コロナは「再感染」ある 米国や香港で事例確認の論文 ③

コロナは「再感染」ある 米国や香港で事例確認の論文 ③

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63915800W0A910C2000000?channel=DF140920160927

ベルギーやオランダでも再感染例を確認との報道

再感染の報告はさらに続きます。

香港の患者に関する報道の後、ベルギーにも再感染者がいたことが明らかになった。

ブリュッセルタイムズ紙の8月25日の記事によると、3月と6月の計2回、新型コロナウイルス感染症と診断された患者から検出したウイルスのゲノム配列を比較したところ、初回に比べ2回目では11塩基に置換が生じており、別のウイルスに再度感染したと判断された、とのことです。

 

また、オランダでも、オンラインニュースメディアNL Timesが、8月27日までに計4人の再感染者が確認されたと報道している。

初回と2回目に感染していたウイルスの遺伝子を比較した結果、全員が再感染と判定さた。

4人はすべて60歳以上で、どの患者も2回目の感染時の症状は比較的軽症だった。

初回感染から再感染までの期間は数週間から数カ月だったとのことだ。

 

普通の風邪のコロナウイルスも再感染する

人に感染するコロナウイルスとしては、今回流行している新型コロナウイルスSARS-CoV-2)以外に、2002年から2003年に世界的に患者が報告されたSARS重症急性呼吸器症候群)の原因ウイルスと、2012年にサウジアラビアで発見されたMERS(中東呼吸器症候群)の原因ウイルスがよく知られている。

しかし、冬期に患者が増える普通の風邪の一部は、4種類のコロナウイルス(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)の感染により発生している。

 

英国の研究グループが1990年に発表した論文では、普通の風邪を引き起こすコロナウイルスも、感染から1年後に再び感染しうることが示されている。

著者らは、コロナウイルスの1つである「HCoV-229E」を15人のボランティアに感染させ、血液中の抗体の反応を観察した。

15人のうち、もともと持っていた抗体価(抗体の量や強さ)が低かった10人が感染し、8人が発症した。

抗体価は、感染から2週間後に最高値となり、その後低下した。

 

1年後に、初回に感染した10人のうち9人と、感染しなかった5人について再び抗体価を調べたところ、初回に感染した人たちの抗体価は、感染実験の前に比べてやや高い程度にしか保たれていなかった(感染しなかった5人は実験前から1年後までほぼ変化なし)。

 

さらに、同じウイルスを用いた再感染実験を行った結果、1年前に感染した9人のうち6人が再び感染した。

ただし、感染期間は前回より短く、症状が出た人もいなかった。

コメント

症状が出ていないのにどのようにして感染を確認したのかという疑問が一瞬湧きます。

しかし、「血液中の抗体の反応を観察した」と書かれていますから、臨床症状では判定していないようです。

つまり、「感染」そのものの定義が「抗体価の上昇」ということになります。

再感染は、悪い面ではなく「ブースター効果」で抗体価が上昇するというメリットもあります。

しかし、どれだけ高抗体価が持続するか、という問題もあります。

 

一方、初回に感染しなかった5人は、2回目の感染実験で全員が感染し

たが、症状は軽症だった。

 

この報告は、普通のコロナウイルスの感染によって獲得する免疫力は1年程度で弱まり、毎シーズン感染する可能性があること、しかし、感染しても軽症で済む程度の免疫は維持できることを示している。

 

再感染がどのくらいの頻度で起こるかは不明

新型コロナウイルスの再感染の報告は、今後増加する可能性がある。しかし、現時点では、どのくらいの頻度で再感染する患者が発生するのかは不明で、初回感染時に十分な免疫が得られなかったごく一部の人にのみ生じる可能性も残っている。

また、再感染した患者が、周囲の人に感染を広げるかどうかに関する情報は今のところない。

 

それでも、再感染が発生する、という事実は、現在開発されているワクチンの有効性に不安を抱かせるもので、全く新しいアイデアに基づくワクチンや、画期的な抗ウイルス薬が登場しなければ、他のコロナウイルスと同様に、新型コロナウイルスも長期にわたって人の間を循環し続ける可能性が出てきた。

 

しかし、これまでに紹介してきた再感染患者の多くにおいて、2回目の感染は軽症または無症状であったことから、ワクチンを接種した人々が感染しても、入院や重症化を回避できる可能性はある。

そうであるなら、新型コロナウイルスも、冬期に流行する、インフルエンザのような感染症の1つとみなされる日が来るかもしれない。

 

わが国の新型コロナウイルス感染者は累計8万人を超えた。

既に感染し治癒した人も、決して気を緩めることなく、感染予防を心がけることが大切となる。

 

参考・引用一部改変

日経Gooday 30+ 2020.9.24