悪い姿勢が招く「隠れ酸欠」 呼吸筋ほぐして深い息に
「なんだか息苦しい」と訴えて呼吸器内科を受診する人が増えているという。
検査で病気は見付からず、悪い姿勢などによる呼吸の浅さが原因のことが多い。
「隠れ酸欠」とも呼ばれる症状だ。
階段を上ると息切れする。仕事などでちょっと無理をすると、すぐ息苦しくなる。
これらは、日ごろから呼吸が浅くなっていることが原因で起きているかもしれない。
人は呼吸を通じて空気中の酸素を体内に取り入れ、二酸化炭素を排出する。取り入れた酸素は栄養素と結びついて燃焼し、活動エネルギーを生み出す。このとき燃えかすとして出るのが二酸化炭素だ。
呼吸が浅いと、空気が体に十分入らず、酸素と二酸化炭素を換気する効率が悪くなる。
すると代謝が落ち、各臓器の働きが低下したり、疲れやすくなったりする。血流も悪くなり、肩こりやむくみが起こりやすくなる。
呼吸は感情とのつながりも深い。
浅い呼吸をしていると、不安やストレスを感じやすくなる。
一連の心身の不調の背後に「隠れ酸欠」が潜むとみられる。
呼吸が浅い人が増えている一因として、スマートフォン(スマホ)の普及が挙げられる。
多くの人はスマホ操作時に背中を丸め、肩が前に入り込んだ姿勢になりがちだ。
猫背や前かがみの姿勢は肺を圧迫し、息を深く吐いたり吸ったりできなくなる。
浅い呼吸を改善するには、まずは姿勢をよくすることが大切だ。
そのうえで、呼吸するときに動く筋肉に働きかける。
呼吸時は、肺を収めている骨格「胸郭」の周りにある筋肉群「呼吸筋」が収縮する。
この呼吸筋を柔らかくほぐすにはストレッチがよい。
呼吸筋は加齢や悪い姿勢によって硬くなる。
しなやかさを取り戻せば、深くゆったりした呼吸がしやすくなる。
呼吸筋のなかでも、息を吸うときに使う筋肉の柔軟性を高めるには、背中と胸のストレッチが有効だ。
足を肩幅に開いて立ち、背筋を伸ばす。
胸の前で両手を組み、ゆっくりと鼻から息を吸いながら背中を丸め、腕を前に伸ばしていく。
胸に大きなボールを抱えるイメージで背中を丸めるのがコツだ。
息を吸いきったら、口からゆっくりと吐きながら元の姿勢に戻ろう。
息を吐くときに使う筋肉は、肺の外側にある胸壁と呼ばれる部位のストレッチでほぐすとよい。
足を肩幅に開いて立ち、腰の後ろで両手を組んで、ゆっくりと鼻から息を吸う。
吸いきったら、口からゆっくり吐きながら、組んだ両手を下へ伸ばしていく。
胸を張り、肩甲骨を中央に引き寄せるようにしたい。
1セット3~6回が目安。
朝晩、昼休みなど一日のうちに何度か取り組むとよい。
もう一つのおすすめは、口すぼめ呼吸という呼吸法だ。
「1、2」と数えながら鼻から息を吸い、「1、2、3、4」と数えながら口をすぼめてゆっくり息を吐く。
吸う・吐くのセットを20回ほど繰り返そう。
口をすぼめて細く長く吐くと、呼吸回数が自然に減り、十分に息を吐ききることができる。
その結果、深く息が吸えるようになる。
副交感神経が優位になり、リラックス効果も得られるという。
ただし、強く口をすぼめると息切れする場合がある。
ロウソクの火を揺らす程度の強さで息を吐くのがポイントとなる。
慣れるにつれ吐く時間を長くすると、より効果的だ。
深い呼吸ができるように体を整えよう。
参考・引用一部改変
NIKKEI プラス1 2019.3.23