誤嚥性肺炎の予防策

窒息事故・誤嚥性肺炎、のみ込む力鍛えて防止

年をとると、誰でものみ込む力が衰える。
毎年、餅を詰まらせて窒息死する高齢者が後を絶たないのは、なかなかこの「嚥下(えんげ)機能」の低下を自覚しづらいからだ。
日ごろから筋力アップを心がけ、栄養不足を改善すると効果的だと専門家は助言する。

「この2、3年、食べ物をこぼすようになった。お茶やみそ汁をのんだ時にむせることがある」。
こう話すのは、東京都在住のKさん(75歳、男性)。食が細くなり、時間もかかるようになったと、一緒に暮らす家族も心配する。

大きく3つの原因
Kさんの症状は「摂食・嚥下障害」と呼ばれ、うまく食べ物がのみ込めなくなった時に表れる。
原因は大きく分けて3つ。浜松市リハビリテーション病院の藤島一郎病院長によると、「嚥下運動に関する筋肉や神経の障害」「舌や食道などの嚥下組織の障害」「認知症など精神活動の障害」だそうだ。

食べ物を上手にのみ込むには、まず目で見て認識し、口に取り込み、かみ砕いた後に適度な大きさにまとめ、のどに送り、のみ込み、食道まで運ばなければならない。
この複雑な工程をこなすには、脳や筋肉、神経、組織の「連係プレー」が欠かせす、高齢者に多い3つの障害が妨げとなる。

年をとれば筋力は低下するし、注意力も落ちる。「抗がん剤や利尿薬、抗精神病薬などをのんでいる場合も、のみ込みに影響を与える場合が少なくない」(藤島院長)

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のみ込む力が衰えると、のどに食物が詰まるだけでなく、気管を介して声帯の奥にまで入る誤嚥(ごえん)を引き起こす。高齢者に多い誤嚥性肺炎にもつながる。

Kさんのように自分で十分食事をとれる人は、食事の前に軽い運動で首回りの筋肉のこわばりをほぐすほか、体操でのみ込む力を維持するための筋力アップを始める。
食物をのみ込むのに最も影響するのがあごの下から首にかけての「舌骨上筋群」。
鍛えるには、あおむけに寝て首を起こしたり、おでこに手をあてて首を下に向けたりを繰り返す。

呼気筋力を高めるために水の入ったペットボトルに小さな穴をあけてストローをさし、ぶくぶくと吹くのもいい。
キャップを強く閉めると、はく力がかなりないと泡は出ない。
誤嚥を防ぐためにも、「ハッフィング」と呼ぶ腹から笑うように息を吐き出す訓練も欠かせない。

一方で「脳梗塞などの後遺症でのみ込めなくなった人の回復方法は、健康な人とは異なる」(藤島院長)という。
代表的なものに「アイスマッサージ」がある。
綿棒などにガーゼを巻き付け水に浸して凍らせたもので、のどを刺激する。
初めての人は、リハビリテーション科や耳鼻咽喉科神経内科、歯科などで教えてもらう。

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今年1月に脳梗塞で、つばをのみ込むこともできなかったTさん(55歳女性、静岡県菊川市在住)はリハビリを継続。
半年ほどアイスマッサージやほおのマッサージを続けた結果、のみ込むことができるようになった。
「ものをのみ込めるようになると、意識もハッキリするようになり、リハビリ効果が高まってきた」と話す。
今は大きな声で歌う訓練に励む。

栄養面でも要注意
最近、サルコペニア(筋肉減少症)が高齢者の間で問題になっている。
県立広島大学の柏下淳教授は「老化による筋肉の衰えや脳機能の低下でのみ込めなくなると、食べるのをあきらめて、さらに状態が深刻になる悪循環が生まれる」と指摘する。
ネスレが在宅看護や介護にあたる人たちに開いたセミナーなどでは「のみ込む力が衰え、栄養が十分にとれない」という相談が多く寄せられるという。

のみ込む力が衰えた人が誤嚥を起こさずに食べられるようにするには「食べ物の大きさと水分量、軟らかさ、とろみなどの条件が大切だ」(柏下教授)。
例えば、高野豆腐や煮込んだ大根などは最初に煮汁が入るが、その後はパサッとした固形物が残る。こういったものはのみ込みにくい。

特別用途食品として売られているゼリーなどを使うのもいい。
硬さや付着性、凝集性といったのみ込みに重要な指標が症状の深刻度合いによって示されているものも多く、参考になる。
こうしたゼリーは、のみ込む力が少し衰え始めたという人が食べても問題はない。
筋肉を維持するための栄養改善に使うのもいいかもしれない。 (吉野真由美

出典 日経新聞 Web刊 2011.12.18
版権 日経新聞


<自遊時間>
今や国債の発行残高が1000兆円も現実になりつつある日本。
日本は経常黒字国だから大丈夫、ワーキングプア(働く貧困層)が急激に増えていることが問題といわれても何だか落ち着きません。
「民主、若手9人が離党届を提出」に続き「成田や関空で出国ラッシュ」というニュースの見出し。
そのうち、帰国なしの「出国ラッシュ」が起きるのも時間の問題かも知れません。
今のうちにどこに出国するか、するとすればその国の語学の修得も早目にしておいた方がいいかも知れません。
経済だけでなく、第二の原発事故が起これば正に現実の問題です。



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