がん探知犬、早期発見に期待

がん探知犬、早期発見に期待 山形・金山町が試験導入

「犬診」 人の尿 嗅ぎ分け判定
山形県金山町が今春から、「がん探知犬」による検診を試験的に始めた。
訓練を受けた犬が受診者の尿のにおいを嗅ぎ分けて、がんの早期発見につなげる試みだ。
これまでに数人の陽性反応が見つかるなど成果も出ている。
町は3年かけて検証する計画。東北の小さな町の取り組みに全国が注目している。
 
「がん探知犬の検診に同意されますか」。

5月中旬、金山町の農村環境改善センターで開かれた健康診断で、保健師が受診者に呼びかけた。
健診を受けた女性(62)は「本当に犬ががんのにおいを嗅ぎ分けられるのか」と半信半疑。

多くは不思議そうな表情を浮かべながら説明を聞いていた。  

がん患者の尿には健康者とは違う特有のにおいがあるとされる。
嗅覚に優れたラブラドルレトリバーなどの犬種に適切な訓練を施せば、警察犬がにおいをたどれるように、がんのにおいを特定するという。
 
人口約6千人の同町を含めた山形県北部の最上地域は、がんによる死亡率が全国的にも高い。
厚生労働省によると、女性の胃がん死亡率は全国1位。
雪深く、塩分の高い保存食を食べることが要因とされてきた。
 
状況の打開に向け、町は昨秋、がん探知犬の研究に取り組む日本医科大に相談。
今年度の予算に委託料などとして1100万円を計上し、探知大の検診を試験的に導入した。
胸部X線など従来の検診は別に実施している。
 
探知犬による検査は提出された尿の検体を、日本医科人千葉北総病院(千葉県印西市)に送り、ー部を専用の機器で分析。
残りをがん探知犬を育成する民間企業「セントシュガージャパン(同
館山市)で探知犬に嗅がせる。
受診者の元には3ヵ月ほどで結果が届くという。
 
がん検診に犬を使う研究は10年ほど前から各国で始まった。
同大学では過去に別の自治体で導入を試みたが予算などの関係で見送りに。
本格的な導入は金山町が初めてだ。
 
同大学によると、過去に健康な人の検体が入った4つの箱とがん患者
の検体が入った箱1つを置いて探知犬に嗅がせたところ、99.7%の確率で嗅ぎ分けられた。
尿のほか、呼気などから特有のにおいを嗅ぎ分けることもできる。
 
最近では、乳がんや大腸がんなど、がんの部位が判別できることも分かってきた。
血液検査などに比べて受診者の負担も少ない。
早期発見に役立てられる」と期待を寄せる。
 
同町では5月の検診開始以降、9月末までに40歳以上の住民約600人が受診。
数人からがんの陽性反応が出た。
自治体の視察も相次いでいる。
 
町立金山診療所の地域医療推進員は「がん死亡率低下につなげ、探知犬の普及を後押ししたい」と指摘する。
同町は年間千人の受診を目標に掲げており、3年かけて陽性反応が出た人の経過観察結果などのデータを集め、事業継続を検討する方針だ。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.10.16


<関連記事>
がん患者を探知犬が判別、呼気かぎ分け 九州大が実験
犬の嗅覚を利用して、がん患者の呼気などをかぎ分ける「がん探知犬」を使った九州大の研究者らの実験で、9割以上の精度で判別に成功したことが、29日までに分かった。
近く英国の医学誌「GUT」で発表される。
 
実験は、セントシュガーがん探知犬育成センター(千葉県南房総市)と、九州大大学院消化器総合外科(福岡市)の園田英人助教らが約300人分の検体を集めて実施。
2008年11月から09年6月にかけ、ラブラドルレトリバーのマリーン(9歳、雌)にかぎ分けさせた。
 
5つの容器のうち1つだけに大腸がん患者の呼気を詰めて並べ、マリーンがどれを選ぶかを試したところ、計36回のうち33回は正解を選んだ。
 
呼気の代わりに便から採取した液状の検体を使った実験では、38回中37回正解した。
 
同センターの佐藤悠二所長によると、マリーンは嗅覚が特に優れていたため「体内の臭いで、病気をかぎ分けられるのではないか」と考え、呼気で食べた物を当てるなどの訓練を積んだという。
 
乳がん胃がん前立腺がんで数例試した場合も、かぎ分けに成功したといい、園田助教は「がん特有の臭いに反応したと推測できる。臭いの原因物質を特定できれば、がんの早期発見にもつながる」と話している。

参考・引用
日経新聞 2011.1.29


呼気でがんを早期発見、犬頼みからデバイス
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/MAG/20150501/416863/?rt=nocnt
携帯端末に息をふきかけるだけで、がんなどの病気を早期発見できる。
数年前までおとぎ話だと考えられていた技術が、近い将来に現実となる可能性が出てきた。
パナソニック東芝日立製作所などが世界の研究機関や企業と共に、開発にしのぎを削っている。
実現すれば、これまでの医療/ヘルスケアの世界が大きく変わることになる。
 
においセンサーがもたらす影響の中でも、最も社会的インパクトが大きいと言えるのが、呼気診断への応用だろう。
呼気中の揮発成分の組成を調べて病気を診断する技術で、医療を大きく変えていく可能性が高い。
 
呼気や尿のにおい、そして体臭を用いた診断の歴史は長い。
古くは古代ギリシャの哲学者で医者であるヒポクラテスが提唱した。
現代でも体臭や呼気のにおいが診断指標として使われている。
例えば、糖尿病は「リンゴ臭」、ジフテリアは「甘味臭」、新生児で見つかるフェニルケトン尿症はカビ臭といった具合である。
既に、胃がんの原因の1つとされるヘリコバクターピロリ菌を保菌しているかどうかは、呼気を分析して検査されている。


<私的コメント>
線虫が「がん」を嗅ぎ分けるという報道もありました。
がん探知犬が役立つのが「早期がん」なのか「進行がん」なのかはわかりません。
線虫は、はっきり「早期がん」と書かれています。
「犬頼みからデバイスへ」という記事も興味深いですね。

早期がん「線虫」がかぎ分け
https://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/42172689.html