慢性腎臓病の早期発見による人工透析回避

人工透析受けないために…慢性腎臓病の早期発見カギ

腎臓の機能が低下し、人工透析を受ける患者が増え続けている。
慢性腎臓病の初期段階で気づき専門医の治療を受けていれば、患者にとって負担の大きい透析に頼らずに済んだケースが少なくない。
治療に必要な食事指導や検査に対する診療報酬が透析に比べ低く、医療機関が治療に力を入れにくいという事情もある。
慢性腎臓病の早期発見と透析を回避するための医療体制の充実が必要だ。

気づかずに悪化
人工透析の大半を占める「血液透析」は、腎臓のように血液内の老廃物を排出する体外装置に患者の腕から管で血液を送り込み循環させて浄化する。
1回約4時間、週3回通院する必要があり、患者の日常生活や仕事への影響が大きい。

透析に至らないようにするには、まず予備軍である慢性腎臓病の早期発見が重要だ。
慢性腎臓病は糖尿病などの合併症や腎臓内の炎症などのため
(1)たんぱく尿など腎臓に障害がある
(2)腎臓の機能を示す糸球体ろ過量が60未満に低下している
――のいずれかが3カ月以上持続した状態だ。

国内の推定患者は約1330万人。
日本腎臓学会の槙野博史理事長は「自覚症状がなく、気づいていない人も多い。尿検査でたんぱくが出たら精密検査を受けるべきだ」と警告する。

いったん腎機能が低下すると回復するのは難しく、たんぱく質などの食事制限と血圧管理、薬物療法を組み合わせた「保存療法」で残る機能を維持する治療が、透析に至らせないようにするのに有効だ。

「糖尿病性」が増加 移植少なく
日本透析医学会によると、10年末の透析患者数は29万7126人。
20年前の約3倍で、国民の約420人に1人が透析患者という世界有数の“透析大国”だ。
10年は約2万8000人の透析患者が死亡したが、新たに約3万8000人が透析を導入した。
新規導入は前年に比べて微減したものの、全体では毎年約1万人のペースで患者が増え続けている。

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透析を導入する原因となった疾患でみると、同学会が患者調査を始めた1983年以降、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病性腎症がほぼ一貫して増加。
同年は、腎臓内の毛細血管(糸球体)が炎症を起こす慢性糸球体腎炎が6割を占めていたが、98年には糖尿病性腎症がトップになり、10年は43.5%を占めている。

末期の腎不全患者の根治治療としては、日本臓器移植ネットワークに登録して死体からの腎提供を待つ方法もある。
ただ同ネットワークに腎提供を希望して登録している患者は1万1977人(8月1日現在)いるが、移植を受けられるのは年150~200人程度。
親族からの生体腎移植も年1000人前後で、多くの患者は透析に頼らざるを得ない状態になっている。

出典 日経新聞・夕刊 2011.8.25(一部 省略・変更)
版権 日経新聞



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2011.7.18撮影 長野県・蓼科 とあるオーベルジュにて



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