110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活 その5

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イローデック 油彩60号「アイリス」エルミタージュ
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前回に引き続き家森幸男先生の本からの
紹介です。

「今110歳まで生きられる!  
脳と心で楽しむ食生活」
家森幸男 著  生活人新書  
日本放送出版協会 発行

興味を持たれた方は是非、本でお読みください。


困難つづきのシルクロード調査

世界のどの地域に調査に行くか事前に調べていくなかで興味を抱いたのが、中華人民共和国の西北にある新疆ウイグル自治区でした。
面積は日本の約5倍で、険しい天山山脈、広大なタクラマカン砂漠、そして肥沃な盆地などから成り、東西交易の道として知られるシルクロードが走っています。
漢民族のほか、ウィグル族、カザフ族、回族などが暮らしているのですが、中国の統計を調べてみると、自治区内でも地域によって平均寿命に差があることがわかりました。
長寿なのはウィグル族の多く住んでいるトルファンとホータン、短命なのはカザフ族の多く住んでいるアルタイです。
同じシルクロード地域に生きる民族でありながら、この違いはどうして生まれるのか。
それを知るために、中国にシルクロード地域の調査を希望したところ、新疆医学院と特別の共同研究いう形で調査が認められました。
 まず1987年に区都である大都市のウルムチ漢民族の調査を行い、翌88年にいよいよ目的の地域に足を踏み入れましたが、たいへんな苦労の連続でした。



野菜を食べないカザフ族

さて、調査したうちのアルタイ、そしてトルファンとホータンの人たちの尿のデータには、はっきりと差が出ました。
長寿であるウイグル族の住むトルファンとホータンではナトリウムが少なくてカリウムが多かったのですが、短命のカザフ族の住むアルタイではナトリウムが多すぎ、カリウムが少なかったのです。
その理由は、それぞれの食生活を見れば一目瞭然でした。
カザフ族は遊牧民で、「パオ」と呼ばれるテントに住んでいます。
夏の問は草原に羊を放牧させて草を食()ませ、草がなくなれば別の土地に移動するという生活を送り、冬は低地に下りて羊とともに暮らします。
彼らの食生活の特徴の一つに、プーアル茶に塩やバターを入れた塩茶、バター茶をよく飲むことが挙げられます。
こうした塩分の高いものを日常的にとっているのですから、ナトリウムの値が高くなるのも当然です。
また、カザフ族の人たちは野菜や果物をまったくといっていいほどとりません。
遊牧生活を送っているため、畑で作物をつくることができないというのがその理由ですが、たとえ手に入ったとしても、「野菜は羊が食べる草であって人間が食べるものではない」と考えており、ほとんど口にしないのです。
これでは、カリウムの値は下がってしまいます。
カリウムの値が高ければナトリウムの害を打ち消してくれますが、値が低いわけですから、高血圧を起こしやすくなり、脳卒中などで死亡する危険性は高まります。
そして、彼らは羊から油をよくとります。
アルタイに着いた私たちは、客人として羊でもてなされました。
目の前でまるまる一匹が料理され、いちばんおいしい鼻筋のところが客人に捧げられます。
さらに、尻のところに10センチほどある座布団のような脂の層も、とても上等でおいしいので、やはり私たちに差し出されました。
日本にいるときは、霜降りの肉でも健康を考えて脂身をとりのぞいて食べていますが、このときはうやうやしくいただきました。



カザフ族に短命の人が多いのは、こうした食生活がもたらす必然的な結果です。
私たちが現地を訪れたのは、初秋のころ。
広々とした大草原で馬に乗って羊を追いかける姿は、雄大で魅力的でした。
そんな彼らの暮らしぶりが食生活に悪い影響を及ぼしてしまっているいうのは、実に残念なことです。
調査中、私たちは60歳以上の人も検診させてもらおうと考えていたのですが、それはかないませんでした 
なぜなら、カザフの人たちの多くは50歳代で亡くなってしまうため、60歳以上の人がなかなか見つからなったからです。

