耐糖能異常へのメトホルミン

耐糖能異常へのメトホルミン/生活習慣介入は心血管イベント予防効果を示さず
https://www.m3.com/clinical/news/1064382?portalId=mailmag&mmp=WE220823&mc.l=891024760&eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d
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・耐糖能異常に対するメトホルミンを用いた介入、生活習慣への介入の双方ともに、心血管イベントへの予防効果は示されなかった。

・今回の結果は、追跡期間中に多くの患者が高血圧治療やスタチンの導入がなされていること、耐糖能異常という糖尿病の前段階というステージへの介入であったことなどが理由として挙げらる。
生活習慣の介入に関しては、長期間にわたって継続されていなかった可能性が、アウトカムに影響しなかった理由ではないかと考察される。

・総じて、耐糖能異常という限定されたステージへの介入であったことが、アウトカムに影響した可能性がある。

くも膜下出血に新薬「ピヴラッツ」が登場

くも膜下出血に新薬  血管収縮を阻害、脳梗塞を予防
脳血管にできたこぶ、脳動脈瘤が破裂し出血する「くも膜下出血」に約25年ぶりとなる新しい治療薬が登場した。
発症後2週間以内に起こる血管が細くなる症状を予防する。
半身まひなどの後遺症につながる脳梗塞のリスクを減らす効果が示されており、患者の命を守り、生活の質(QOL)を大きく改善するとの期待がある。

発症後に起きる脳血管の収縮を防ぐことができる唯一の治療薬で、半身まひなどを防げる。患者の生活を大きく変えられる可能性がある。

くも膜下出血は、脳内のくも膜下腔と呼ばれる部位で起こる出血で、脳血管のこぶが破裂することで起こる。

脳血管疾患は日本人の3大死因の一つとされる。
厚生労働省の調査によると、脳卒中患者は97万人ほどいる。
約8割が脳梗塞患者だ。
脳内出血は14万人、くも膜下出血は4万人を占める。

世界的にはくも膜下出血は10万人あたり6~9人が発症するとされるが、「日本では22.5人と2~3倍ほど高いとの報告もある。日本人で比較的多く発症する疾患といえる。

発症する年齢は50~70代が多いが、20~30代の若年層でも起こることがある。
最近は高齢者のくも膜下出血が増えており、男性より女性の患者が多い。

動脈瘤の大きさは数ミリ~1センチを超えるものまで様々だ。
ある程度の大きさまで成長すると、磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)による検査などで偶然見つかることもある。
大きいほど破裂リスクは高まるが、1ミリほどでも破裂することがある。

出血すると、突然の激しい頭痛や嘔吐といった症状が出る。
そのまま意識を失うケースもある。
死亡率は3割と高く、一命をとりとめても半数近くの患者で半身まひや言語障害などの後遺症を残すことがある。

発症早期に再出血するリスクが高いため、緊急手術を行う。
動脈瘤の根元をクリップではさむ手術(クリッピング術)のほか、こぶの内部にコイルをつめる血管内手術(コイリング術)が主流だ。

今回登場した点滴薬「ピヴラッツ」(一般名クラゾセンタンナトリウム)が効果を発揮するのは、無事手術が完了し、一命をとりとめた後だ。

出血に伴い放出された物質などの影響で、血管は収縮(脳血管れん縮)を起こしやすい。
血管の収縮が起きると、血管が細くなるため血流が低下し、脳梗塞に陥ることがある。

血管の収縮による血流の低下は発症5~14日に起こることが多い。
8~11日がピークで21日目までに消失する。
血管が収縮した患者の20~50%に脳梗塞の症状が出現する。せっかく手術で一命をとりとめても、その後に死亡や半身まひなどにつながる原因になっていた。
発症後2週間がその後の患者の人生に大きく影響する。

ピヴラッツは血管を収縮させる作用を持つエンドセリンの働きを阻害する。くも膜下出血後48時間までを目安に点滴を開始。
最大15日目まで1時間当たり10ミリグラムの点滴を続ける。
副作用としては肺水腫など体液がたまりやすくなる症状があるため、適切な術後管理が必要になる。

ピヴラッツは世界に先駆け日本で承認・発売された。
開発したのはスイスの製薬企業、イドルシア・ファーマシューティカルズだ

国内57施設で約440人の日本人患者を対象に行われた最終段階の治験では脳梗塞の発症を55%減らす効果も示された。

これまで打つ手がなかった脳血管れん縮を予防できる画期的な薬が登場し、医師の間でも非常に注目されている。

最大15日の投薬で薬価は約240万円かかる。
費用対効果など医療経済的な効果は今後検証する予定だが、半身まひなどを防ぐことでリハビリを必要とする入院期間も短くなる可能性があり、結果的に医療費抑制につながる可能性が期待される。
今後、ピヴラッツ登場で脳梗塞を回避し、健康寿命をまっとうするくも膜下出血患者の数も増える可能性がある。

