怖い腎機能低下 「透析」招く病気で最も多いものは?
腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿から出したり、体内の電解質バランスや血圧を調整したりするなど、体の恒常性を維持するさまざまな機能を持つ重要な臓器だ。
慢性腎臓病は、これら腎臓の機能がゆっくりと低下していく病気の総称だ。日本の慢性腎臓病の患者数は1330万人とされ、これは成人の8人に1人に該当する。
慢性腎臓病は多くの場合、無症状のままゆっくり進行する。
腎臓は一旦障害を受けると元に戻すのは非常に難しいため、発見が遅れるなどして腎機能の低下が進むと、やがて末期腎不全の状態となり、血液を人工的に浄化する透析療法なしでは生命を維持できなくなってしまう。
この透析を受ける患者は年々増えており、全国で約34万人に上る(2018年末時点)。
透析を導入する原因の1位は糖尿病
透析治療を導入することになった患者の原因疾患の内訳は、以前はIgA腎症などの慢性糸球体腎炎という、糸球体に炎症を起こす病気が原因の大半を占めていが、ここ20年ほどで糖尿病と入れ替わった。
今、最も多いのは、糖尿病の合併症として起こる糖尿病性腎症だ。
腎硬化症も増加している。
腎硬化症とは、動脈硬化で腎臓が硬く小さくなり、腎機能に異常をきたすものをいう。
原因は加齢などによる高血圧で、腎機能が落ちると、さらに血管も硬くなっていく。太い血管は少々の動脈硬化ですぐには詰まらないが、細い血管は容易に詰まる。
腎臓は細い血管の集合体なので、少しの動脈硬化も大きな問題となる。
そのほか、脂質異常(高コレステロールや高中性脂肪など)や高尿酸血症、喫煙など、さまざまな要因が慢性腎臓病に絡んでいる。
腎臓の機能は加齢とともに衰えるため、長生きするほど慢性腎臓病になるリスクが高まる。
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日本腎臓学会では「CKD診療ガイド」を開示し、年齢と腎機能(推算GFR, eGFR)から腎障害の程度に応じてステージ2 ~ ステージ5まで分類しています。
この分類によれば、当然のことながら高齢になるほど正常者(治療が不要な人)は減っていきます。
しかし、老化自体は生理的なものであり、高血圧のようには通院治療によって腎障害が劇的に改善するものではありません。
学会や治療にあたる医療側も高齢者への治療介入は慎重に行う必要があります。
健診で異常を指摘されたら出来るだけ早く受診し、対処することが大事だ。
背景にある病気を改善させることで、腎機能の低下を抑える
慢性腎臓病の治療は、ベースにある病気を改善させることによって、腎臓の負担を減らすことが原則となる。
例えば、高血圧の人が降圧薬を使うと、血圧が下がるだけでなく、尿たんぱくが減る効果も得られる。
腎臓は血管の塊なので、血圧を下げるだけでも負担が軽くなるのだ。
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ここで注意すべきは、血圧を下げ過ぎると、腎臓の本来の役割である老廃物を排出するという「老廃物濾過機能」が落ちてしまうということです。
降圧は腎機能を定期的にチェックしながら慎重に行う必要があります。
血糖値や尿酸値、脂質(コレステロール、中性脂肪など)の値が高い人も、同様に良好な状態にコントロールする必要がある。
食事では、重症度に応じて塩分、カリウム、リン、たんぱく質の制限が必要となる。
ただし、進行してしまうと治療は困難になるため、早めに治療することが大切だ。
現在、日本の透析の9割以上を占める血液透析は、血液を体外に取り出しポンプで循環させて、フィルター(ダイアライザー)を通して、毒素と余分な水分を除去する方法だ。
通常は週3回通院し、1回約4時間かけて治療を受ける。
透析の技術が大きく進歩した今、ある程度の自己管理ができれば、腎不全が直接の原因で亡くなる人は少なくなっている。
しかし、透析は腎臓の機能を代行するだけで、腎臓病を治す治療ではない。腎臓病そのものは進行するので、腎臓病で亡くならないとしても、心臓や血管の病気を起こすリスクは高い状態にある。
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このことを専門領域では「心腎連関」といいます。
透析や腎移植が必要となる前に、慢性腎臓病のベースとなる、生活習慣病などの病気を改善したいものだ。
参考・引用一部改変
日経Gooday 2020.9.14
<関連サイト>
人工透析患者の主な原因疾患