睡眠薬・抗不安薬

睡眠薬抗不安薬 ご注意を 処方量だけで依存症も

服用やめ体調悪化
医師から処方された睡眠薬抗不安薬を飲んでいて、薬物依存になってしまう患者がいる。薬をやめられなくなったり、やめた後に離脱症状が出たりして、苦しんでいる。
広く使われている薬だが、量を減らす試みも始まっている。

長野県松本市に住むW.Dさん(47)はニュージーランドから1992年に来日し、英語教師や国際交流の仕事に携わっていた。
日本語が堪能で、仕事は順調だった。
 
2000年にめまいの症状が出て、耳鼻科にかかった。
脳の病気と診断され、ベンゾジアゼピン抗不安薬を処方された。
この薬は不安、不眠、抑うつといった症状がある患者に、広く使われている薬だ。
 
飲み始めると、めまいは落ち着いたものの、2ヵ月たたないうちに体のふらつきが起きた。
4ヵ月後からは強い不安に悩まされた。
 
仕事を続けられず、01年にニュージーランドに帰国。
ベンゾジアゼピン依存症と診断された。
薬物中毒治療専門の医師を受診し、薬の量を少しずつ減らしてゼロにした。
しかし、断薬後も離脱症状に苦しんだ。
 
ひどい不安感や情緒の不安定。
光を異常にまぶしく感じ、テレビを見られない。
体に力が入らず歩けない。
断薬して1年間で多くの症状は消えたが、突然の不安感は10年ごろまで続いた。
依存症は生き地獄。
希望を失う人もいる。
離脱症状の適切な治療を受けられる施設が必要でだ。

神戸市の40代男性も、べンゾジアゼピン系抗不安薬離脱症状で苦しんできた。
社会不安障害と診断され、09年まで4年半、医師の指示通り飲み続けた。
やめた2日後から、異様にまぶしい、目が痛いなどの症状が出た。
医師に相談すると「離脱症状の可能性がある」と言われた。
今でもまぶしさや、まぶたのけいれん、筋肉がぴくぴくする症状があるという。
 
ベンゾジアゼピンの常用量依存とは、医師が治療のために処方する常用量でも
長期間使うことで薬の依存が起きる状態を指す。
8カ月以上続けるとなりやすいという報告もある。
薬をやめると離脱症状として不安や、不眠、発汗、けいれん、知覚過敏などが出るこ
とがあるとされる。

自己判断で中止は危険 
欧米では1970年代以降、ベンゾジアゼピン系薬による依存や乱用が問題になり、英国では処方日数が制限された。
日本で長期に漫然と使われているのは問題だ。
医師が依存をつくっているともいえる。
 
薬をやめられない患者や、やめた後の症状に苦しむ患者から相談を受ける医師も多い。
1年以上かけ少しずつ薬を減らしてやめた人もいる。
急にやめると離脱症状が出る。
患者の自己判断でやめてはいけない。
 
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部では、精神科がある全国の病院を対象に、薬物関連障害の調査を2年ごとに実施している。
原因の1位は覚醒剤、2位は有機溶剤が定位置だったが、2010年年に、それまで3位だった睡眠薬抗不安薬有機溶剤を上回って2位になった。
全体の17.7%を占め、この薬による依存は珍しい問題ではないという。
 
薬の量をなるべく減らそうという動きもある。
 
ある大学病院では、ベンゾジアゼピン系薬を処方されている患者数が一昨年の8588人から昨年は7054人に約18%減った。
医師と薬剤師が対策に取り組んだ結果だ。
 
ベンゾジアゼピン睡眠薬抗不安薬の作用や副作用、薬以外の対処法を知ってもらおうと、患者向けの冊子をつくって薬剤師が配った。
医師や薬剤師が参加する勉強会も開いてきた。
 
患者は副作用に気付いていないこともあるので、情報提供が大切だ。
薬をやめるときは1年で半減するくらいゆっくりと減薬すつことがポイントだ。
 
厚生労働省は薬の使い過ぎ対策に乗り出す。
1回の処方で抗不安薬を3種類以上出した場合、医療機関に払われる診療報酬を減らす改定を(2014年)10月から実施する。

参考・一部改変引用
朝日新聞・朝刊 2014.7.22


<関連サイト>
ベンゾジアゼピン睡眠薬 解説
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8272.html
(要パスワード)
脳の活動(興奮)を抑えることで眠りやすくし、睡眠障害などを改善する薬
・脳内で神経興奮に関わるベンゾジアゼピン受容体(BZD受容体)というものがある
・本剤によりBZD受容体が刺激されると、脳の興奮が抑えられ眠気などがあらわれる
・超短時間型:トリアゾラム(主な商品名:ハルシオン
 短時間型:ブロチゾラム(主な商品名:レンドルミン)、ロルメタゼパム(商品名:エバミール、ロラメ
 ット)、リルマザホン(主な商品名:リスミー) 
・中間型:フルニトラゼパム(主な商品名:サイレースロヒプノール)、エスタゾラム(主な商品名:ユ
 ーロジン)、ニトラゼパム(主な商品名:ベンザリンネルボン) 
・長時間型:クアゼパム(主な商品名:ドラール)、ハロキサゾラム(商品名:ソメリン)、フルラゼパム(商品名:ダルメート

本剤(BZD系睡眠薬)はあくまでGABAを介した作用をあらわす特徴(仮に過量投与となり薬剤成分が飽和的にBZD受容体に結合した場合でもGABAの作用を増強させることには限度があるとされる)などから、本剤以前に開発されたバルビツール酸系睡眠薬などに比べると一般的に安全性や有用性などが高いとれ、生命の維持機構に関連する脳幹の抑制などへの懸念がかなり少ないといったメリットが考えられる。
ただし、持ち越し効果(睡眠薬の効果が翌朝以降も持続し、ふらつき、脱力感などがあらわれやすくなる)、筋弛緩作用(筋肉の緊張が緩むことで、ふらつき、転倒などがあらわれやすくなる)、健忘(一過性の物忘れ)などの副作用への注意は必要となる。
通常、作用持続時間の長い薬剤ほど持ち越し効果や筋弛緩作用があらわれやすい傾向があり、特にふらつきや転倒などによるリスクが高い高齢者などに対しては注意が必要となる。


ベンゾジアゼピン睡眠薬(非BZD系睡眠薬) 解説
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8271.html
(要パスワード)
ベンゾジアゼピン睡眠薬に比べ、筋弛緩(筋肉の緊張が緩み力が入りづらくなる)作用が少ない
・一般的に、脱力や転倒などの副作用が少ないとされる
アモバンマイスリー、ルネスタなど