がん予防目的の卵巣摘出

卵巣摘出… がん予防目的 閉経前は慎重に

子宮筋腫などの手術の際、がん予防の目的で卵巣の摘出が行われていることについて、閉経前の女性では更年期障害骨粗しょう症などのマイナス面が大きいとして、見直す動きが出ている。(中島久美子)

卵巣は子宮の左右にあり、エストロゲンなどのホルモンを分泌する。
卵巣がんの早期発見は難しいことから、閉経後や、妊娠出産を終えた閉経間近の女性では、他の病気の手術時に一緒に摘出することがある。

ところが、卵巣摘出はがん予防の利益よりも健康への悪影響の方が大きいとする研究が、米国で2005年ごろから相次いで発表された。

米国人女性約3万人に対する24年間の調査では、両方の卵巣を摘出すると、卵巣がんによる死亡の危険性は0・06倍になった。
エストロゲンが発症に影響する乳がんは、死亡の明らかな低下はみられなかったが発症は減った。
<私的コメント>
卵巣を摘出しても、わずかながらも卵巣がんになってしまうという理屈がよくわかりません。
卵巣摘出の際に、すでに卵巣がんがあって腹膜に転移しているということでしょうか。


しかし、卵巣を摘出した人は心筋梗塞脳卒中が増え、がんを含めた全体の死亡の危険性は1・12倍高くなった。
血管の老化や悪玉コレステロールの上昇を防ぐエストロゲンの働きが低下したためとみられる。
年齢が若いほど影響が大きかった。

米国産婦人科学会は、「卵巣がん乳がんの遺伝的リスクがない更年期以前の女性には、正常な卵巣をなるべく保存するよう強く薦める」などの見解を出した。

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米国での動きを受け、日本産科婦人科学会の小委員会(小委員長・倉智博久山形大教授)は10年、全国の専門医療機関(743施設)に、がん予防目的での卵巣摘出についてアンケート調査を行い、483施設(65%)から回答を得た。

「基本的に行う」との回答が351施設(73%)あり、条件として「ある年齢に達し本人が希望した場合」(30%)が最も多かった。
年齢も「50歳」(50%)、「45歳」(25%)と施設によって異なった。

子宮がんや筋腫などの手術を受けた患者約4000人にもアンケートを行った。
卵巣を両方とも摘出した人と、少なくとも片方温存した人を比較した。

45歳以下で卵巣を両方摘出した女性は、温存した女性と比べ、調査した五つの病気(更年期障害高脂血症骨粗しょう症、高血圧、糖尿病)すべてが増えていた。
46~50歳で卵巣を摘出した場合も、更年期障害骨粗しょう症、糖尿病が、明らかな差はないものの増える傾向にあった。

この結果から同委員会は11年6月、「50歳以下での摘出は慎重に判断するべきだ」との報告をまとめた。
倉智さんは、「閉経後も卵巣はいくつかのホルモンを分泌している。50歳を過ぎても、卵巣摘出が健康にどのような影響があるか十分説明を受けた上で、判断してほしい」と説明する。

卵巣を摘出した場合は、何に気をつければ良いのか。東京歯科大市川総合病院産婦人科教授の高松潔さんは、「薬でエストロゲンを補う方法もあり、まずは定期的に検査を受けて、骨や血管の状態を確かめることが重要」としている。
<私的コメント>
以前に、若い患者さん(30代)から子宮筋腫の摘出術についての相談を受けたことがあります。
未婚の方でしたが、筋腫が大きく出血もひどかったので超音波や塞栓術の適応はありませんでした。
子宮全摘術についてはご本人の抵抗は大きかったのですが、手術を前提に大病院の婦人科へ紹介しました。
その際に、卵巣摘出について少し調べたことがあります。
多くは卵巣摘出の記載は、ごく簡単にしか触れられていませんでした。
実際に子宮筋腫の手術をされた方に聞いてみても、卵巣が残っているのか片方を摘出したのか術前に説明を余り聞いてないようです。
中には卵巣がどうなっているのかも知らない方もみえます。
卵巣がんは、ご存知のように「がん」の中でも非常に予後の悪い「がん」です。
ホルモン補充療法をきちんとさえ行えば、私は両側の摘出がよいのではと考え、その患者さんにもそのように伝えました。
もちろん、術後はホルモン補充療法を行っています。
しかし、両側卵巣摘出の影響か、現在は糖尿病と高血圧を発症して当院で治療中です。
それにしても、今頃になってこんなことが議論されるのも少し遅いのではないでしょうか。
当時、気になっていただけに興味ある記事でした。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2011.7.28
版権 読売新聞社


<番外編> 発声頸部ジストニア
コブクロ、小渕発声不調で一時休養へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110826-00000324-oric-ent
人気デュオ・コブクロが28日、北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで全国ツアーの最終公演を行い、同公演をもって一時休養すると発表した。
昨年末から発声の不調を訴えていた小渕健太郎(34)の症状が快方に向かわず、専門医の診察を受けたところ、声を出すことを職業としている人に多いとされる「発声時頸部ジストニア」と判明。
約半年間の喉(のど)の療養で改善すると診断された。
また、黒田俊介(34)も喉に疲労がたまっているとし、そろって半年ほど休養する。


メルクマニュアル家庭版, ジストニア 91 章 運動障害
http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec06/ch091/ch091j.html


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211.6.11撮影 横浜「開港広場」にて 「日米和親条約調印の地」のモニュメント




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