ウイグル族の主食は野菜たっぷりの混ぜご飯

ウイグル族の住むトルファンやホータンは、同じ新疆ウイグル自治区にあるとはいえ、アルタイとはかなり環境が違います。
アルタイは北の方にある草原の地で、夏は涼しく、冬は寒さが厳しい気候です。
一方のトルファンやホータンは、砂漠の中のオアシス都市。
温度差が激しく、夏は40度を超え、冬はマイナス20度以下になることもある土地柄です。
実はウイグル族も、かつてはカザフ族と同じ遊牧民だったのですが、いつしかこ
こに定住するようになりました。
遊牧民だったころはカザフ族と同じような食生活を送っていたかも知れませんが、ナトリウムとカリウムの値にも表れたように、今ではまったく違っています。
まず、お茶にはバターを入れません。
肉はみな焼いて脂を落とし、香辛料をつけて食べています。
そして、カザフ族との決定的な違いは、野菜や果物を豊富に食べていることです。
ことです。トルファンもホータンも砂漠の中にあるとはいえ、オアシスで水は豊富だし、定住していますから、作物を育てることができます。ハミウリというマクワウリのような大きなウリなど、おいしい野菜や果物がたくざんあり、しかも半地下に保存することで、冬の寒いときでも保存のための食塩を使わずに野菜を食べることができます。
ですから、ナトリウムの値は低く、カリウムの値が高いのです。



こうしたバランスのとれた食生活を象徴するのが、主食である「ポロー」です。
一見ピラフに似た混ぜご飯で、日本のジャポニーカ米ではなくインディカ米を使います。
つくり方は、まず羊の肉を植物油で妙め、さらに野菜をドーンと入れておきます。
とくに豊富なのがニンジンなどの根菜類。
そこに水を加えて、ほんのひとつまみの岩塩で味付けして煮こんだところに米を入れて炊き上げるのです。
お米の炭水化物はもちろん、蛋白質や食物繊維、カロチンなどの抗酸化栄養素を一度にとりいれることが可能で、 これなら1日30品目の目標も容易に達成できそうです。
主食に米を食べるというのは長寿の秘訣の一つです。
私たちの研究により、お米を食べている人たちは食べていない人たちに比べて肥満が少なく、コレステロールも少ないため、心筋梗塞が少ないことがわかりました。
ウイグル族の人たちは、このポローと一緒に、羊肉の串焼きである「シシカバブ」を食べ、それ以外にも野菜や果物を食べ、さらに酸乳(サンナイ)と呼ばれるヨーグルトも飲んでいました。
コレステロールの少ない米を主食にし、肉は脂を落として香辛料を使うことで食塩すなわちナトリウムのとりすぎを抑え、そのナトリウムを打ち消すだけのカリウム動脈硬化を抑える抗酸化栄養素を含む野菜や果物をたっぷりと食べ、そのうえ免疫強化作用も期待されるヨーグルトも飲んでいる。
ウイグル族が長寿であるのも当然といえるでしょう。

ミネラルたっぷりの水も長寿の秘密


ウイグル族の生活には、ほかにも長寿の秘密がたくさんありました。
まずは水です。
トルファンは「西遊記」の三蔵法師としておなじみの玄奘(げんじょう)三蔵が経典を求めてシルクロードを旅したときに立ち寄ったところですが、そのころからすでにあったといわれているのが「カレーズ」と呼ばれる地下水路です。
周囲の砂漠に20メートルおきくらいに点々とつくられた井戸は地底でつながっており、それをたどっていくとはるか天山山脈にまで続いています。
雪解け水を地下水系で引いてくることで砂漠にオアシスをつくったのです。
この水があるからこそ、野菜や果物を豊富に育てることができるのですが、実はそれだけではありません。
この水を日本に持ち帰って専門家に調べてもらったところ、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルがしっかりと入っていました。
この水を毎日飲めば、それだけで食塩の害が消せるのですから、血圧は下がります。
ただし、このカレーズは、衛生という点ではちょっと問題がありました。



<コメント>

だんだん長寿の秘訣がみえてきましたね。


以下「長寿と短命をわけるもの」の後半は明日掲載させていただきます。