AIが「診断」する時代に 

AIが「診断」する時代に 

2016年、米グーグルの人工知能(AI)「アルファ碁」が韓国の世界トップ級棋士を下し、世界を驚かせた。

17年にはコンピュータソフト「ポナンザ」が将棋の佐藤天彦名人を破ったが、AIの進歩はがん医療でも広がり始めている。

コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの画像データをもとに、がんなどを自動検知するシステムが開発されつつある。

 

京セラは筑波大学と共同で、AIを使って皮膚がんを瞬時に判別するシステムを開発した。

大量の皮膚病の写真をAIに読み込ませ、「ディープラーニング(深層学習)」という手法で特徴を学ばせた結果、9割前後の正答率を実現したという。

人が猫を猫だと判断できるのは、多数の動物を見てきた経験をもとに、何らかの猫らしい特徴を見つけ出して判断しているからだ。

深層学習はコンピューターに大量の情報を読み込ませて、学習させる技術といえる。

 

16年から胃がん検診を胃カメラで受けることができるようになったこともあり、内視鏡医の不足が深刻だ。

富士フイルムオリンパス内視鏡検査で胃がんなどの病気を自動判別する技術を20年にも実用化する。

 

胃や大腸の内視鏡検査で撮影する画像は、1回150枚にも上る。

AIによる自動診断は医師の負担を減らし、病変の見落としも防ぐ。

深層学習には全国32病院から集めた30万件もの検査画像データを使っており、さらに増やしていくという。

ビッグデータが自動診断の精度を高めていくのだ。

 

東京大学医科学研究所では、専門医でも診断が難しい特殊な白血病をAIが僅か10分ほどで「診断」し、治療法を変えるよう提案した結果、患者の命が救われたことが分かった。

使われたのは、米クイズ番組で人のチャンピオンを破った米IBMの「ワトソン」。

人工知能を備えたこのコンピューターシステムに、2000万件もの医学論文を学習させた結果だ。

 

AIの医療への応用は急速に進み、医師の仕事のかなりの部分が肩代わりされると思割れる。

患者の心を支えられる医師が生き残る時代が来るかもしれない。

執筆

東京大学病院・中川恵一准教授

参考・引用

日経新聞・夕刊 2017.10.19

 

 

AIの進化で医師も失業する時代がやってくる

高齢者数は2042年まで増えても未来は暗い

https://toyokeizai.net/articles/-/208873

・日本は毎年人口減少が進んでいくものの、高齢者数は2042年まで増え続けていく見通しにある。

このため、さすがに「最強のエリート」である医師はこれからもずっと安泰だろうと考える人々が多いようだ。

 

医師の仕事の8割は、AIやロボットで代替できる

・しかし、AIやロボットの進化の度合いを考慮すると、早ければ10年後に、遅くても20年後には、医師も淘汰の波にあらがうことはできそうもない。

なぜならば、AIやロボットが医師の仕事の8割程度は代替できることが、実証実験などで明らかになってきているからだ。

医師の主な業務である患者の診断、薬の処方、手術などをAIやロボットが担うという趨勢は、不可逆的なものとなっていくことだろう。

 

アメリカの医療現場でのAIの実証実験においては、患者の症状や個人データ(年齢、性別、体重、居住地、職業、喫煙の有無など)を入力すれば、AIが膨大なデータを瞬く間に分析して、病名を特定したり、適切な治療方法を割り出したりすることができるという。

 

・AIは与えられたデータのみから患者を冷静に診断するため、人ならではの先入観や勘違いに起因する誤診をなくすことができ、すでに経験が豊富な医師よりも高い実績を残し始めているという。

当然のことながら、正確な診断に基づいて、薬の処方も適切にできることが確認されている。

コメント;調剤や看護は、「調剤・看護支援ロボット」が出現しない限り薬剤師やナースは生き残れるかも知れません。頭脳労働の度合いの高い領域の診療領域の医師からAIの進歩とともに需要が減り淘汰されていく可能性があります)

 

・手術の分野でも、手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」がその性能の高さから注目されている。

従来、1ミリ単位の精密さが求められる手術では、いくら医師の技量が高いといっても限界があった。

ところが、ダヴィンチを使えば人ではできない精緻で複雑な動きができるため、経験が浅い医師でも短期間の練習によって困難な手術をこなすことができるようになるという。

 

・10~20年後の医療では、膨大な遺伝情報を学習したAIが患者の遺伝情報を細かく解析し、個人レベルで最も適した治療や投薬を決めるという方法が当たり前になっくるだろう。

そのうえで重要な役割を果たすのが、「薬」と「医療機器」のふたつの要素だ。

 

新薬の開発コストが激減、格安な医療ロボットも

・まずは「薬」に関しては、今のところ新薬を1つ開発するためには、1000億円以上の費用と10年以上の期間が必要であるのが常識となっている。

ところが、AIの急速な発達が創薬の分野でも力を発揮するようになり、大幅な費用圧縮と時間短縮を可能にすることが徐々にわかってきている。

その結果として、さまざまな新薬が生まれる確率が格段とアップするだろうと期待されているのだ。

たとえば、10~20年後のがんの治療を見通した場合、AIによって患者の遺伝情報を読み解き、異常な遺伝子を新薬で修復することでがんを簡単に治癒できるという方法が主流になっているだろう。

 

・がん細胞が増殖する原因となる遺伝子を突き止めて、それを正しい状態に戻す新薬を投与するという治療方法が一般的となると予想される。

この治療方法はがんに限らず、あらゆる病気に対応できるだろう。

体への負担が大きい手術には頼らずに、できるだけ薬で治そうとする未来の医療は、患者にとっては非常にありがたいことだ。

 

・次に「医療機器」に関しては、患者の病状に有効な新薬が見当たらない場合は、広範にわたって新しいタイプの医療機器が活躍する余地が大きい。

たとえば、未来の手術室では今より進化した手術支援ロボットに対して、AIが手術の手順を注意点も含めて詳細にナビゲートしたうえで、VRが患者の体内を可視化して1ミリ以下のがんも逃さない技術を提供するという光景がありふれたものとなっているだろう。

 

ダヴィンチは価格や維持費が高いため、導入しても採算が合わない病院が多かったのだが、今後10年以内に手術支援ロボットの低価格競争が起こり、ロボットを使う手術は広く普及が進むと見られている。

 

・日本の高齢者数は2042年でピークを迎えると、それ以降はそれまでの増加ペースを上回るかたちで急激に減少していく。

それに加えて、AIやロボットが医師の仕事を奪っていけば、医師の供給過剰は予想以上に深刻になっていくはずだ。

 

厚生労働省のある有識者検討会では、「2035年までに医療の需要は減少する」「2040年には1.8万~4.1万人の医師が過剰になる」という推計をまとめているが、これはあくまで人口動態の推移だけを考慮に入れた推計であり、技術革新をまったく無視している。

 

・早ければ10年後に、遅くても20年後には、AIやロボットが医師の仕事の8割程度を代替することができるようになり、必要とされる医師の数が劇的に減るのは避けられない情勢にあるというわけだ。

 

 

f:id:osler:20190506221414j:plain

シンガポール・マリーナベイサンズの夜景 2019.5 撮影

https://www.travel.co.jp/guide/article/37955/

https://ryokoukankou.com/singapore/blog/020-night-photo-merlion.php