運動不足は老化10年分

若さの維持、アンチエイジングに、運動をすることが重要であるという研究結果が最近
発表されました。
つまり運動不足のライフスタイルの人々は、身体の老化の進行が早くなるという結論です。

運動不足は老化10年分 英の大学 細胞レベル 2400人を調査

運動を普段ほとんどしない人は、している人に比べて、細胞の老化が早く進むことが、
英ロンドン大キングスカレッジなどの研究でわかった。
運動は、がんや高血圧、糖尿病などの病気を防いで寿命を延ばすといわれてきたが、
細胞レベルでもでも「抗加齢効果」が示された。

研究チームは18~81歳の男女約2400人に、運動習慣などを聞くとともに血液を採取。
白血球の染色体にある「テロメア」という塩基対の構造を調べた。

テロメアは、細胞が分裂するごとに、短くなる。
ほとんどなくなると細胞の異常につながることから、老化を示す指標の一つとされている。

参加者のテロメアは1歳年を重ねるごとに、平均で21塩基対ずつ減っていた。年齢による
違いを考慮して、運動習慣との関連を調べると、運動を週3時間あまりする人たちに比べて、
16分程度しかしない人たちのテロメアは平均で200塩基対短かった。研究チームは
「運動しない人は、生物学的にみて、やっている人より10年近く老いていることになる」
と説明する。
テロメアは喫煙者や肥満の人も短く、体内の活性酸素によって細胞膜や遺伝子が傷つけられる
酸化ストレスとの関係が推測された。
順天堂大の白澤卓二教授(加齢制御医学)は「運動が細胞レベルでの老化プロセスに影響して
いることを示す重要な研究だ」と話す。

結果は米国の内科学の専門誌に掲載された。

朝日新聞・夕刊 2008.2.8
版権 朝日新聞社


テロメアは、染色体の末端に相当し、線状ゲノムDNAの末端部分にもあたる。
細胞は分裂する際に必ずDNAの複製を行い、遺伝情報を二倍にコピーしてから、これを一つずつ
娘細胞に受け渡す。
このDNA複製の際、テロメアDNAの真の末端部分は完全には複製されないことが知られている。
従って、正常細胞では、テロメアDNAは細胞分裂のたびに次第に短小化する。
事実、様々な年齢の正常人のテロメア長を比較すると、加齢と共に短小化していることが知られ
ている。
テロメアは正常体細胞が発生以来おこなってきたのべ細胞分裂回数を記録し、それがある回数に
達したときに細胞分裂の停止により老化を引き起こす老化時計あるいは細胞分裂時計に相当する
ものと考えられている。

<コメント>
このようにテロメアの短小化は老化と関係がありますが、がんの場合にはテロメラーゼという
酵素を介して短小化が起きなくなっているようです。
運動とテロメラーゼ活性との関係はどうなんでしょうか。
運動すればがんになる確率が減るということが立証できれば本当に、運動によって本当に長生き
出来そうです。
今回の研究では「老化」が主体で、「長生き」の話でぐぁないようです。


人間の細胞にある染色体の端にあるテロメアというDNAの長さが寿命を決めているって本当
ですか?
http://www.fiberbit.net/user/biology/QA/items/seibutu48.html
テロメアとガン
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/9604/telomere.html
通常,体細胞はテロメラーゼをもたないため,テロメアの反復配列は細胞分裂のたびに短くなり,
限界まで短縮すると分裂停止のシグナルが出て細胞は増殖できなくなる。
これに対して,ガン化した細胞にはテロメラーゼ活性があることがわかった。
ガン細胞が無限に増殖できるのは,限界を越えた短いテロメアがテロメラーゼによって細胞分裂
のたびに修復されるためと考えられる。

「健康体力NEWS」に連載中のコラム
http://www.kentai.co.jp/column/physiology.html
石井直方先生の連載コラムです。禁無断転載ということで興味を持たれる方はサイトで直接
ご覧下さい。

医療専門のブログは別にあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)