夜の眠りは量より「質」

夜の眠りは量より「質」

なかなか眠れない、夜中に何度も起きてしまう――そんな悩みを抱える高齢者は少なくない。
昼間に眠気やだるさがあれば不眠症の可能性があり、睡眠時無呼吸症候群や夜間頻尿がかかわっていることもある。
原因や病状に応じた治療が必要になる。

昼の症状、病のサイン
高齢者が睡眠に悩みを抱えている場合、量より「質」に問題のあることが多い。
高齢になれば、眠れる時間は減っていく。
個人差はあるが、65歳の平均は約6時間、75歳では5時間半ほど。
8時間眠れるのは、高校生くらいまでという研究もある。
 
寝つけなかったり、目を覚ましたりすることは、誰にでもある。
昼間に眠気や記憶力の低下、倦怠感、イライラといった症状が週に3日、3カ月以上続けば不眠症が疑われる。
「8時間は寝ないと」という先入観から必要以上に長く寝床にいると、「眠れない」という不安から、逆に不眠の悪化を招くことがある。
 
睡眠時無呼吸症候群も昼間の眠気の原因になる。
検査で睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」と、止まりそうな弱い呼吸を合わせ、1時間に5回以上あると該当する。
首回りに脂肪がついた人やあごが小さい人などに多い傾向があるが、年齢による筋肉のゆるみも原因となる。

依存性弱い薬も登場
不眠症治療の柱は睡眠薬と睡眠の習慣改善の二つ。
 
睡眠薬は『依存する』と心配する人がいるが、依存性が弱い薬も登場している。
 
睡眠薬は大別して4種類。
国内では「ベンゾジアゼピン系」が多く使われるが、高齢者には勧められない。
認知機能の一時的な低下やふらつきなどがあるのと、薬をやめると、不眠や発汗などの離脱症状が出ることがあるためだという。
 
「非ベンゾジアゼピン系」など3種(表・参照)は、近年登場した副作用や離脱症状が少ないとされる薬だ。薬の強さにあまり差はなく、作用時間の長さに違いがある。

 
イメージ 2

 
一方、薬局で医師の処方箋なしに買える「睡眠改善薬」は、かぜ薬などに使用されてきた成分の眠くなる作用を利用している。
不眠症の治療では効果が確認されていない。
 
睡眠薬は、使い始めて1~2カ月で症状が改善し、服用をやめられる人もいるが、慢性の不眠症に対しては少量の服用を長期間続けることも選択肢の一つになる。
薬を減らしたり、やめたりする際は医師と相談たい。

生活では、定期的な運動を心がけ、寝る前の飲酒やカフェイン摂取は控える。
眠くなってから寝床に入り、起床時間も一定にする。
 
一方、睡眠時無呼吸症候群は、マウスピースや鼻から空気を送り込む持続的気道陽圧法(CPAP)を使った治療をするが、睡眠薬の使用には注意が必要だ。
不眠は改善しても、睡眠中の呼吸状態が悪化する可能性があるためだ。

夜間頻尿、原因は様々
「夜、トイレに行きたくなって何度も起きてしまう」。
そんな悩みを抱えた高齢者も多い。
 
排尿のために1回以上起きてしまう状態を「夜間頻尿」と呼び、高齢者では不眠につがなることも多い。
原因に応じた生活習慣の改善や治療が必要になる。
 
夜間に水を飲み過ぎている場合、水分摂取に気をつける。
「水を飲めば血液がサラサラになる』と言われ飲んでいる人がいるが、意外と根拠はない。
 
昼も夜もトイレが近くなる場合、膀胱が自分の意思とは関係なく収縮する「過活動膀胱」の疑いがある。
 
男性は、前立腺肥大が関係していることも多い。
尿道が圧迫され、膀胱が縮みやすくなる。
女性は、出産や加齢で子宮や膀胱などを支える骨盤底筋という筋肉が伸びて弱くなって起きるケースがある。
 
高血圧や糖尿病などが隠れていることもある。


快適に眠るための生活習慣のポイント
【定期的な運動】 
適度な有酸素運動をする

【寝室の環境】 
音対策としてじゅうたんを敷く。
ドアをきちんと閉め、遮光カーテンを使う。
寝室を快適な温度に保つ

【規則正しい食生活】 
空腹で寝ない。
眠る前に軽食を取ると、睡眠の助けになることがある。
ただ、脂っこいものや胃もたれするものは避ける

【寝床での考え事】 
昼間の悩みを寝床に持って行かない。
翌日の行動の計画は翌日にする

(「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」から)

 
イメージ 1


出典
朝日新聞・朝刊 2016.4.6