薬とのつきあい方:1 新しい薬、早く使えるようになるの?
昨シーズン(2018~2019年)はインフルエンザが大流行した。
推計の受診者数は約1210万人。
最も多く処方された治療薬が2018年3月に発売された「ゾフルーザ」だった。
同年10月~19年3月のインフルエンザ治療薬の供給量の約4割を占めた。
この薬は、開発した塩野義製薬(大阪市)が審査を申請してから発売まで約半年、審査期間も約3カ月という異例の速さだった。
新しい薬を製造・販売するには、医薬品医療機器総合機構(PDMA)で有効性や安全性などの審査を受ける必要がある。
その結果をもとに、厚生労働相が承認する。通常、審査には約1年かかる。
これまでも、審査の順番を繰り上げて優先する仕組みはあった。
だが、15年4月から、審査期間も短縮する「先駆け審査指定制度」が導入された。
ゾフルーザはその薬の承認第1号だ。
先駆け審査の対象に指定されるには、
▽ 画期的な治療法
▽ 命にかかわるような病気
▽ 治療法がない、または、今までの治療法より有効性が極めて高い
▽ 世界に先駆け日本で申請する
――という四つの要件を満たさなければならない。
ゾフルーザは、1回錠剤をのむだけで済み、これまでの薬と作用の仕方が違うことなどから選ばれた。
薬の開発には時間がかかる。
たくさんの物質の中から、効果がありそうな物質を絞り込む。
そのうえで有効性や毒性を確かめるために動物で実験をする。
その後、健康な人で安全性を確かめ、患者で効果や用量などを確認。
さらに、多くの患者を対象に試験をする。
人を対象にした試験は治験と呼ばれ、数年かかる。
ここまでのデータがそろって初めて審査を申請する。
公的保険を適用するかどうかが決まり、発売にいたる。
以前は「ドラッグ・ラグ」の問題が指摘されていた。
海外と比べて国内での薬の承認審査の期間が長いことで、海外では使える薬が日本では使えない状態をさす。
15年ほど前は審査に2年以上かかることも多かった。
例えば、消化管で炎症が起こる難病のクローン病。
治療薬レミケードは1998年に米国で承認、発売され、翌年日本でも承認申請された。
だが、審査に2年以上かかり、発売されたのは02年だった。
審査する人員(審査調整官)を増やすなどして、現在は審査にかかる時間は欧米とほぼ同じ1年ほどになった。
コメント
審査調整官がどのように選ばれ、どのような資格をもつ人達なのか少々調べてみましたが、その実態・実像はわかりませんでした。
先駆け審査は、さらに審査の時間を短縮しようという試みだ。
厚労省は試験的に導入し、昨年11月に医薬品医療機器法(薬機法)を改正し、近く本格実施する。
申請前の治験段階から前倒ししてそろったデータなどを評価する。
PDMAで担当者を決め、製薬会社の相談にのって承認までの過程をフォローする「コンシェルジュ」の仕組みも採り入れた。
先駆け審査には現在、薬、医療機器などを合わせて42品目が指定されている。
参考・引用一部改変
朝日新聞・夕刊 2020.1.27
<関連サイト>
先駆け審査指定制度について
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp150514-01.html
「先駆け審査指定制度」の対象品目の募集を開始します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06567.html
先駆け審査指定制度の対象品目一覧表
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/0003.html
【医薬品】先駆け審査指定制度、対象品目の一覧と開発状況まとめ