放射性医薬品過剰投与で日本核医学会が声明

市立甲府病院の放射性医薬品過剰投与で日本核医学会が声明
8月31日からマスメディア各社が報じている,市立甲府病院で起きた15歳以下の子どもへの放射性医薬品の過剰投与について,9月1日,日本核医学会(理事長:北海道大学・玉木長良氏)が声明を発表した。
その中で,同学会は今回の事故の原因究明に関する調査に協力していたことも明らかにしている。
また,「現在使用されている放射性医薬品の副作用発生率は,10万件当たり1.1件と極めて少ない。核医学検査は一般的に安全で,今回の事故は極めて例外的」と冷静な対応を呼びかけた。

今回の事故は例外的,核医学検査は一般的に安全
報道によると,1999年から15歳以下の子ども84人に対して行われた腎シンチグラフィーで,日本核医学会が定める基準を超えるテクネチウムが投与されていたことが明らかになったという。
一部の子どもは基準の10〜20倍を超える量を投与されていたとも報じられている。

報道からは,一般に子どもへの,特に侵襲を伴う検査では,検査時に子どもが動き回ったり、時には激しく抵抗したりするため,多くのスタッフを必要としたり,別の日に再検査となってしまうといった事情との関連もうかがえる。
しかし,今は東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故で,社会の放射性物質に対する意識が高まっていることもあり,メディアが大きく取り上げたようだ。

これに対し,同学会では「今回の被ばくは医療被ばくであり,福島原発事故に伴う公衆被ばくとは全く異なった事例」で,「公表された事故に伴う放射線被ばくによる急性障害や慢性障害は今のところ観察されていない」と報道の過熱などをけん制する姿勢を見せている。

また,同学会は既に,同様の事故の再発を防ぐため,当該病院と協力し改善策などの提案を行っていることを明らかにした。

同学会によると,放射性医薬品の取り扱いや核医学診断に関するガイドラインの策定のほか,安全性調査を行うなどの取り組みを進めており,現在の放射性医薬品による副作用報告は,10万件当たり1.1件と極めて少ないという。
そのため「今回の事故が極めて例外的なことを理解してほしい」として,冷静な対応を求めている。 (坂口 恵)

出典  MT Pro 2011.9.1
版権 メディカル・トリビューン社