ノロウイルス

遺伝子変異、感染しやすく ノロウイルスなお警戒 手洗いやマスク、草の根予防が要

嘔吐や下痢を引き起こすノロウイルスとみられる集団感染など感染性胃腸炎が流行する時期がある。
ピークは例年12月頃。

特に高齢者と子どもは重症化に注意が必要 自分はかかっていないと思っている人も感染を
最近、ノロウイルスの遺伝子変異が見つかった。
変異はわずかだが、体に備わる免疫で働く抗体がウイルスに結合して邪魔をする部分にちょうど変化が起きた。
変異が起こると、従来の抗体が役に立たず、ほとんどの人は免疫がないと考えられる。

ただ、通常より症状が重くなるような変異でなければ、それほど怖がる必要はない。
むしろ、この機に予防のための手洗いなどの習慣を身につけたい。
中でも食事の前に手を洗うことがもっとも効果的。
これを一人ひとりが励行する「草の根予防」が感染拡大を抑えるのに有効という。

マスクも大切だ。
吐いた物からは目に見えないほど小さな水滴が飛び散っているので、近くにいると飛沫感染の恐れがある。マスクはこれを防ぐのに役立つ。
不特定多数の中に感染者がいるかもしれない外出先に限らず、家庭内に患者がいる場合も予防になる。
1個の水滴にはノロウイルスが100~1万個ほど含まれるが、たった10個で感染することもあるほど感染力が強い。
マスクには別の効用もある。
食事をするときはマスクを外すので、そのときに手を洗うことを思い出すきっかけになる。

塩素系で消毒を
患者の吐いた物やふん便には大量のウイルスが含まれている恐れがあるので、処理でも注意が大切だ。
床に飛び散った場合などは、マスクや手袋などをしペーパータオルなどでふき取る。
ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、口から入り感染する可能性もあるので、残さないように丁寧に除去する。
その後は次亜塩素酸ナトリウム、いわゆる塩素系の漂白剤で消毒する。
(吐いた物などの)有機物が多いと消毒剤がウイルスに効きにくいので、まず除去してきれいにしてから消毒する。
カーペットなどで消毒剤を使いにくい場合はアイロンで加熱消毒する方法もある。
食器や調理器具、タオルなどを加熱消毒する場合はセ氏85度以上の熱湯で1分以上やるのが有効といわれる。
アルコールはノロウイルスにあまり効かないが、手を洗った後に少し残ったウイルスを消毒するのには良い。
予防法などノロウイルス関連情報は、厚生労働省のホームページなどで詳しく解説している。

注意して生活しても感染してしまうケースも多い。
その場合、症状が重くなる恐れがある子どもと高齢者は注意が必要だ。
特に高齢者は死亡事故の可能性があるので要注意。
吐いた物をのどに詰まらせて窒息する例や、誤って気道に飲み込み肺に入って肺炎を起こす場合もある。
肺炎が重症化すると死につながる恐れもある。

水分補給欠かさず
子どもは脱水状態になる危険があるので、水分補給をしたい。
こまめに少しずつ、できれば電解質液がよい。
吐いてしまうにしても、水分は大切なので飲ませた方がよい。
もし、無理に飲ませようとしても受け付けない、排尿が午前と午後に各1回ぐらいと少ない、元気がないといった症状が出始めたら要注意だ。
脱水状態が進みつつあると考えられる。
早く医療機関を受診する必要がある。

通常、嘔吐や下痢などの症状が続くのは1~2日といわれる。
だが、症状が治まってからもしばらくは排せつ物中にウイルスが含まれるので、人にうつす可能性がある。長い人だと1カ月ぐらい、少なくとも平均的な1週間ほどは注意が必要だ。

軽症や、症状が出ない不顕性感染というケースもある。
そのまま気づかずに、トイレの後などによく手を洗わないと、感染を広げてしまうかもしれない。
家族など周りに患者がいた場合、症状がないからといって自分が感染していないと思わず、手洗いを徹底したい。

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2013.1.11