腰痛スパイラルから抜け出そう・その4(4/4)

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内臓が原因の腰痛

脊椎やその周囲の病気が腰痛の原因になるばかりでなく、内臓などの病気でも腰痛を起こすものも少なくありません。

整形外科的な腰痛は、一定の動きをしたり、体重をかけたりすると痛くなるのが特徴ですが、内臓の病気が原因になっている時は、安静にしていても寝ていても痛む、あるいは動作に関係なく痛むといった特徴があります。

また、発熱や腹痛、不正出血など他の症状も一緒に出てきます。


腰痛を起こす内臓の病気一覧

循環器の病気 閉塞性動脈硬化症、腹部大動脈瘤、腹部大動脈解離
泌尿器の病気 腎臓・尿路結石、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺肥大症、泌尿器のがん
消化器の病気 胃潰瘍・十二指腸潰瘍、膵炎、胆石、胆のう・胆管炎、肝炎、消化器のがん
婦人科の病気 月経困難症、子宮筋腫、卵巣炎、卵巣膿腫、子宮や卵巣のがん
その他 帯状疱疹、インフルエンザ、風邪



腫瘍が原因の腰痛

脊椎腫瘍
骨にできる腫瘍を「骨腫瘍」といいます。

その中でも最も多く見られるのは、実は他の臓器にできたがんが骨に転移する「転移性骨腫瘍」です。
がんの骨転移が一番多いのが、からだの中心にある背骨なのです。

がんの発症が多くなる40歳以降に増えます。特に30~40歳代の乳がんには注意が必要です。
症状はまず腰や背中の痛みを訴えます。
痛みは次第に強くなり、寝ていても痛くなります。

腫瘍が脊髄を圧迫するようになると、手足に痛みやしびれ、歩行障害などが起きたり、ひどくなると手足の麻痺、さらには排尿や排便の障害がおこることもあります。


背骨への転移が多いガン
乳がん、肺がん、子宮がん、胃がん前立腺がん、腎臓がん、甲状腺がん


治療
ガンの大きさが大豆より小さいくらいなら、まずは放射線治療法、ホルモン療法や化学療法(抗がん剤)の保存療法などを考えます。
最近では、転移したがんが一つの部分にとどまっている場合は、手術や放射線療法で積極的な治療を行います。
また転移したガンが広がって根治的な治療は難しい場合でも、骨折による激痛を取り除く手術は可能です。


脊椎腫瘍を根本から治す時代
従来は、背骨にガンの転移が見つかると、ガンの末期状態と考えられがちでしたが、現在、転移する前の原発ガンの治療が進歩し、また画像検査技術が向上したので転移していたとしても、早期の状態で見つかるケースが増えてきました。
早期の転移ガンということは、病巣が散らばらず一箇所にとどまっていること。
この状態であれば、病巣部を完全に切除できれば、助かる場合もあることが分かってきたのです。
あきらめずに“有効な治療法を探す”時代になってきたので、担当の先生と最善の治療法を話し合って決めましょう。



一時的な腰痛

一時的な腰痛とは?
腰に「痛み」や「だるさ」を感じ始めてから1週間以内は、まだ痛みが治まる可能性があるので、無理に病院にいかずに様子を見ましょう。

これらの原因は様々ですが、姿勢が悪い人、中腰の姿勢で仕事をする人や、長時間すわり仕事をする人など、姿勢の悪さが腰に負担をかけ、筋肉疲労が積み重なって起こると考えられています。

背骨の筋肉が緊張するような姿勢を長時間とりつづけると筋肉がかたくこわばり、うっ血して痛みを起こすのです。
多くの場合は、診察やX線検査などで異常は見つかりません。

解消法
1週間たっても痛みが引かない、またはだんだん強くなる場合は病院できちんとした検査を受けましょう。
がんや感染症などの深刻な原因がなければ、病院では、痛みに対し消炎鎮痛剤、貼り薬、塗り薬が処方されます。
筋肉のコリがひどい場合は筋弛緩薬を用いることもあります。
そして、なるべく腰に柔軟性を持たせるようにストレッチを心がけ、背骨を支える腹筋と背筋を鍛えましょう。
また自然なS字カーブになる姿勢を保つことが大切です。



急性腰痛(ぎっくり腰など)

突然の激痛に歩くこともままならなかったり、横になって体勢を変えただけでも痛いことが少なくありません。

急性腰痛(ぎっくり腰など)とは?
突然激しい痛みに襲われるぎっくり腰は、重いものを持ったり、かがんだり、腰をねじるなどちょっとした動作がきっかけで起こります。

原因の多くは、腰の筋肉の肉離れや腰椎椎間関節のねんざなど腰椎周辺の関節や筋肉、靭帯の一時的な障害、損傷などが考えられていますが、詳細は不明です。
腰椎に何らかの病気があり、急激に強い痛みを引き起こすこともあります。
注意しなければいけないのが、急な腰の痛みは必ずしもぎっくり腰とは限らないことです。
中にはまったく別の病が隠れている場合があります。
危険な病気を見過ごさないことが重要です。


腰椎すべり症
こんな症状が現れたら、腰ではなく他の病気の可能性があるのでなるべく早く病院を受診してください
■ どんな姿勢をとっても楽にならない
■ 発熱を伴う
■ 冷や汗が出る


急性腰痛を引き起こす病気
脊椎の病気
椎体骨折、転移性脊椎腫瘍、化膿性脊椎炎、椎間板ヘルニア、椎間関節症候群、強直性脊椎炎

循環器の病気
解離性大動脈瘤

泌尿器の病気
尿管結石、腎盂腎炎

消化器の病気
胃・十二指腸潰瘍か穿孔、急性膵炎

婦人科の病気
子宮内膜症、骨盤輪不安定症、子宮外妊娠

精神科の病気
心身症、心気症


症状の特徴 ~ちょっとしたきっかけで激痛~
最初はあまりの強い痛みのために歩くこともままならなかったり、横になって体勢を変えるだけでも痛いことが少なくありません。
少し前かがみになったり、横向きで寝ると痛みが楽になることが多いようです。

ただし、その激しい症状の割には、すぐに病院へ行かなければならないといった重症のケースは少ないものです。
たいていはしばらく安静にしていれば痛みは軽くなってきます。

解消法
「痛みがとれたら動きましょう」
ぎっくり腰を発症すると突然激しい痛みが起こるため、すぐ病院へと考えがちですが、無理をして病院にいく必要はありません。
まずは安静にするようにしましょう。
室内など横になれる場所があれば、横になります。
あおむけ、横向きなど自分で楽な姿勢をとります。
安静にしていれば、通常、数日で痛みはだいぶ軽くってきます。

ただし下肢の神経症状がある場合にはすぐに病院に行く必要があります。
初めてギックリ腰になった場合は重篤な病が隠れていないか、落ち着いたら一度は病院にかかって、適切な診断を受けておくとよいでしょう。
病院では、消炎鎮痛剤、貼り薬、塗り薬が処方されます。
筋肉のコリがひどい場合は筋弛緩薬を用いることもあります。

普段からなるべく腰に柔軟性を持たせるようにストレッチなどを心がけるようにするとよいでしょう。
また自然なS字カーブになる姿勢を保つこと、腰に負担をかけるような動作をなるべくしないことなどが大切。

家庭でできる解消法
様子をみて可能ならなるべく動くようにしてください。

何日も家でごろごろしていると回復が遅れてしまいます。
無理をしない範囲で日常の生活に徐々に戻していきましょう。
できれば安静にするのは2~3日にとどめたいものです。
再発予防には腹筋と背筋を鍛えることが必要です。





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