今110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活 その16


きょうも
家森幸男先生の本からの
   紹介です。

「今110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活」
家森幸男 著  生活人新書     日本放送出版協会 発行

興味を持たれた方は是非、本でお読みください。
素晴らしい本です。

きょうは
今110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活 その15
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2007/11/17
         の続きです。

文明が長寿村を滅ぼす  その5

アポリジニの伝統的な食生活を大豆で再現


検診をしてみると、予想をしていたこととはいえ、悲惨な結果に驚かされました。
見るからに肥満の人が多く、40歳代では3人に2人、50歳代前半では9割、後半では
すべての人が高血圧か糠尿病のいずれかに悩まされていました。

何とかしてこれを改善したいと思い、考えたのが大豆でした。
アポリジニは、尿中のイソフラボンのデータから、ほとんど大豆をとっていないことが
わかりました。
大豆が良質の蛋白源となり、そのなかには、血圧を下げるなど、さまざまな効能をもった
イソフラボンが含まれています。
アポリジニはもともと大豆を食べる習慣などはなかったと思われますが、その昔、
代わりに彼らは木の実を食べていました。
種を食べる食文化という点では共通しています。
木の実には、大豆と同じくカルシウム、マグネシウムカリウム、食物繊維が豊富に
含まれており、蛋白源も多い。
そんな伝統的な食生活のよさを、大豆という形でよみがえらせてみようと考えたのです。

まず、大豆を入れたパンを食べてもらったところ、味は気に入ってくれました。
ところが、この試みはスムーズには進みませんでした。
客観的なデータをとるために、世界的に調査対象としていた50歳代前半の方に協力して
もらおうとしたところ、ほとんどの人が腎臓を悪くしており、尿に蛋白が出てきていること
がわかったのです。
そんな人が大豆蛋白の入ったものを丸ごと食べれば、腎臓に負担がかかってしまいます。
そこで、健康な30歳代の人にお願いしようとしたら、50歳代の長老から本当に必要な
人のためにならない研究ならやめてくれ、といわれてしまいました。
私たちが研究しているのは予防のための食事ですから、すでに病気になっている人の食事
ではないと説明したのですが、わかってもらえずに調査は中断してしまったのです。

しかし、そこに幸運が訪れました。
私たちは検診をしたとき、肥満、糖尿病、高血圧のリスクに悩まされていた70歳代の
ある方に、運動療法と食事療法を指導していました。
私たちが帰国した後もその処方を忠実に守ったその方は、別人と思うほどの減量に成功し、
健康状態が大きく改善されたのです。
見るからに体が引き締まり、顔つきも精悍になった彼の姿はニュースで大きく取り上げられ、
おかげで健康指導の評価が大きく上がりました。

そこで私たちもまた、アポリジニの要望に合わせた研究方法を考えました。
本来ならば、大豆はそのままの形で食べるべきですが、腎臓が悪い人にも食べてもらえる
ように、蛋白質を取り除いた錠剤のサプリメントをさし上げることにしたのです。

これをあらかじめ、日本の更年期の女性たちに飲み続けてもらったところ、血圧が下がり、
体脂肪率が下がるなど、さまざまな効果が見られました。
なかでも新しい発見だったのが、骨の中のカルシウム量が増えていたことです。
更年期にはカルシウムが減るのは避けられず、イソフラボンにも減少を抑える効果しか
期待できないと思っていたの
で、この発見はうれしい誤算でした。
日本での研究を終えたとき、協力してくれた更年期の女性たちから口々に、「もっと飲み
つづけたい」といわれました。
健康になっている自覚があったのでしょう。
大豆そのものを食べられなくても、イソフラボンをとれば健康状態を改善できることを
実感できたのです。

アポリジニの長老たちもパンの代わりに錠剤を飲んでくれました。
そして8週間後、アボリジニの人たちの拡張期の血圧は下がり、動脈硬化指数が明らかに
改善しました。
大豆の蛋白質イソフラボンが、世界で最も生活習慣病のリスクが高くなったアポリジニ
の人たちでも有効であることが証明されたのです。
しかし、それは始まりに過ぎません。
アポリジニたちが自分たちの土地を少しでも取り戻し、そこで自ら大豆を育て、大豆を
常食し、さらに経済的にも自立して健康を保ちつづける環境を整えることが本当のゴール
です。
実現までにはいくつものハードルがあるでしょうが、広大な大地の恵みを大豆の生産で
生かしてそれを乗り越えてほしいし、私たちもぜひ力を尽くしていきたいと思っています。

長寿とは案外もろいものです。
それぞれの遺伝子に合った食生活をしていれば健康な長寿を全うできたはずが、遺伝子に
合わない食事をいったん取り入れてしまえば瞬く間に崩壊してしまう。
このアポリジニ達の調査をもとに、長寿村ビルカバンバをはじめ、ウイグル族やマサイ族
などに起こった急激なライフスタイルの変化について、その改善のための知識の普及を早急
に進めていかなければならないと考えています。

<コメント>
長寿の原因を探求する。
そして逆に時代の影響で短命になってしまった民族に長寿を目指してもらう。
根気のいる壮大な「実験」です。
家森先生の代だけでなく長期的プロジェクトとして、WHOなどが長期的に継続して
いただきたいと思います。
今、英国では食生活が米国化して肥満者が増加して問題となっています。
今後平均寿命がどのような推移をたどるか注目したいと思います。
われわれ日本人も他人事ではありません。

<診察椅子>
当院ではおでこに赤外線をあてて体温を測定する体温計を診察室で使っています。
待合室では腋窩で測定していただいていますが、再検が必要な患者さんには院長が
その体温計で計っているわけです。
前髪が測定の邪魔になるので髪を上にあげてもらうことがあります。

私「ちょっとおでこを上にあげてください。」

私のくせでついこう言ってしまいます。
患者さんは必ず顔を上に向けますが、体温がかえってうまく測定できません。
本来は「前髪を上に上げてください」というべきですが、私のクセでついこう言って
しまい上を向いたところで間違いに気づく毎日です。

平井 堅の「瞳を閉じて」は「まぶたを閉じて」の間違いではないかと、他人の
間違いには厳しいのですが。

貧血を診るのにまぶたの内側を診ることは常識です。
手間を省いて自分でやってもらおうとして
「あかんべえをしてください」というと大概の患者さんは舌をペロンと出して
くれます。
こちらの日本語が間違ってるんかなあ?