子どもの重症化、なぜ少ない ウイルス、鼻でストップの可能性
緊急事態宣言が解除され、1日から学校再開が本格的に始まった。
これまでの報告では、新型コロナウイルスに感染する子どもは少なく、感染しても重症化する例はまれという。
なぜ子どもはコロナに強いのか。
まだわからないことが多いが、第2波が来る前に、一斉休校の功罪も含めた科学的検証が必要だ。
■ 世界で報告次々
新型コロナに感染する子どもが少ないことは、世界各国で報告されている。中国や米国、イタリアの調査では、感染が確認された人のうち、18歳未満が占める割合は2%に満たない。
また中国の調査では、感染や感染が疑われた子どものうち、9割以上が無症状か軽症、中程度の症状で、重症化したのは約6%だった。
感染しても大人と同じようにウイルスを広めるかどうかもよく分からない。1月下旬、仏のスキーリゾートで起きた集団感染には、9歳の男の子が含まれていた。
症状は軽かったが、感染がわかる前に複数の学校やスキー教室に通っていたため、すぐに170人以上の接触者が確認され、73人が検査を受けた。
だが感染者はいなかった。
英紙ガーディアンによると、4月半ばから小学校などを限定再開している欧州でも、学校を介した感染拡大の兆候は見られないという。
新型コロナのパンデミックで興味深いのは、病気になる子どもが大人に比べてとても少ないことだ。
感染した子どもの多くは、ウイルスが鼻にとどまっている可能性がある。
■ 米国で裏付け論文
最近、この説を裏付けるような論文が米医師会雑誌に掲載された。
新型コロナウイルスは、ヒトの細胞に侵入する際に特定の受容体とくっつく。この受容体の遺伝子の量を過去に採取し保存しておいた鼻の奥の細胞を使って調べたところ、10歳未満の子どもが最も少なく、年齢が上がるにつれ増えていた。
ただ、感染拡大の初期に多くの国で学校や保育施設が閉鎖された上に、検査を受けていない例も多く、データは不十分だ。
米国立保健研究所(NIH)は米国の2千家族、6千人を対象に、新型コロナに感染している子どもの割合を調べるとともに、6カ月間追跡し、家庭内でどう感染が広がるかを調べるという。
子どもは感染に抵抗力を持つのか、ただ単に症状が出ないだけなのか。
大人と同じぐらいウイルスを広めるのか。
このウイルスの感染には分からないことが多く、研究で明らかになることが期待される。
一方で、子どもに多い原因不明の「川崎病」に似た症例も欧米では報告されており、新型コロナとの関連が指摘されている。
米疾病対策センター(CDC)は「小児多臓器炎症症候群」と名付け、医師向けに警告を出した。
日本では、日本川崎病学会が日常的に川崎病の診療を担う医師にアンケートしたところ、新型コロナの感染者に川崎病のような症状が出ている子どもはいなかった。
今年2~4月に診断した川崎病の患者数は前年の同じ時期と比べて減少、あるいは同じぐらいの医療機関がほとんどで、「現段階で川崎病と新型コロナの関連を積極的に示唆できるような情報は得られていない」との見解を出した。
学会関係者は「海外の情報を注視しながら国内の状況を確認し、患者さんの家族の不安解消にむけて情報発信したい」と話す。
日本国内でも、感染者に占める子どもの割合は少ない。
厚生労働省のまとめによると、5月27日時点で10歳未満は278人(1.7%)、10~19歳は390人(2.4%)にとどまる。
重症者や死亡者の報告もない。
ただ、北九州市ではクラスター(集団感染)とみられる事例が小学校で起きている。
日本小児科学会は、国内の子どもの感染状況や症状の経過の把握、治療の検証につなげようと、20歳未満の全ての患者のデータベースを5月中旬から作成している。
■ 主に家で感染か
学会がまとめた国内外の新型コロナ感染の子どもに関する知見によると、
・子どもの感染例のほとんどは家族内感染が疑われる
・ほとんどの患者は経過観察か対症療法で十分
・学校や保育施設でクラスターはないか、あるとしても極めてまれ
という。
また、国が感染拡大の防止策としていち早く取り組んだ一斉休校や、その後の保育施設の閉鎖については「流行阻止効果に乏しい」と指摘した。
コメント
安倍総理がほぼ独断かつ即断した一斉休校。
「責任は総理たる私がとる」と豪語しました。
しかし、彼は今までに一度も責任をとったことなどありません。
全国一斉休校にする理論的根拠など何もありません。
しかし、彼は「森羅万象を司っている」と語ったこともあるわけですから、謝ることも謝る必要もないのでしょう。
他の対策と比べて効果は少なく、死者の減少は2~3%にとどまる一方で、医療従事者が子どもの世話で仕事を休まざるを得なくなり、新型コロナによる死亡率を高める可能性も推定されるとした。
そもそも患者が少なく、評価が極めて難しいが、学力の低下、屋外活動や社会的な交流が減ったことで抑うつ傾向に陥ったり、家庭内暴力や児童虐待のリスクが高まったりするなど、心身への悪影響が大きいのではという指摘もある。
第2波に備え、流行していない地域での一斉休校の是非や、対策が本当に効果があったのかなど、検証が必要だ。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.6.2
<関連サイト>
年齢別の患者数と死亡率(米国)