嗅覚障害

嗅覚障害 ガス漏れ・焦げ、気付かぬ場合も

様々なにおいを感じなくなる嗅覚障害。
あまり知られてい内科が、ガス漏れや食べ物の腐敗に気付かず、危険な目にあうことにつながる。適切な治療をすれば、大半は良くなる。
 
鼻の奥にある嗅細胞というセンサーが、におい物質をキャッチし、神経を通して脳に伝わるとにおいを感じる。
この経路のどこかに異常がおきると、においがわからなくなる。

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約5割と最も多いのは、におい物質の通り道がふさがる「呼吸性」と呼ばれるタイプ。
鼻をつまんでふさいだような状態だ。
副鼻腔炎蓄膿症)になってポリープができたり、アレルギー性鼻炎になり粘膜がはれたりするのが原因という。
治療には抗菌剤やステロイドを使う。
数日 ~ 約1ヵ月で約4割が治り、8割近くの人は症状が改善する。
ゆっくり進行するため、ある日突然、「鍋を焦がしたのに、焦げくささに気付かなかっ
た」と驚く人もいるそうだ。
 
次に多いのは、においを感じるセンサーの近くに炎症が起きる「嗅粘膜性」と呼ばれるタイプ。
主な原因はかぜのウイルスヘの感染や薬の副作用で、2~3割を占める。
かぜをひいた後、鼻水や鼻詰まりが治っても、においが戻らないと悩む人が当てはまる。炎症を抑える薬や漢方薬でほぼ半数が治り、7割が改善する。
このタイプは治るまでに1年~1年半ほど時間がかかるという。
 
どちらのタイプも、患者の大半は、においをまったく感じない状態から「どれも同じ、嫌なにおいがする」状態を経て治る。
少し我慢すると改善し、「日常生活に花や料理のにおいが戻ってうれしい」と喜ぶ患者
が多い。

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においに悩む人は年齢と共に増えることがわかってきた。
米国で約20年続く調査によると、嗅覚は成人全体の4%、65歳以上の14%で低下していた。
 
高齢の患者が多い、と言うわけだ。
嗅細胞は通常、ダメージを受けても再生する能力を持つ。
だが年をとると細胞自体が減り、様々な体の機能も落ちる。
このため、かぜのウイルスなど若い頃は平気だった刺激で、においを感じなくなり、もと
に戻らなくなる。
高齢だと完治は難しいが、漢方薬が効く人もいる。
 
嗅覚の異常は一見、わかりにくく、周囲に理解されないことも多い。
予防策には、細胞を老化させるたばこをやめること、刺激臭の塩素ガスが出るカビ取り剤などを使う場所に近づかないことなどがあげられる。


嗅覚障害、あなたは大丈夫?
① ⬜︎ 鼻がつまっている
② ⬜︎ のどに違和感がある
③ ⬜︎ ぜんそくがある
④ ⬜︎ たばこを吸う
⑤ ⬜︎ 65歳以上
⑥ ⬜︎ 食事がおいしくなく、食欲が落ちた
⑦ ⬜︎ トイレで芳香剤や便などのにおいがしない
⑧ ⬜︎ においに気付かず、鍋やフライパンを焦がした

①②はにおい物質の通り道をふさぐ病気、副鼻腔(ふくびくう)炎の典型的な症状。
③の約半分は副鼻腔炎をあわせ持ちます。
④⑤においを感じる細胞は、喫煙者や高齢者はダメージを受けやすいので、障害のリスクが高まります。
⑥⑦⑧は、嗅覚障害のためかもしれません。
早めに耳鼻科を受診しましょう。

出典
朝日新聞・朝刊 2014.7.28(一部改変)