子宮のコブの大誤解

明けましておめでとうございます。

きょうは、2011.11.30のNHK総合テレビためしてガッテン」の放送の紹介です。
子宮筋腫は成人女性の20~30%が持っていると言われており、特に珍しい病気ではありません。
主に30~40歳代の女性に見つかり、筋腫の大きさや個数は人それぞれ異なります。
そして、症状との関連でいえば、出来る部位が大切になります。
主だった症状としては月経困難症、過多月経、貧血、便秘・頻尿、腰痛などがあげられますが、無症状の場合もあります。
子宮筋腫の原因ははっきりしていませんが、女性ホルモンの影響で筋腫が発育すると考えられています。


守れ、女性のカラダ!子宮のコブの大誤解

子宮のなかにコブができてしまう病気、「子宮筋腫」。
成人女性の5人に1人がかかると言われているほど、女性にとって身近な病気です。
街頭でみなさんにこの病気のイメージを聞くと、「たいした病気じゃない」と答える女性が大半。
自己判断で放置している方も多いようです。

ところがこれは大間違い。
子宮筋腫も、「ある条件」によっては深刻な事態につながることがあります。
腰痛や便秘から手術が必要なほどの大出血や不妊などの深刻な症状まで、その中身はさまざま。
さらには、子宮筋腫だと思っていたら、よく似た病気の「子宮肉腫(悪性腫瘍)」だったということも。
油断大敵です。

では、どんな筋腫は治療が必要なんでしょうか?


子宮筋腫の実態を大調査
子宮筋腫について街の人たちに話を聞いてみると、大半の女性が「たいした病気じゃない」「放っておいて大丈夫」と答えます。
でもその一方で、「大変な病気」「命が危なかった」「手術をした」などと答える女性もいました。
一体この違いはなんなのでしょうか?

そこで、子宮筋腫の実態をさぐるために、大検診を行いました。
参加したのは、産婦人科の検診に長年行っていないという30~40代の女性たち15人です。

エコーで診察をした結果、5人の方に筋腫が見つかりました。
なかには、5つも筋腫があった方や、野球ボールくらいの大きさの筋腫が見つかった方も…。

すぐに手術が必要なのかと思いきや、医師の判断は 驚くべきものでした。
なんと、「全員、今すぐに治療をする必要はなし【経過観察】」というのです。

一方、子宮筋腫で生理のときの大量出血に悩まされ、摘出手術を行うという女性にもお話を聞きました。彼女たちを苦しめた筋腫がどんなものか教えてもらうと、ビー玉くらいのサイズのもの1つだけだというのです。

子宮筋腫の治療の必要性は、筋腫の大きさや 個数だけで決まるというわけではないのです。
では一体、何がカギを握っているのでしょうか?


子宮の秘密を大発見!!
治療が必要な筋腫のなぞを解くために、子宮という臓器の秘密を探りました。

やってきたのは、京都大学
ここでは子宮の動きを解き明かす最新の研究が行われているんです。
早速、女性スタッフ2人の子宮の動きを最新のMRIで撮影してもらいました。
すると、1人の子宮は全く動いていないのに対して、もう1人の子宮はまるで生き物のように力強く動いていました。
この違いは一体なんなのでしょうか?

実は、子宮は、女性の生理の周期に応じて動きを変えているのです。
生理の後、卵子があって妊娠しやすい時期には、入り口から奥のほうへさざ波のように動きます。
これは、受精を助けるためではないかと考えられています。
次に、生理前になるとほとんど動かなくなります。
これは、受精していた場合に卵の着床を助けるためだと考えられています。
そして、生理のときには奥から入り口のほうへ経血を排出するように動きます。
この緻密な動きの繰り返しこそが、生命の誕生を支えていたのです。

こうした運動はすべて、子宮の内側の空間で行われているもの。
実は、子宮のなかに筋腫ができたとき、この空間をどれだけじゃまするかによって、妊娠や生理への影響が大きく変わってしまうのです!


