動物から感染「ズーノーシス」

動物から感染「ズーノーシス」 治療法、未確立も多く

ペットとの接触、潜む危険
犬や猫などペットから「ズーノーシス(動物由来感染症)」に感染するケースが目立っている。
致死率が高かったり治療法が未解明だったりする病気もあるが、代表格の狂犬病の発生が過去50年以上ないこともあり、国内での関心は高まらない。
気づかぬうちに感染しているケースもあるとされる。
ペットに引っかかれたりしたらすぐに医師の診察を受けたい。

ズーノーシスの一種、「カプノサイトファーガ感染症」での死亡例も報告されている。
感染症は6~7割の犬や猫が病原菌を持つとされ、かまれたり引っかかれたりして感染する。
高齢者やがん患者など免疫力が低下した人がかかりやすく、敗血症や髄膜炎などを引き起こす可能性がある。

■世界で200種以上
厚生労働省によるとズーノーシスは世界で200種類以上あるとされる。
動物から感染することもある重症急性呼吸器症候群(SARS)やエボラ出血熱などもその一種で、新たに発見される感染症の大半をズーノーシスが占めるという。
 
国内で発症の可能性があるのは数十種類。
届け出・消毒や予防接種といった対策が取られている疾病は一部で、カプノサイトファーガ感染症も対象外。
身近なペットからうつるズーノーシスには注意が必要だ。
特にカプノサイトファーガ感染症は発症後の致死率が3割と高い。

もう1つ、近年注目されているのが「Q熱」だ。
犬や猫の15%以上が病原菌を持ち、感染すると突然の高熱や関節痛などの症状が出る。数カ月~十数年にわたり倦怠感や頭痛などに悩まされる症例もある。
一般的な検査では異常がみられないことも多い。
 
室内で飼われるペットは多い。
濃厚な接触が増えていると考えられるが、ペットからズーノーシスに感染した人の数は不明だ。
引っかかれたりしても医療機関に行かないケースも多い。
早い段階なら抗生物質が有効な例もある。
兆候があればすぐ受診したい。

■薬の定期投与を
中には有効な治療法が未確立の病気も多い。
ノミから犬や猫に感染し、人にうつる「猫ひっかき病」だ。
感染するとリンパ節が腫れ、発熱や頭痛などの症状が出る。
自然治癒を待つしかないことが多く、快復まで約40日かかる。
 
犬や猫にいる寄生虫が人の体内に侵入し、肝肥大や視力低下などを起こす「トキソカラ症」も決まった治療法がない。
ノミや寄生虫を駆除する薬をペットに定期的に投与すれば感染は防げる。
ペットとのキス、布団や食器の共用などは控えたい。

   ◇    ◇

狂犬病、薄まる危機感 予防接種率が低下
厚生労働省によると、狂犬病予防法に基づく国内の犬の登録頭数は約674万頭(2013年度)で、うち予防注射を接種したのは約489万頭。
接種率は72.6%と、15年前に比べると10ポイント低くなった。
国内では1957年以降、犬の発症が確認されていないため、危機感が薄れている。
 
ただ2008年にインドでは2万人、中国では2466人が感染するなどアジアではいまだ猛威をふるう。
狂犬病は致死率がほぼ100%。
検疫の目をかいくぐって感染した動物が国内に入り、ペットに感染する可能性もある。
 
同法は飼い主に予防注射を受けさせることを義務付け罰則も定めるが、違反例の摘発は年150件ほどにとどまる。
登録や注射の対象とする動物は犬のみで、感染する可能性がある猫などについては規定がない。



ペットの犬や猫から感染する主なズーノーシス
● カプノサイトファーガ感染症
 原因; かみつきや引っかき
 主な症状; 腎不全、敗血症、髄腹炎

● 猫ひっかき病
 原因; かみつきや引っかき
 主な症状; 頭痛、リンパ節の腫れ

● パスツレラ症
 原因; かみつきや引っかき
 主な症状; 患部の腫れ

● Q熱
 原因; 病原菌を吸入
 主な症状; 関節痛、倦怠感

● トキソカラ症
 原因; 寄生虫の体内侵入
 主な症状; 肝腫大、視力低下

● エヒノコックス症
 原因; 寄生虫の体内侵入
 主な症状; 肝機能障害


こんな時はズーノーシスに注意
・犬や猫にかまれたり引っかかれたりした 
・子供、高齢者、妊婦、薬の服用中など免疫力が低い
・動物が排泄しがちな公園や砂場で遊んだ

どう対処すればいい?
・症状がなくても念のためすぐに受診する
・動物の飼育や接触について医師に伝える
・動物病院で獣医に相談する
・症状が改善しない場合は別の病院も受診する


出典
日経新聞・朝刊 2015.10.18


<私的コメント>
昨日、年頃の女性が風邪で来院。
鼻の頭に怪我をしている。
「どうしたんですか」と訊くと「飼い犬に噛まれたんです」という返事。
形成外科で縫合してもらったようで傷口が綺麗に治る薬も貰っている。
はたして感染症の可能性についての説明はされているのかと思ったが不安を煽ることにもなるので、そのことについては触れなかった。
よほどの大きな犬なのかと思ったが、小型犬のチワワだった。
屋内で飼う小型犬こそ密接な接触が多いことからも要注意だ。


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        近くの公園に咲く四季桜 2015.12.19 撮影