新型コロナ 感染者の職場復帰どう対応

感染者の職場復帰どう対応

職場の仲間が新型コロナウイルスに感染したとき、周囲はどんな点に気をつければよいのか。

感染者の職場復帰が増えるなか、不適切な責任追及や差別と偏見をあおるような対応も報告されている。

 

実名が全社員メールで

「大変残念ですが、社員の中に感染者が出ました」

都内の企業に勤める女性はこの夏、職場から届いた一斉メールに目を疑った。

コロナに感染したとされる社員の名前と部署名まで書かれ、数百人いる全社員に送られていた。

 

女性は取材に、「自分も感染したら、名前を全社にさらされるのかと思う。怖いです」と話した。

「全社員に名前を発表することが感染拡大を防ぐために必要とは思えない」

 

メールにあった「残念」という言葉にも違和感を覚えた。

「今後も感染者は出る可能性があるし、会社に『感染=残念』と決めつけるような言葉を使われたくない。必要な事実だけを淡々と伝えるべきだと思う」。

ただ、勤務は大半が在宅になり、メールに感じたことを同僚と話す機会はないという。

 

コロナ感染をめぐるこうした事例は、様々な職場で起きているとみられる。

 

「始末書を書け」上司は言った

「娘が新型コロナウイルスに感染親である私は自宅待機を余儀なくされた。私の検査結果は陰性で、有給休を取得した後に職場に出ると、上司から始末書を書けと言われた」

 

「体調が悪く、自宅療養するように指示された。感染がはっきりしていないうちに『コロナの症状がある』と実名で会社に広められて苦しい思いをした」

 

職場で同僚らの感染がわかったとき、周囲はどう接すればよいのか。

そういった場合には、責任を追及するのではなく、相手の気持ちを受け止めて共感を示すことが大事だ。

 

実名を職場や社内で公表されると、「あの人が会社に迷惑をかけた」という認識を広めてしまうことになる。

人権や個人情報保護を考えると、適切な対応ではない。

  

「なぜ感染したのか」と聞くのも避けるべきだ。

感染した本人も「なぜ自分が」とショックを受け、自責の念に苦しむなか、さらに追い詰めることにつながるからだ。

入院中や自宅にいる間は、本人にどんな連絡手段が良いかを確認したうえで、メールなどで「回復を祈り、待っている」などと伝えるのがよい。

 

復帰後はいたわりの言葉があると、相手の安心感につながる。

その際は「回復してくれて私はうれしい」「私は心配していました」など、「私」を主語にして思いを表現する「アイメッセージ」が望ましい。

 

興味から感染の経緯や苦しみを聞き出すことは避け、周囲にしてほしいことなどについて「伝えたいことがあれば敦えてほしい」と声をかけるぐらいがよい。

励ますつもりであっても、笑い話にしたり、からかったりするのは禁物だ。

 

とりわけ重要なのが、職場の雰囲気に影響する上司の対応だ。

職場に向けて、復帰を歓迎するメッセージをきちんと伝える。

感染者に落ち度があるかのような言い方はせず、「誰が感染してもおかしくない」ことをはっきり共有する必要がある。

復帰した人が「迷惑をかけました」と謝った場合は、上司が「謝る必要はない」と同僚たちの前で伝えるべきだ。

        

感染者に接する際の職場での注意点

・入院中や自宅隔離中は連絡手段を聞いたうえで、回復と復帰を待っていると伝える

・感染した人の名前を公表しない

・復帰後はいたわりの言葉をかけ、相手の気持ちを受け止める。「私は」と主語を明確にしてうれしさを伝える

・「なぜ感染したのか」と原因や責任を追及しない。

 嫌みやからかいの言葉を言わない

・陰性証明を求めない

・周囲に伝えたいこと、わかってほしいことがあれば本人から教えてもらう

・上司は、感染者に責任があるかのような発言をしない。

  誰でも感染する可能性があり、感染した人に謝罪の必要はないことを周囲に伝える

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.11.8