オーダーメード検診

オーダーメード検診の成果は

昨年10月、東京都八王子市が、大腸がん検診の医療費削減効果を指標にして「成果報酬型官民連携モデル」を導入した。

八王子市の取組みは、前年度に市の大腸がん検診を受診しなかった住民の受診率を向上させることを目的にしている。
市と契約した民間のシンクタンク人工知能(AI)を活用して1200人を抽出し、受診勧奨通知を送付する。通常、自治体が送るリーフレットやハガキなどの勧奨通知の内容は、さまざまな工夫が盛り込まれているとしても、対象者を問わずすべて同じだ。
 
しかし、今回の送付対象は、受診意欲が低いと思われる「手強い」相手だ。
そこで、対象者が過去に受診した健康診断の問診項目を分析し、喫煙、飲酒、運動不足、肥満といった大腸がんの発血リスクを洗い出した。
一人一人のリスクを伝えながら検診の受診を勧める「オーダーメード型受診勧奨」を実施した。
 
その結果、約3200人が受診し、10%増が目標だった受診率は18%増を達成した。
自分のリスクをズバリと指摘されると、人は行動を変えることがわかった。
 
八王子市の大腸がん検診で、がんが発見される確率は受診者全体の約0.3%ということから、今回の取組みでは約10人からがんが見つかる計算になる。

市の分析によると、大腸がん検診を受診し、早期で見つかった人の医療費は、約65万円、検診を受けずに大腸がんと診断された人の医療費は約250万円。
この10人が旱期がんであると仮定すると、八王子市では、約1800万円の医療費削減効果があったことになる。
 
今回の成果指標は、受診率の10%増を目標上限値として、約240万円が最大支払額となっていた。
八王子市ではその全額を支払ったが、それをはるかに上回る医療費削減効果があったことになる。
 
八王子市では、さらに大腸がんの疑いがあると判定された人に、きちんと精密検査を受けてもらう取組みにもこの成果報酬型官民連携モデルを導入している。   

執筆
東京大学病院・中川 恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.6.19