参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2022.8.2

新型コロナの全変異株に有効なアルパカ由来の抗体

新型コロナの全変異株に有効なアルパカ由来の抗体、京大などが開発
京都大学(京大)、大阪大学(阪大)、COGNANO(コグナノ)、横浜市立大学(横浜市大)の4者は2022年7月14日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「懸念される変異株」であるオミクロン株(B.1.1.529, BA系統)を含むすべての変異株に対して、これまで使用されてきたどの治療用抗体製剤よりも中和活性が高い「ナノボディ抗体」を創出したことを発表した。

詳細は、英科学誌「Nature」系の生物学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

SARS-CoV-2の現在の主流となっているオミクロン株は、アルファ株からデルタ株までの、これまでの4種類の懸念される変異株と比べ、スパイク(S)タンパク質の変異箇所が圧倒的に多く、以前感染した人やワクチン接種者ですら感染しやすいという特徴を持つ。
また、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、その出現前に開発された治療用抗体の大半が効かなくなることも報告されている。

そこで研究チームは今回、免疫したラクダ科のアルパカの遺伝子(アルパカ抗体)から最適な創薬候補をコンピュータで選択する、コグナノが独自開発した技術をベースに、オミクロン株を含む全変異株に対し、これまで使用されてきたどの治療用抗体製剤よりも中和活性が高いナノボディ抗体を開発することにしたという。

実際に樹立されたナノボディ抗体をクライオ電子顕微鏡にて解析したところ、ヒトの抗体と比べておよそ10分の1と小型で、SARS-CoV-2の表面に存在するSタンパク質の深い溝をエピトープ ( 抗体が結合する生体分子のある特定の部位 ) にしていることが示されたとする。
このエピトープはヒトの抗体が到達できない部分であり(論文中では、「クレバス」または「隠された裂け目」と呼称)、ウイルスの変異がほとんど見られない領域だという。

また、オミクロン株は、ワクチンによって誘導された中和抗体や治療用抗体製剤から逃避する特徴も有しているが、今回の研究で創られた抗体は、変異がほとんど見られない領域に結合することから、これまでに報告されたいずれの中和抗体よりも高い有効性が示されたとする。

さらに、ナノボディ抗体は環境耐性が高く、全SARS-CoV-2変異株を検出することが可能であるため、下水など環境中のウイルスの濃縮やモニタリングにも利用することができるという。

加えて、ナノボディ抗体は遺伝子工学による改変がしやすいことから、ヒト抗体よりも数千倍安価に生産することが可能であることから、今回の研究で得られた知見に基づき、より中和活性の高い改変ナノボディ抗体を作成し、臨床応用を目指すとしている。

なお、京大、阪大、コグナノでは、さまざまな感染症について、ウイルス学的な解析や、中和抗体やナノボディ抗体の構造解析についての研究に取り組んでいるとしており、具体的には新型コロナ以外に、エイズウイルス(HIV)、ネコエイズウイルス、サル痘などとしているほか、がん免疫を明らかにするための研究も推進しているとしている。 

参考・引用一部改変
マイナビ・ニュース 2022.7.15
https://www.excite.co.jp/news/article/Cobs_2447733/?p=2

切れた血管、つながる仕組み発見

切れた血管、つながる仕組み発見 治療応用に期待 日本医科大・宮崎大グループ

切れた血管が修復されるメカニズムを、日本医科大学宮崎大学の研究グループが新たに発見した。血管は上流側(心臓側)からは伸びず、下流側からだけ伸びてつながることが明らかになった。
心臓の病気やがんなどの治療に応用できる可能性があるという。

解明したのは、日本医科大学・病態解析学のグループと宮崎大学医学部・血管動態生化学の研究グループ。
 
ゼブラフィッシュという魚の血管を切断し、つながっていく過程を「蛍光イメージング」という手法を使ってリアルタイムで観察した。
すると、従来は両方向から伸びるとされていた血管が、下流側からだけ伸びた。
 
さらに「血管は圧力がかかると伸びない」ことも証明。
研究グループは「上流側には心臓が血液を送り出す圧力がかかっており、その圧力を血管が感知し、伸びなくなる仕組みもわかってきた」としている。
 
今回の発見を発展させて血管を伸ばす治療法ができれば、毛細血管が切れることで起こる褥瘡(床ずれ)や、血管の詰まりが原因となる狭心症の治療につながることが期待される。
また、「いかに血管を伸ばさないか」という視点では、がん組織での無秩序な毛細血管の異常発生を抑え、有効な治療手段になる可能性も秘めるという。
 
さまざまな疾患や疾病にかかわる血管や毛細血管の、「伸びる」メカニズムの一端がわかったことで、将来的な応用範囲も広がることが期待でき、画期的な成果だと考えられる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・夕刊 2022.6.17

