コロナ第2波どう備える 今は「うまくいっているだけ」
感染「第2波」 どう備える 下水道のウイルス調査 素早く覚知
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、緊急事態宣言が解除された。
オーバーシュート(爆発的な患者の増加)も医療崩壊も起こらず、私たちは何とか第1波を乗り切った。
だが油断をすれば、「第2波」はすぐ来るかもしれない。感染力が強いこのウイルスと、どう向き合うべきなのか。
日本や中国、韓国、欧州の多くの国では、散発的な感染者集団(クラスター)は出ているものの、ピーク時に比べると感染者は減りつつある。
しかし世界保健機関(WHO)は25日、こうした国々で性急に感染拡大防止策を解除すれば、直ちに第2のピークが訪れると警鐘を鳴らした。
スペインかぜ第2波、致死率は10倍
約100年前に流行し、世界で約6億人が感染、数千万人が亡くなったスペインかぜのときはどうだったのか。
スペインかぜを分析した東京都の資料によると、日本での第1波は1918年11月に訪れ、約4万4千人が死亡した。
その後、収束に向かったものの、約1年後の冬に第2波が到来した。
米国やフランスなどでは第2波の方が脅威となり、国立感染症研究所によると、致死率は第1波のときの10倍だったという。
第2波の兆候を捉える方法の一つとして、海外で注目されているのが、感染者の排泄物に由来するウイルスの量を調べる下水道のモニタリングだ。
ウイルスの広がりを確認する方法には、PCR検査や抗体検査などもある。
しかしPCRの検査数を大幅に増やすことは難しく、抗体検査はリアルタイムの感染状況はつかみづらい。
下水を採取し、ウイルスのサイズよりも小さい穴のあいた膜を使うなどしてウイルスを濃縮する。
その後、PCRで1リットルあたりにどれだけウイルスの遺伝子があるかを調べて数値の変化を追えば、急に値が大きくなった場合に素早く気付ける。
米国やフランス、オランダなどでは下水の中から感染者の排泄物に由来するとみられる新型コロナウイルスが検出されている。
覚知、収束にも役立つ可能性
外出自粛の呼びかけやPCR検査の態勢を強化するといった準備が前もってできる。
この方法は、第2波の覚知だけでなく、収束に向かっているかどうかの判断にも役立つ可能性があるという。
国内でも5月から、日本水環境学会のメンバーと自治体が連携し、東京都や横浜市などでモニタリングが始まった。
北島さんは「仏ではロックダウン後に下水中のウイルス濃度が下がったという報告も出ており、こうした施策の有効性を見るのにも使える」と話す。
コロナ治療と先進医療、どう共存 院内感染防ぐ専用病棟準備
第2波が来た場合にも対応できるよう、医療機関も、感染者が増えても医療崩壊が起きない体制づくりを進めている。
東京医科歯科大付属病院の救命救急センターは第1波で、感染の疑いがない患者の受け入れを一時停止する「コロナシフト」をとった。
重症と中等症の患者用に最大65床を整備し、最も多いときで36人のコロナ患者を受け入れた。
第2波がきた場合も、コロナ患者を受け入れた。
第2波がきた場合も、コロナ患者を受け入れる方針だ。
ただ、大学病院として先進医療を担っていく使命もある。
コロナ患者の受け入れのため、抑制していた通常診療を再開させていくなかで、大事なポイントは、通常診療といかに共存させるかだ。
院内感染を防ぐため、一応フロアにコロナなど感染症の患者を集める専用病棟を作る準備を進めている。
第1波で院内の情報伝達の難しさを経験。
情報の一元化のため、4月に医師や看護師、事務職員ら約10人からなる「新型コロナウイルス対策室」をつくった。
また手術がなく余裕ができた医師らを集め、集中治療室(ICU)の清掃など必要な業務にあたる仕組みを構築した。
関係者は「第1波は、走りながら考えていた。第2波が来たときは、よりスムーズに対応できるようにしたい」と話す。
「来るものとして対策を」
ウイルスの特性も、第2波にとっては脅威だ。
コロナウイルスの仲間の重症急性呼吸器症候群(SARS)では大きな第2波は来なかったが、新型コロナは症状が出ないまま感染する人が多く、感染が広がりやすいという。
新型コロナの抗体を持っている人はまだ限られる。
このまま日本で感染者数が増えなければ、また海外から持ち込まれて第2波が起こるのではないか、と懸念する声がある。
それでも日常生活が戻るにつれ、どうしても危機感が薄れてしまう。
現在の状況は「なぜかうまくいっているだけ」「第2波は必ず来るものとして備えなければならない。その上でできるだけ波の山を小さくすることが大切」と話す人もいる。
第1波では、感染した人が差別されるケースもあった。
それでは感染したことを隠すようになり、対策できないことでかえって感染が広がりかねない。
また、「8割削減」や「新しい生活様式」というメッセージはわかりにくい。
国は、私たちが何をすればいいか具体的に示していく必要がある。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.5.29