病気の予測をネットで手軽に

ツールで知るリスク 病気の予測をネットで手軽に

最近は健康診断の結果を使い、インターネットで手軽に、自分の病気のリスク評価や改善すべき生活習慣を調べることができる。
 
患者と予備軍が全国に約1千万人ずついるとされる糖尿病。
国立国際医療研究センターは昨年12月、インターネット上で使える「糖尿病リスク予測ツール」を公表した。
数万人の健康診断データを元に、人工知能で活用される、特徴や法則を見つけるのが得意な機械学習の手法で開発。
入力データから、同じような条件の人が、3年以内に糖尿病を発症するリスクを返す。
 
同センター疫学・予防研究部部長は「リスクだけでなく、生活習慣という自分でコントロールできる要因のうち、何をどう改善したらいいのか気づくきっかけにして欲しい」と話す。
 
こうしたリスク評価は他にもある。
国民の2人に1人が、生涯の間にかかるとされるがん。
国立がん研究センターは、「がんリスクチェック」を公開している。
 
年代や性別によって、胃がんや大腸がんなどのリスクを調べることが出来る。
身長や体重、血圧などの入力に対して結果を返すという形は同じだ。
同センターは、過去約20年、生活習慣とがんなどの関係を調べてきた。
リスクチェックは、あらかじめ同センターの疫学研究で報告されたデータに基づいて作られている。
 
同センターの予防研究部長は「研究で集めたエビデンス(科学的根拠)は集団の分析結果として公表されているので、一般の個人には身近に感じにくい面もある」と指摘する。
リスクチェックなら、一人ひとりの疑問に「個別化された情報」を返す、双方向の形で、自分のこととして考えてもらいやすいという。
今後、活用の効果を調べたり、より効果を上げる方法を考えたる予定だ。
 
日本動脈硬化学会のツール「これりすくん」はスマートフォンなどで使えるアプリにもなっている。
狭心症心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクを予測。
若いのにLDLコレステロールが高い人などは「家族性高コレステロール血症」の疑いがある。
定期健診の結果でリスクを確認し、高くなっているようであれば医師を受診するきっかけになる。
 
ただ、注意点もある。
生活習慣改善は、たくさんの人がやれば一定の人数に効果があるが、個人では差が出る。
集団としての病気のリスクは下がることは間違いなくても、それを直接個人に当てはめることはできない。
 
ツールの限界もある。
禁煙や酒量を減らすなど、改善した生活習慣を入れると、リスクの下がった結果が出る。
だが、その結果は「ずっとその習慣を続けていた人」の評価だ。
生活を改めても、すぐにはリスクは下がらない。
早く改善して、長く続けることが大切となる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.4.6