い。
受診しても治療から1年後の断酒率は3割ほどとされる。
大塚では内科や精神科など併発疾患が多い診療科への啓発活動を行い受診を促す。
 
減酒治療が普及する海外では抗てんかん薬「トピラマート」や筋肉けいれん治療薬「バクロフェン」に飲酒への衝動を軽減する効果の報告があり、バクロフェンはフランスで製品化の動きが出ている。
日本では国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)が4月に減酒外来を新設した。

医療系ベンチャーのキュア・アップは19年の保険適用申請を目指し、ニコチン依存症の治療用アプリの治験を10月から始めた。
日本で保険適用に向けて治験を始めた禁煙用アプリは初めて。
厚労省も治療用ソフトウエアを承認する方針を14年に打ち出している。
 
同アプリは在宅で禁煙を継続するカウンセリング機能を持つ。
禁煙外来心理療法を基に吸いたい気持ちを抑える方法を勧めたり励ましのメッセージを送ったりする。
習慣や癖など心理的な依存からの脱却を後押しする。
米国ではすでに100人規模の治験を実施したニコチン依存症対策アプリが複数販売されている。
 
国内では年600万人が禁煙に挑み、外来に通う患者は25万人とされる。
ただ、外来でも禁煙継続率は1年後に3割弱と低い。
薬でニコチン中毒に対処できても、心理面の治療は短時間の診療だけでは難しく、禁煙を続けられない患者が多い。
アプリは院外での治療を可能にでき、効果が公的に認められれば、治療のあり方を変えそうだ。
 
依存症の治療は依存源から強制的に引き離すのではなく、患者が脱却に向けて自ら継続して取り組むことを重視する傾向が強まりつつある。

 
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参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.10.16