野菜ジュースはがん予防になるか

野菜ジュースは予防にいい?

野菜や果物は心筋梗塞脳卒中の危険を減らすほか、がんの予防にも有効だ。
特に食道がんのリスクはほぼ確実に下がりますし、胃がんでもその可能性がある。
しかし野菜や果物の摂取量は減少傾向にあり、問題だ。

では、忙しい私たちでも手軽に飲める野菜ジュースやフルーツジュースでも、野菜や果物と同じような効果が得られるのだろうか?
2013年に日本人研究者が発表した大規模な観察研究では、果物をとっている人ほど糖尿病のリスクが低下していた。
糖尿病はがん全体のリスクを約2割高める。
膵臓や肝臓のがんは約2倍に高まるから、果物をとればがんのリスクも減るものと思われる。
この研究では特にブルーベリーが有効だったが、興味深いことに、フルーツジュースをたくさん飲んでいる人では糖尿病の頻度が高くなっていた。
別の研究でも、毎日フルーツジュースをコップ1杯飲むと、糖尿病のリスクが7%高くなることが分かっている。
果物をジュースに加工する際に不溶性の食物繊維などが取り除かれてしまうためかと推測される。
野菜ジュースでも、がんを予防する効果は野菜そのものを食べるほどは期待できない可能性がある。
なお、野菜の摂取は生野菜である必要はなく、野菜いためでも野菜スープでも構わない。
果物に含まれる果糖は血糖値を上昇させるが、果物をまるごと食べれば血糖値はそれほど上がらない。
最近ブームの「糖質制限ダイエット」でも果糖は嫌われ者のようだが、加工していない果物にはダイエット効果があることが証明されている。
緑黄色野菜や果物に多く含まれるβカロテンをサプリメントとして服用すると、肺がんのリスクがかえって上昇することが明らかになっている。
さらに、βカロテンは心筋梗塞の死亡率も高めることが分かった。
クルミなどのナッツ類はがんを防ぎ、健康にプラスだが、ナッツ類に多く含まれるビタミンEのサプリメントを取りすぎると逆に死亡率が上昇する。
日本人は食品に含まれる成分に惑わされがちだが、実は、有益な食品そのものを食べることが一番なのだ。

執筆 
東京大学病院准教授・中川恵一先生
参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2018.10.24