高齢者の救急搬送増加

高齢者の救急搬送増加… 病院選定に新ルール

高齢者の救急搬送が増えている。
回復に時間がかかるため入院が長期化しがちなことや、長年寝たきりの末に心肺停止に至り、救急車が呼ばれるケースが増えていることなどから、受け入れ先がなかなか見つからない問題が生じている。
東京都では高齢者搬送システムの工夫に乗り出した。(渡辺理雄)

総務省消防庁によると、2010年の救急車による搬送人数は約498万人と、10年前に比べ約98万人(25%)増えた。
このうち65歳以上の高齢者は約254万人で、同約105万人(70%)の増加。
小児や一般成人は微減だが、高齢者が全体の件数を押し上げている。

これに伴い、救急病院が高齢者の受け入れに慎重になり、搬送までに時間がかかるケースが生じている。特に病院が多い東京都では、調整に時間を要することが多い。

11年に東京消防庁の救急隊が5か所以上の救急病院に連絡したり、20分以上要したりしたのは1万4459件あった。
うち高齢者が43・8%と半分近くを占めた。

杏林大病院(東京都三鷹市)高齢診療科外来医長の長谷川浩さんによると、60~70代の救急患者は脳卒中や心臓病が主な原因なのに対し、80~90代はこれらに肺炎が加わる。
体の抵抗力が落ちて感染による肺炎の回復が遅れるうえ、食べ物や唾液を誤って気管にのみ込む誤嚥性肺炎が起きやすいためだ。

誤嚥性肺炎は繰り返しやすいため、治療に加えて、のみ込み方の練習も行うこともあり、30日以上の長期入院となる場合も多い。

入院がきっかけで、歩行やトイレ、入浴が難しくなるケースもある。
自宅での介護が難しい場合は、療養型の病院や介護施設を探すことになり、入院が長引く原因となる。
このため、救急病院と施設との連携模索も一部で行われている。

心臓と呼吸が止まった状態(心肺停止)で、救急車が呼ばれるケースも増えている。
全国で10年に心肺停止で運ばれた70歳以上は約8万3600人で、05年に比べ約1万8900人(29%)増えた。

心肺停止なら、高度な医療ができる救命救急センターに運ぶのが一般的だが、回復の見込みが薄く家族も望まない高齢者の場合、近くの救急病院やかかりつけの病院に運ぶことが多い。
ところが、かかりつけ医に連絡が取れず、心肺停止の原因が不明だと、病院側は、異状死として届け出なくてはならない心配が生じるため、一部の施設で受け入れに慎重になる場合があるという。

東京消防庁が11年12月に7日間実施した調査では、自宅で心肺停止に陥った70代女性で、搬送先を決めるのに9か所に連絡し、23分かかったケースがあった。

東京都は一般の救急で、救急車が搬送先を決めるのに20分以上かかった場合は、地域救急医療センターや、東京消防庁においた調整員も搬送先を探す仕組みをとっている。

そこで、重体や心肺停止の高齢者も家族の同意があった場合、この仕組みを適用する新ルールを、6月ごろから始める予定だ。
都救急災害医療課は、「高齢患者を、幅広い救急病院で支える体制づくりを進めたい」としている。

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出典 読売新聞 2012.4.21
版権 読売新聞社


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