「猫ひっかき病」飼い猫にもリスク

「猫ひっかき病」飼い猫にもリスク 腫れや発熱に注意 

今、空前の「ペットブーム」が到来している。

ペットの代表といえば犬と猫だが、最近は、散歩などで負担感の大きい犬に比べて猫の人気が高まっているようだ。

 

2017年12月に発表された、ペットフードメーカーの業界団体「一般社団法人ペットフード協会」の調査によると、全国の推計飼育数は猫が953万匹、犬が892万匹で、1994年の調査開始以来、初めて猫の飼育数が犬を上回ったという。

その経済効果からアベノミクスにちなんで、「ネコノミクス」なる造語も生まれている。

コメント

野良犬は、ほとんど見かけなくなりましたが、野良猫(地域猫)はまだまだいます。したがって、ペットだけでなく「野良」も含めば、猫がもう少し多いはずです。

 

動物と触れ合うことで、心がなごみ、心身の機能が高まるなど、心にも体にもとてもいい影響があるのは、有名な話だ。

しかし、かわいいからといって顔をなめさせたり、一緒に寝たりするのは問題がある。犬や猫は、人にうつる病原菌を持っていることがあるからだ。

 

動物から感染する病気を「人畜共通感染症」と呼ぶ。

わが国で猫からうつるヒトの感染症は10種類ほど知られている。

そのほとんどは軽症で済むものだが、抵抗力の弱い子どもや、持病のある場合などでは重症化することがあり、中には死亡例も報告されている。

 

室内で飼われている猫であっても、ヒトに感染する病気を持っていることがしばしばある。

 

その一つに「猫ひっかき病」がある。

ふざけた名前と思われるかもしれませんが、れっきとした正式病名だ。

その名の通り、猫にひっかかれることで発症する。

 

病原体はバルトネラ菌という小型の細菌で、この菌は猫の血液中にすんでいる。

ノミを介して猫から猫へと感染が広がり、日本では飼い猫の約7%がこのバルトネラ菌を保有しているとされている。

とりわけ若い猫、ノミがついている猫、屋外を出歩く猫、温暖な地域や都会にすんでいる猫で感染率が高いことが報告されている。

この菌に感染していても、猫自身には何の症状もない。

 

猫を飼っていると、ひっかかれたり、かまれたりすることはよくある。

このときに傷口からバルトネラ菌が入り、1~3週間後にリンパ節が腫れて痛みを感じる病気が猫ひっかき病だ。

 

腫れるリンパ節は、引っかかれた部位にもよるが、腕の内側やわきの下、首の回り、足の付け根などが多く、その大きさは小豆大から、時にグレープフルーツ大にまでなる。

軽い発熱、倦怠感や痛みを伴うこともあり、まれに重症化して意識障害をおこす脳症、強い頭痛の原因となる髄膜炎、肝臓にうみがたまる肝膿瘍などを引き起こす。

人から人に感染することはない。

 

猫ひっかき病は秋から冬にかけて多く発生する。

夏の間、屋外でバルトネラ菌に感染した猫が、秋以降に家の中で長い時間を過ごすようになり、人をひっかいたり、かんだりすることで、病気が増えると考えられている。

 

猫ひっかき病は、ほとんどの場合は症状が軽く、自然に良くなるが、症状が重い場合は抗生物質の投与が行われる。

猫にひっかかれたり、かまれたりした後で、その周囲が赤く腫れて熱を持ったりした場合は、早めに病院を受診したい。

リンパ節が腫れたり、微熱が続いたりすることもある。

医師に猫のことを伝えると治療の助けになる。

 

予防は何と言っても、「猫にひっかかれたり、かまれたりしないこと」につきる。

 

性格のおとなしい猫を選んで飼うことがいいが、それが難しい場合は、

①定期的に猫の爪を切る

②猫による傷をきちんと消毒する

③猫についたノミを駆除する

④猫に触った後は手を洗う

ことなどを心がけたい。

 

(執筆 弘前大学医学系研究科・村上弘講師)

参考・引用一部改変

朝日新聞 2018.6.1

 

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ニュージーランド 2019.5 撮影