牛乳アレルギー 「少量摂取で耐性」

牛乳アレルギー、治療へ研究 「少量摂取で耐性」検証

子供に多い牛乳アレルギーを巡り、国立成育医療研究センター(東京)は治療法の確立に向けた臨床研究を始めた。
ごく少量の牛乳を取り続けて耐性をつける「経口免疫療法」に加え、ほかのアレルギーで抑制効果があったとされる乳酸菌も併用し、牛乳アレルギーの改善に役立つかを確かめる。
2019年秋をめどに結果をまとめる予定だ。

厚生労働省によると、食物アレルギーは1歳未満の乳児の約10%、1~6歳や小学校以降の子供の5%程度で発症するとみられる。
成人も含めた全年齢での発症率は推計約1~2%。
消費者庁が16年に公表した調査結果によると、原因の食物では鶏卵が最も多く、牛乳が次ぐ。
同センターによると、牛乳のアレルギーは治療が難しい傾向がある。
今回の研究では1~18歳の牛乳アレルギーの子供60人を30人ずつの2グループに分け、ともにごく少量の牛乳が入った蒸しパンを半年間、食べ続けてもらう。
一方のグループは乳酸菌が入った飲料を毎日飲み、もう一方のグループは乳酸菌が入っていない飲料を飲み続ける。
同センターによると、これまでのアレルギー関連の研究では、腸内にいる乳酸菌が免疫の過剰な働きを抑え、花粉症などの発症を防ぐ効果があると考えられている。
牛乳アレルギーの患者はヨーグルトやチーズなど乳酸菌を含んだ製品を取る機会が少ない。
今回の研究では乳酸菌入りの飲料を飲むグループと飲まないグループを対照し、牛乳アレルギーにも効果があるかどうかを検証する。
19年秋にも結果をまとめ、効果が確認できればより大規模な臨床試験を実施して実際の治療につなげる考えだ。
アレルギーの治療では原因となる食物を少しずつ摂取して耐性をつける経口免疫療法の研究が進んでいる。同センターも乳児に少量のゆで卵の粉末を約半年間食べ続けてもらう研究を行い、約8割で卵アレルギーの発症を予防できたとする結果を16年に公表した。
ただ、17年11月には神奈川県立こども医療センター(横浜市)で、牛乳アレルギーの経口免疫療法の研究に参加した子供が一時心肺停止になった。
これを受け日本小児アレルギー学会は研究に際し救急対応に万全を期すよう注意を呼びかけた。
国立成育医療研究センターの研究では、事前に牛乳を飲んで症状が出る許容量を確かめ、実際の研究時には1回の摂取量を許容量の100分の1以下に抑える。
同センターは「安全性の確保に配慮しながら効果的な治療法の確立を目指したい」と話している。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2018.10.30