増える食道と胃の境界のがん 早期発見には内視鏡検査を
10年で手術2倍 逆流性食道炎が原因
食道と胃の境界にできる「食道胃接合部がん」が増えている。
背景には、高齢化や太った人の増加のほか、胃がん の原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌に感染している人の減少が関わっている可能性もある。
内視鏡検査で早期発見できる。
加齢・肥満 ピロリ菌感染減も影響?
東京都の男性公務員(52)は2016年の夏ごろから時折、食べ物が胸につかえる気がしていた。9月、食べたそばがひっかかり、「おかしい」と、職場に近い病院で内視鏡検査を受けた。モニターにカリフラワーを黒く染めたような不気味な塊が映った。それを見た瞬間、がんだと思った。
東京大医学部付属病院の胃・食道外科で詳しい検査を受け、「食道胃接合部がん」と診断された。
それまで職場の健康診断でも問題を指摘されたことが無かったので驚いた。
翌月、胃の上半分と食道の下部3分の1を切除する手術を受けた。
職場には12月に復帰したが、胃の周辺のリンパ節に転移があったため、術後1年間は抗がん剤治療を続けた。
現在は3ヵ月に1度、経過観察のために検査を受けている。
男性は、「治療では想像したより体力を消耗したが、短期、中期の目標に向かって日課を決め、一歩ずつ乗り越えた」
食道胃接合部がんは、食道と胃の境界の上下2センチにできたがんのことだ。
正確な発生数は統計がなく不明だが、日本胃癌学会と日本食道学会の調査では、273病院で実施された直径4センチ以下の食道胃接合部がんの手術は01年に178件だったのが10年は426件と2.4倍に増えていた。
増えている背景には、高齢化や肥満の増加により、逆流性食道炎が増えている状況があると考えられる。
逆流性食道炎は胃酸が逆流し、食道の粘膜に慢性的な炎症ができる状態で、がんの原因となる。
通常は食道下部括約筋の働きで食道と胃の境界は締まっており、胃酸は逆流しない。
だが、加齢に伴いこの筋肉が緩み、胃酸の逆流を防げなくなることがある。
また、太って腹部に脂肪が増えると腹圧が高まり、胃酸が逆流しやすくなる。
過去30年間でピロリ菌への感染率は半分以下に減った。
ピロリ菌感染の減少によって、逆に食道胃接合部がんが増えている可能性もあるという。
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜が萎縮し、胃酸が出にくくなる。
すると、逆流性食道炎になりにくいからだ。
ただし、胃がんの方が食道胃接合部がんより人数が多い。
専門家は「胃がんのリスクを考えれば、ピロリ菌に感染している人は除菌するべきだ」と言う。
*寝る直前の食事 / 食べてすぐ横に・・・注意
基本的には内視鏡で検査する。
早期なら、そのまま内視鏡で切除もできる場合がある。
逆流性食道炎を患ったことがあるなどリスクが高いと思う人は、年1回程度は内視鏡検査を受けたい。
がんが転移しているなど手術できない場合を除き、基本的には手術する。
早期なら内視鏡でがんを取り除くことができるが、それ以外は食道と胃の少なくとも一部と、周りのリンパ節を取り除く手術が必要になる。
がんの大きさや食道にどれぐらいはい上がっているかによって切除範囲は異なる。
進行したがんでは、術前に抗がん剤や放射線治療をする場合もある。
リンパ節への転移がある場合などは、術後に抗がん剤治療もする。
標準的な治療法はまだ完全には確立しておらず、医療機関によって治療の内容は多少異なっている。
がんの原因となりうる逆流性食道炎を防ぐためには、日常生活では太りすぎに注意するほか、寝る直前に食事をしたり、食べてすぐに横になったりしないことなどがポイントとなる。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.12.11
<関連サイト>
インフルエンザの経鼻ワクチン
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/765