コロナに負けない シニアが自宅で健康維持の知恵
運動や栄養、チェックして習慣に
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ごうと、全国的に外出を控える動きが続いてきた。
家にばかりいることで活動量や会話が減り、高齢者の心やからだに悪い影響が出るのでは、と心
配されている。
「ジムにも行けない、気軽に集まることもできない」。当たり前にできていたことがこの春、で
きなくなり、家の中で過ごす時間が大幅に増えた。
巣ごもり生活で会話が減り、すでに影響が出ているという報告がある。
健康政策を専門とする筑波大のK教授は、新潟県見附市と共同で、市の健康運動教室に通っていた683人(平均年齢69・6歳)を対象に調査をした。
教室は週1~2回開かれ、ストレッチや有酸素運動、筋トレなどをしてきたが、新型コロナの感染拡大を受け、3月2日から休止になった。
5月上旬まで約2カ月の自粛生活で72%が運動不足を実感、63%は会話の頻度が減ったと感じていた。
会話が減った人と変化がない人にわけて分析すると、減った人は「楽しい気分で過ごせない」「興味のあることが減った」割合が高かった。
K教授は「外出自粛が社会参加の制限につながり、認知機能や免疫力の低下といった想像以上に深刻な事態を生んでいる」と指摘。
「要介護になる人や認知症になる人を増やさないよう、対面しなくてもお年寄りが交流できる仕組みづくりが求められる」と話す。
心身の衰えや認知症を防ごうと、これまでは「積極的に外に出て社会参加を」と促されてきた。家にいるのは社交的でなく、良くないことと言われることもあった。
しかし新型コロナの流行で、人との接触を減らすよう呼びかけられ、運動や趣味のために集う湯はなくなり、状加は一変した。
新型コロナの収束はまた先とみられ、「家にいながら」の健康づくりの必要性が高まっている。
楽しく過ごせるおうちの知恵で
どうしたら家で楽しく快適に過ごせるか。
東大高齢社会総合研究機構は5月、シニア向けの生活の工夫をまとめた「おうちえ」をウェブで公開した。
「おうち」と「知恵」をかけて名付けた。
健康の基本は、体づくりと規則正しい生活だ。
「お」のからだ編では、体内時計のずれが不調のもととして、生活リズムを整えることがポイントとする。
血圧測定やストレッチなど毎日の習慣を書き出し、点検することをすすめる。
日光を浴び、外の空気に触れての運動や、家の中でバランスを鍛えるトレーニングなどを推奨する。
「う」はくらし編。
ずっと家にいると、家の中のちょっとした傷などが余計に気になる。
「簡単な修繕に挑戦するなら今がチャンス」と促す。
「ち」のきずな編では、途絶えがちな近所づきあいを続けようという。
インターホン越しにあいさつをしたり、ベランダやガラス越しで声がけをしたりもできる。
会えなくなった友人らに絵手紙や写真を送って、つながりを保とうと紹介する。
「え」のこころ編では、「時には休むことも大切」「その日にあったちょっといいことを日記に書こう」などと呼びかける。
作成した同機構の I 機構長は「長く過ごすおうちでの時間を充実させるにはどうしたらいいかと考えた。逆転の発想です。家の中を整え、家でできる趣味や楽しみを増やすヒントにしてほしい。コロナが落ち着いたころに調子の良い自分でいられるよう、無理のない範囲で採り入れてもらえれば」と語る。
感染症に負けず 毎日の行動目標
東京都健康長寿医療センター研究所「社会参加と地域保健研究チーム」は健康チェック表「感染症に負けない! 本日の8ミッション」を作った。
一日の行動目標を八つ掲げ、達成できたかを自分で記入し、役立ててもらおうとするもの。
適度な運動や十分な栄養バランス、ストレス解消、セルフケアについて目標をあげる。
第1弾の目標は、いすに座っての「ひざのばし」などの運動や、離れて暮らす家族・友人に電話・メールをする「交流」、たんぱく質を適量食べるなど。
日付と達成項目を記入できる1週間分のシートとセットで、第4弾まである。
リーダーの K 研究部長は「シートも活用して目標が習慣になれば、生活に張りがでてくるでしょう」と話す。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.6.13
<関連サイト>
シニアがおうちで楽しく健康に過ごすには