ブルーライト、目への影響で大論争

ブルーライト、目への影響で大論争 体内時計狂わす見解

スマートフォンなどから出る青色光「ブルーライト」は目に悪影響を与えるのか・・・。
海外の科学誌の論文をきっかけに論争が起きている。
国内ではブルーライトを遮る眼鏡も普及しているが、青い光は身体にどう影響するのだろうか。
 
きっかけは目の細胞に悪影響を与えるとする論文が7月、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載されたことだ。
米ウェブメディアが「画面があなたの眼球の細胞を殺している」などと報じた。
 
これに米眼科学会が強く反応した。
翌月、「スマホブルーライトでは失明しない」とのタイトルの見解を学会サイトに掲載。
論文で示された実験の条件が、日常生活では起こりにくいと指摘し、この研究の結果がスマホをやめる理由にはならない、とした。
この米眼科学会の見解などが日本で報道されると、国内でも「ブルーライトは危険か、安全か」といった反響が広がった。
 
こうした事態を受けて、眼科医らでつくるブルーライト研究会は10月、「ブルーライトの影響は慎重に検討していかなければならない」などとする文書を発表した。
 
ブルーライトが人間の角膜や網膜といった目の組織や、視力に及ぼす影響はまだよくわかっていない。
7月の論文以外にも動物実験や細胞レベルでは様々な報告があるが、その結果をすぐに人に当てはめて考えることはできない。
加齢黄斑変性のように紫外線がリスク要因になると指摘される目の病気があることを踏まえ、目への影響を危ぶむ声もあるが、研究の蓄積はまだ十分ではなく、臨床上、影響が確かめられたわけではないという。
 
パソコンでの作業などで目が疲れるのは、まばたきが減って目が乾燥するドライアイの影響が大きい。
ただ、目が乾いて表面を覆う涙の層が均一でなくなると、波長の短いブルーライトが目の表面で乱反射して「見えづらさ」を感じる要因になるという。
ある実験では、ブルーライトを制限する眼鏡を使うと、パソコン作業時に目が疲れにくいという結果が得られている。

夜のスマホやテレビの影響は?
一方、影響がはっきりしていることもある。
浴び方によっては人の体内時計を狂わせてしまうのだ。
米眼科学会も見解で「人間の体内時計に影響することは証明されている」とし、具体的な数字は示していないが寝る前に画面を見る時間を制限することを推奨する。
 
人の体内時計は平均24時間10分前後。
24時間より少しずれている。
このリズムを1日の長さと合わせる最も大切な要素が光で、起床して光を浴びることで体内時計をリセットしている。
実は、ブルーライトは太陽光にも含まれていて、リセットに大きく関係する。
 
人の網膜には光を感知する2種類の視細胞があって、明暗や色合いを感じ取っていることは以前から知られていた。
さらに最近、ブルーライトにあたる波長の光だけをよく感知する「第三の視細胞」が発見された。
この視細胞がブルーライトを感知すると、眠気を引き起こすメラトニンと呼ばれるホルモンの分泌が抑えられる。
 
メラトニンは本来なら寝る2時間前くらいから再び分泌が始まる。
しかし、常にブルーライトに接していると夜も分泌が抑えられ、体内時計が狂う。
朝の光は積極的に浴びた方がいい。
でも、日没以降にブルーライトを浴びると体内時計は遅れてしまう。
 
小規模ながら、人での実験結果もある。
健康な大人12人を対象にしたアメリカの研究では、LEDを使った電子端末と紙の本の読書を、消灯前に4時間、5日間ずつ行って、睡眠への影響を調べた。
その結果、LED端末の方が体内時計が平均1.5時間夜型に移行し、眠気を感じにくくなり、寝付きも悪くなった。
 
とはいえ、パソコンやスマホ、テレビやLED照明は、日常生活と切っても切れない。
夜は暖色系の照明を使い、スマホの照明はできるなら暗くする、などが対処法として挙げられる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.11.12