自己免疫病 分子出現が引き金

自己免疫病 分子出現が引き金  阪大グループ仕組み解明 
本来はウイルスなどの病原体を攻撃する抗体が体を傷つけてしまう「自己免疫病」の仕組みの一端を大阪大微生物病研究所のグループが解明した。
本来の居場所とは違う場所に現れた分子が、攻撃を「支援」していた。

荒瀬尚教授らのグループは今回、バセドウ病を対象にした。
呼吸や体温の維持などの代謝を制御するホルモンが甲状腺から過剰に出されて、脈が早くなったり体重が急に減ったりする。

これまでに、甲状腺にホルモンの分泌を促すスイッチのような機能を持った部分に、自分を攻撃する「自己抗体」がくっつくことで、過剰な分泌が起きることは分かっていたが、くっつく仕組みは不明だった。
 
グループが患者の甲状腺を調べると、本来は主に免疫細胞で発現し、正常な甲状腺にはないはずの分子が大量にできていた。
自己抗体は、この分子がスイッチと一緒の時にくっつき、スイッチだけだとくっつかないこともわかった。
 
この分子は「MHCクラスⅡ」と呼ばれ、多様なタイプがある。
一人一人異なるタイプをもつが、バセドウ病の患者では、特定のタイプを持つ人が多いことが知られていた。
何らかのきっかけで、甲状腺にこの分子が異常に現れ、それが特定のタイプだと、自己抗体ができることもわかった。
  
バセドウ病だけでなく、さまざまな自己免疫病で自己抗体ができる仕組みの解明につながる可能性がある」と荒瀬教授は話す。  

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.7.13

コメント
「MHCクラスⅡ」はウイキペディアにも掲載されている既知の分子です。
今回の記事では、どこが新たな発見なのかもう少し説明すべきです。

<関連サイト>
MHCクラスII分子
https://ja.wikipedia.org/wiki/MHC%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9II%E5%88%86%E5%AD%90

MHC(major histocompatibility complex)分子とは
https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/autoimmune/immunology/im04/01.php

 

「BA.5」肺で増殖か

「BA.5」肺で増殖か 「BA.2」の18.3倍 病原性も高い可能性
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000261127.html

国内で置き換わりが進む新型コロナ・オミクロン株の亜種「BA.5」について、これまで主流だった「BA.2」よりも、「ウイルスが肺で増えやすい」可能性があることが最新の研究で分かった。

東京大学医科学研究所の佐藤佳教授らがヒトの肺の細胞を使って実験をしたところ、オミクロン株の「BA.5」は、「BA.2」と比べてウイルスが18.3倍増えていたことが分かった。

オミクロン株は気管で増殖し、重症化しにくいとされてきたが、「BA.5」では、肺でも増えやすい可能性があるという。

東京大学医科学研究所・佐藤佳教授:
「『BA.5』はデルタ株が持っていたL452Rという特徴的な変異を持っている。デルタ株が持っていたような肺で増えやすい特性を獲得したオミクロン株といえる」
ハムスターを使った実験でも同様に肺でウイルスが増えたという。

家族性アルツハイマー病「抑える傾向」 iPS創薬の治験 

家族性アルツハイマー病「抑える傾向」 iPS創薬の治験 
京都大学三重大学は30日、家族性アルツハイマー病の患者にiPS細胞を使って見つけた治療薬候補を飲んでもらう治験の結果、病状の進行を抑える傾向が見られたと発表した。

京大iPS細胞研究所の研究グループは、患者からつくったiPS細胞を使って、有効な薬の候補を探し、パーキンソン病治療に使われる「ブロモクリプチン」を見つけた。
特に、特定の遺伝子に変異がある家族性アルツハイマー病で高い効果が見込まれた。
このアルツハイマー病は平均の発症年齢が43歳と若く、進行も速い。

治験は2020年から始め、このタイプの患者5人にブロモクリプチンを飲んでもらった。 
1日最大10ミリグラムを20週間服用したところ、認知機能のスコアが下がったのは1人だった。
一方、偽薬を飲んだ患者は3人中2人でスコアが下がった。
行動、心理症状でもブロモクリプチンの服用者で進行が抑えられる傾向にあった。
 
研究チームによると、今回の治験で対象となった特定の遺伝子に変異がある家族性アルツハイマー病の患者は国内で約100人いる。
今後、他のアルツハイマー病患者への治験も検討する。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2022.7.1

 

関連サイト
ブロモクリプチン
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00063081

家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
https://www.senshiniryo.net/column_a/23/index.html
家族性アルツハイマー病の特徴は、家族や親戚に多く発症することに加え、発症年齢の若さです。多くのアルツハイマー病は70〜80歳に発症年齢が集中するのに対し、家族性アルツハイマー病の場合は、40〜50歳代で発症するケースが珍しくありません。「一般的なアルツハイマー病よりも20年以上も前倒しして発症してしまうのです」と山本講師は話します。