腎機能低下は放置禁物

腎機能低下、放置禁物 心筋梗塞脳卒中リスク増す

慢性腎臓病(CKD)は新たな国民病といわれている。
血液中の老廃物を取り除く働きを持つ腎臓の機能が低下した状態で、悪化し腎不全になると人工透析を余儀なくされる。
心筋梗塞脳卒中などの発症リスクも高めてしまう。
慢性腎臓病は食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が深く関わっており、自覚症状がないまま進行する例が多い。
健康診断などで腎機能低下に早めに気づき、生活習慣を改めたい。

腎臓は握りこぶし大の臓器で、腰のあたりに左右1つずつある。
血液をろ過して老廃物などを尿として体の外に排出する働きがある。
また、血圧や体内の水分量、ミネラルを調整したり、血液をつくるホルモンも分泌したりする作用もある。
腎機能が低下すると、尿が出なくなり、排出されない老廃物などが体内で悪影響を及ぼし、さまざまな病気の原因になってしまう。

■気づかぬまま…
尿中のたんぱく質が多くなる「たんぱく尿」などの腎臓の障害があったり、腎機能が健康な人の6割未満に低下したりする状態が3カ月以上続く場合、慢性腎臓病と診断される。国内の患者は約1300万人、成人の約8人に1人が発症していると推計されている。
高齢になると腎機能が低下するため、慢性腎臓病になるリスクが高まる。
 
慢性腎臓病は症状がないのが特徴。
気づかないまま放置し、病気が進んでしまう例が多い。
通常、病気の初期では体の特定の部位が痛むなどの症状は出ない。

病気が進行すると腎機能がさらに下がり、夜間に何度も起きてトイレに行く、足がむくんで靴を履きにくい、
貧血や倦怠感、息切れをしやすくなったなどの症状が現れ、異変に気づく。
しかし腎臓はいったん機能が低下すると、薬などで治療しても、元の状態まで回復させるのは難しい。
重症になると、人工透析をしなくてはならなくなる。
 
腎臓が悪い人では全身の血管の状態も悪いと考えられる。
血液をろ過する腎臓は血管の塊ともいえる臓器だからだ。
血管の状態が悪いと、心筋梗塞脳卒中の発症リスクも高くなる。
 
糖尿病の人は、これらの病気の発症リスクが高いことが知られているが、慢性腎臓病でも気をつけないといけない。
また、高血圧は腎臓に負担を与え、腎機能が低下すると高血圧を招くという互いに密接な関係にある。
 
慢性腎臓病を早い段階で発見するためには、尿検査や血液検査で腎機能を定期的に調べ、低下が起きているかどうかを知ることが大切だ。
検査では、たんぱく尿かどうかや血液中の老廃物であるクレアチニンの量が増えているかなどを調べる。

■健診などで点検
機能低下が起きていると、クレアチニンが十分に除去されず血液中に増えてしまう。
血清クレアチニン検査の値から腎臓能がどの程度残っているかが計算で求められる。
この検査が健康診断の項目に含まれていない場合は、医療機関で調べてもらおう。
たんぱく尿が見つかったら、「前日に運動しすぎたからだろう」などと安易に考えずに、医療機関を受診して少なくとも尿を再検査してもらおう。
 
慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が発症要因になっていることが多い。つまり、暴飲暴食や運動不足などを改善すれば、生活習慣病メタボリックシンドロームとともに慢性腎臓病のリスクも下げられる。
日ごろから規則正しい生活を送るとともに、食事の量やバランス、減塩などにも気を配ることが大切だ。
たばこを吸っている人は禁煙した方がよい。
 
慢性腎臓病を早期に見つけて治療を始めることで腎機能の低下を未然に防ぐことが重要だ。なかには機能が回復するケースもあるという。
慢性腎臓病を誰もがなりうる身近な病気だと考えて、予防と早期発見につなげたい。

腎機能低下は全身に影響が出る
脳卒中心筋梗塞のリスクが上がる
②貧血
③めまい
④倦怠感
⑤高血圧
⑥息切れ
⑦足のむくみ


慢性腎臓病を悪化させないためには
・バランスのよい食事をとり、肥満に気をつける
・塩分の取り過ぎを避ける
たんぱく質の多い食品を控える
カリウムやリンの摂取を制限することも
・禁煙する
・適度な運動を心がける
・糖尿病や高血圧がある場合はしっかり治療する

出典
日経新聞・夕刊 2015.1.16 (一部改変)


<CKD 関連サイト>
腎臓のサインを見逃さない
http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/41.html



CKD 進行するとどうなるの?
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shippei/ckd/p3.html

腎臓病を悪化させないために
http://www.kyowa-kirin.co.jp/ckd/prevention/