入院中に薬で健康被害 薬剤性有害事象

入院中に薬で健康被害

医療事故の報告、調査制度の対象は医療機関が「事故」と判断したものだけだが、医療行為に伴う健康被害はもっと幅広い。
 
京都大などの研究グループが2004年に東京、京都、福岡の大病院の入院患者3456人を対象に、薬による健康被害を調べた。

薬の種類や量の間違いのほか、通常の治療を通じて起きた消化管出血やアレルギー反応、薬剤が原因と考えられる下痢、腎機能低下も「薬剤性有害事象」として集計した。
 
その結果、5人に1人に当たる726人で1010件起きていた。
死亡が14人、生命にかかわる被害が46人にのぼった。
だが有害事象のうち院内で報告されたのは4%足らずだった。
 
この研究を行った兵庫医大M教授(臨床疫学)は09年に小児患者、10~11年に精神科病院の患者で同僚の調査を実施。
薬剤性有害事象は前者で5人に1人、後者では2人に1人以上で起きていた。
M教授は「入院中に予期しない症状が出たらまず薬を疑ってほしい。
医師の処方を点検し、患者の状態を薬剤性有害事象の観点から検討する薬剤師のチェック機能を高めることが重要だ」と指摘する。

参考・一部引用
朝日新聞・朝刊 2018.7.11

<私的コメント>
ごく最近、重篤な薬剤アレルギーを経験しました。
それは他の医療機関でピロリ菌除菌のための薬剤を1週間処方されて服用した方でした。
ちょうど服用が終わったころから全身に薬疹が出始め、口腔粘膜にも変化が出たため皮膚科を受診。
ステロイドの塗布にて悪化したため当院を受診されました。
塗布剤は中止してステロイドの点滴と内服にて軽減しました。
他に、エフェドリン含有の薬剤で重篤なアレルギーが起きた症例もあります。
重篤な薬疹の場合には、軽快するまでに1か月以上必要な場合があります。


<関連サイト>
薬剤性有害事象の臨床疫学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt/44/4/44_325/_pdf

副作用について理解しよう
https://www.jshp.or.jp/banner/oldpdf/p50-9.pdf
・国際的には、薬剤性有害事象は急性期の医療機関において、患者の7.5~10.4%に発生している。
米国では,薬剤性有害事象は入院患者の16人に1人に発生し、薬剤性有害事象によって14万人が毎年死亡していると推定されている。

・また、別の米国の研究では、100入院患者あたり6.5件、1,000患者日あたり11.5
件の薬剤性有害事象が発生しており、その45%は命に関わる可能性のある医原性有害事象であった。
外来通院中の患者においても同様に薬剤性有害事象は多く、米国では入院理由の1.4%が薬剤性有害事象と報告されている。
また,外来で処方を受けている患者の25%が薬剤性有害事象を経験している。
薬剤性有害事象の28~56%は予防可能であり、その多くは処方時のエラーである。

・薬剤性有害事象は日常診療で気付かれることは少なく、実際に発生している薬剤性有害事象の3.7%しかインシデントレポートなどの医療従事者からの自発報告で認識されず、米国での研究でも同様に3.7%の検出率であった。

・薬剤性有害事象は日常診療で気付かれることは少なく、実際に発生している薬剤性有害事象の3.7%しかインシデントレポートなどの医療従事者からの自発報告で認識されず、米国での研究でも同様に3.7%の検出率であった。


科学的な安全対策への転換をめざして(2) ―個別の有害事象が副作用になるまで―
https://www.pmrj.jp/teigen/PMDRS_45-2-098.pdf
副作用 ( A D R) の 疑 い 」と い う 用 語は,医療従事者あるいは研究者が個々の症例におい て薬がイベントに関連するかもしれないと判断したときに用いる。
定義上、企業や行政に自発報告される症例報告は、「副作用(ADR)の疑い」である。
一方、「副作用(ADR)」という用語は、薬 x が作用 y を引き起こしうることが広く認められている場合に用い、個々の症例に関して用いられるべきではない。

副作用と有害事象・副作用の重篤と非重篤
http://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19351.html

私的コメント;「日本ジェネリック製薬協会(JGA)」ではこのような記事をHPに掲載しています。
しかし、ジェネリックを使用していて副作用が出現した場合、多くのドクターは副作用報告書を提出しません。
それはジェネリック製薬会社との連絡が先発医薬品メーカーほど容易ではないためです。
ジェネリックに副作用なし」といわれるのはそういった事情からです。
「安ければいい」という影にはこういった問題があることも知っておいていただきたいと思います。