子宮と筋腫 驚きの関係!
子宮の働きをじゃまする筋腫とはどんな筋腫なのか?
実は子宮筋腫は「できる場所」によって大きく3つに分けられているんです。

ひとつめは、横コブ型(筋層内筋腫)。
子宮のまわりの筋肉の中に埋もれるようにできる筋腫です。
2つめは、外コブ型(しょう膜下筋腫)。
子宮の外側に向かって 突き出すようにできる筋腫です。

この2つのタイプの筋腫は、小さいうちは症状がなく発見されても「経過観察」になるケースが大半です。
ただし、大きくなったりたくさんできたりすると腰痛や便秘などの症状や妊娠・生理への影響が出てきて治療が必要になります。
医師の診断を受けることが重要です。

この2つとは違って、小さくてもつらい症状を引き起こし、治療が必要となるケースが多い筋腫があります。

それが3つめの、内コブ型(粘膜下筋腫)です。
内コブ型の筋腫は子宮の内側に突き出すようにできてしまうため、子宮内膜の面積が増えてしまい、生理のときに大量出血を起こすことがあります。
また、子宮がこのコブを異物とみなして追い出そうと動いてしまうことで、子宮の本来の運動パターンが狂ってしまうことがあります。
このことが不妊につながるケースがあると考えられています。


子宮筋腫 治療のポイント
子宮筋腫が見つかったら、正確な診断を受けることが大切です。
大きさや数だけではなく、「できた場所」を把握した上で治療の必要性を見極める必要があります。

治療をする場合は、薬で筋腫を小さくする方法や手術で筋腫を取り除く方法があります。
子宮ごと摘出する場合もありますが、筋腫の場所や大きさによっては、「子宮鏡」という器具を使っておなかを切り開かずに筋腫のみを取り除く方法もあります。
詳しくは、かかりつけの医師にご相談ください。

「経過観察」と言われた場合は、自己判断で放置せずに筋腫の状態を定期的に把握することが大切です。
これは閉経してからも必要なことです。
子宮筋腫は女性ホルモンとともに成長するものなので、閉経すれば小さくなっていくのが普通です。 
ところがまれに、閉経してからも大きくなったり痛みを伴ったりする場合があります。
これは、子宮筋腫とよく似た病気である「子宮肉腫」という悪性腫瘍の可能性があります。
筋腫だと思って放置していたら肉腫だった、ということがないように、閉経してからも子宮の健康に気を配り続けることが大切です。


今回のお役立ち情報
成人女性の5人に1人がかかると言われている身近な病気"子宮筋腫”。
同じ病気のはずなのに全く症状がない人から手術が必要な人まで、その症状はさまざまです。
治療が必要かどうかを左右する大きなポイントは、「筋腫の場所」です。

子宮筋腫はできる場所によって大きく3つに分けられています。

横コブ型(筋層内筋腫)
…子宮のまわりの筋肉に埋もれるようにできる筋腫
外コブ型(しょう膜下筋腫)
…子宮の外側に突き出すようにできる筋腫
内コブ型(粘膜下筋腫)
…子宮の内側に突き出すようにできる筋腫

イメージ 1



1.横コブと2.外コブは、妊娠や生理のときに大切な働きをする子宮の内側の空間に影響しにくく、小さいうちは症状がないケースが多くあります。
ただし、大きくなってくるとほかの臓器を圧迫するなどさまざまな症状を引き起こすため、経過観察をしながら治療のタイミングを決めることが必要です。
これに対して、3.内コブは、子宮の内側の空間にさまざまな影響を与えます。
子宮の内膜の面積が広がってしまったせいで生理のときに大出血が起きたり、
受精を妨げるせいで不妊につながったりすることがあります。
このため、たとえ筋腫の大きさが小さくても、摘出手術が必要になることがあります。
子宮筋腫がある人は、大きさだけではなく場所や症状を見極めた上での治療計画が必要です。

また、子宮筋腫とよく似た別の病気に「子宮肉腫(悪性腫瘍)」があります。
閉経後も急激に大きくなるような場合は、肉腫の可能性も疑わなければいけません。
子宮筋腫がある人は、自己判断で放置をせずに、医師の診断を受けることが大切です。



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