嗅覚障害

嗅覚障害、原因分かれば早期回復 内視鏡手術も普及

原因が複合的な場合や事故で頭を打ったときなど、短期間での治療が難しい患者も多い。問診や内視鏡での観察、色々なにおいをかぐ検査方法の発展で、最近は完治する可能性が高まっている。
風邪で嗅覚障害になり、数年かけてやっと治る患者もおり、根気強い治療が必要な場合もある。
 
空気が乾燥する冬期や花粉や黄砂が飛び交う春は、治療効果が表れにくい時期でもある。マスクを常用して風邪の予防や鼻の乾燥に注意する心がけも大切だ。

難病との関係注目
原因が不明の嗅覚障害の研究も進んでいる。
他の病気の影響や薬の副作用などがあり、近年焦点になっているのが、運動障害などを起こすパーキンソン病や認知機能が低下するアルツハイマー病との関係だ。
これら難病を発症する前に、嗅覚機能が低下するという調査報告が相次いでいる。
パーキンソン病では、4年前に嗅覚低下がみられた例もあるという。
 
いずれも難病で根本的な治療法は確立していないが、早期発見により進行を遅らせる道がある。
嗅覚の検査を初期段階の診断に使えないかというアイデアが検討されている。
 
嗅覚は味覚とも密接に関係し、料理の複雑な味わいににおいは欠かせない。
日常生活に潤いを与えようと香り成分を利用する人も増えている。
個人の好き嫌いがあり、時と場所をわきまえない香りは論外だが、普段からにおいに関心を払ってもよさそうだ。

出典
日経新聞・朝刊 2013.1.13



<関連サイト>
広島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科」
http://home.hiroshima-u.ac.jp/jibika/kyuukakushougai.html
(嗅覚障害を引き起こす様々な原因や治療法を分かりやすく解説)

嗅覚障害の症状や原因・診断と治療方法
http://health.goo.ne.jp/medical/10C10400
・嗅覚障害の内容と原因はいろいろある。
嗅覚機能の低下(嗅覚脱失と嗅覚減退)が訴えの大半を占めるが、軽微な悪臭にも耐えられない嗅覚過敏(広義の化学物質過敏症)、本来よいはずのにおいを悪臭と感じる嗅覚錯誤(異臭症)などもる。

・嗅覚機能の低下は、
(1)呼吸性嗅覚障害、
(2)末梢神経性嗅覚障害、
(3)中枢神経性嗅覚障害
に分けられる。
(1)は、鼻中隔の弯曲や術後の粘膜癒着などの鼻腔形態異常や、慢性副鼻腔炎アレルギー性鼻炎に伴う粘膜のはれやポリープにより、におい分子が両側鼻腔で嗅上皮まで到達できないことによる。
(2)には、嗅上皮の障害と嗅糸断裂による場合があり、前者は嗅上皮の萎縮や炎症が原因で感冒などウイルス性のことが多く、後者は頭を打ったことが最も多い原因。
頭を打った時の嗅覚障害は難治性だ。
抗腫瘍薬のテガフールの長期投与でも嗅覚は損なわれる。
慢性副鼻腔炎や通年性アレルギー性鼻炎は(1)と(2)の混合型。
(3)は頭部の外傷や脳腫瘍、加齢が要因になる。
なお嗅覚障害が、アルツハイマー病やパーキンソン病の初期症状である場合もある。

・重症度と原因疾患により違ってくる。
慢性副鼻腔炎に伴う嗅覚障害では、内視鏡下鼻内手術が有効。
嗅覚を失ってから2年以内なら手術での嗅覚回復の可能性が高く、また14員環系マクロライド(抗生剤の一種)の長期投与も45%の有効率であることが報告されている。
 
ステロイド薬の点鼻および経口投与は、ただひとつ確立された嗅覚障害に対する薬物治療です。
経口ステロイド薬は、アレルギー性鼻炎に伴う呼吸性および末梢神経性障害に最も有効だが、副作用に注意が必要となる。
診断的治療として短期間の投与は行うが、致死的な障害ではないため、料理人やソムリエを除けば、長期投与は勧められない。
 
ステロイド薬の点鼻は、呼吸性・末梢神経性障害を問わず広く行われているが、懸垂頭位(頭を後ろに倒した状態)の点鼻では大半の薬液は嗅神経まで到達しないで、咽頭へ落下してしまう。
四つんばいになり、自分のへそを見るような頭位をとり、鼻の裏面を薬液が伝わるように点鼻すると効率よく嗅裂に到達できる。
ステロイド薬に先立って血管収縮薬を点鼻しておくと、より効率よく点鼻できる。
 
・鼻中隔上方で粘膜下にステロイドデポ製剤(効果が長続きする製剤)を注射する方法も行われている。
血清亜鉛が低下している場合には、硫酸亜鉛の内服が有効な場合もある。
中枢性嗅覚障害には原因疾患の治療しかない。