RSウイルス急増

RSウイルス急増、20年抑制の反動か 

乳幼児重症リスク

乳幼児が肺炎を引き起こすこともある「RSウイルス感染症」の感染者が急増している。

2021年の感染者数の水準は過去3年を上回り、感染地域も広い。

流行の詳しい原因は不明だが、20年は新型コロナウイルス対策で感染が抑えられたことから、その反動として免疫が弱い子どもが多い状況にある可能性が指摘されている。

重症化リスクもあり注意が必要だ。

 

ある、クリニックでは、3月ごろからRSウイルスに感染した5歳以下の子どもの来院が相次ぐようになった。

 

激しいせきなど悪化が懸念される症状の子どもも多く、入院を勧めたケースも複数あった、という。

例年の流行は秋口だが、今年は早まっている。

 

RSウイルス感染症は2歳までにほぼ100%がかかるとされる呼吸器感染症

発熱や鼻水といった軽症が多いが、生後6カ月未満や心疾患などがある乳幼児は重症化リスクが高い。

生後1カ月未満の新生児の場合は夜間に無呼吸になり、突然死の原因となることもあるという。

 

感染力が強く、くしゃみやせきなどの飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した手で目や鼻をこすったりすることで感染する。

 

21年は3月から18~20年を上回るペースで感染者が増え始めた。

5月30日までの1週間の1医療機関あたりの感染者数は2.49人。

例年は秋から冬に流行するが、すでに18年のピーク時(2.46人)を超えた。

当初は九州地方で感染例が多かったが、流行は全国に広がっている。

 

感染拡大の背景については、1年を通じて感染者が少なかった20年の反動とみられる。

 

新型コロナの感染防止策がRSウイルスの予防にもなり、昨年は流行がみられなかった。

これまで感染しなかった乳幼児は免疫を持っておらず、今年急速に広がったのではないか、と専門家は推測する。

 

21年も新型コロナ対策は続いているが、全都道府県に緊急事態宣言が適用された20年と比べると人出は増えている。

社会活動が戻りつつある中、乳幼児がマスクをつけることは難しく、RSウイルスの流行の抑制には至っていない。

 

RSウイルスにワクチンはなく、感染予防には新型コロナと同様、大人も手洗いやマスク着用などを徹底する必要がある。

重症化のリスクが高いと医師に判断されれば、症状を抑える効果がある月1回の注射薬を保険適用で使える。

 

国立感染症研究所はRSウイルスの感染の広がりは家庭内で起きやすいとして、乳幼児がいる家庭での対策徹底を呼びかけている。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2021.6.14