ワクチン副作用に備え、若年層に発熱など多く

ワクチン副作用に備え、若年層に発熱など多く 市販薬、一部品薄に 休暇制度整備の企業も

新型コロナウイルスワクチンは21日から企業や大学などで64歳以下への接種が本格的に始まる。

若い世代ほど接種後の発熱や頭痛などの副作用が起きやすい傾向があり、事前に備えようと市販薬の一部は品薄状態だ。

仕事などへの影響を抑えるため、体調の変化を見越して接種予定を立てる必要がある。

 

「もうろうとして、腕も上がらなくなった。仕事にならない」。

5月にワクチンを打った東京都内の病院に勤める20代の男性医師は振り返る。

熱が2日間収まらなかったが、休みは1日しかとれず、市販薬を飲んで出勤した。

20代の女性医師は「人生で一番熱が上がった。副作用といえど苦しいのは変わらない」と話した。

 

厚生労働省によると、国内で接種が進む米ファイザー製と米モデルナ製のワクチンはいずれも接種部位の痛みや疲労、発熱などの副作用が報告されている。

こうした症状の大部分は数日以内に回復するものの、若い世代の方が発生頻度が高い。

 

厚労省部会に6月に示された順天堂大コロナワクチン研究事務局の調査結果によると、ファイザー製の接種を受けた20代のうち、約5割は2回目の接種後に37.5度以上の発熱がみられた。

40代では約4割、50代では約3割が発熱した。

全身の倦怠感や頭痛が起きた割合も若い世代の方が多かった。

 

現役世代の接種本格化は、医療機関にとっても懸念材料だ。

発熱している患者を受け入れられない病院もあるため、コロナ対応をしている病院の医師は「若い世代の接種が本格化すれば、副作用で発熱した人が押し寄せるのでは」と気をもむ。

 

厚労省はホームページで、発熱は接種後1~2日以内に起こることが多いとし「必要な場合は解熱鎮痛剤を服用するなどして様子をみてほしい」と指摘。

発熱した場合、せきや喉の痛み、味覚・嗅覚の異常といったコロナ感染による症状があるかどうかで、ワクチンの副作用と見分けられるとしている。

 

発熱への懸念から、予防的に薬の処方を希望する場合は保険が適用されず、すべて自己負担になる。同省担当者は「飲み慣れた市販の解熱鎮痛剤で対応してもらえれば」と説明する。

 

ただ、米疾病対策センター(CDC)が接種後の発熱時に使用を推奨した「アセトアミノフェン」成分を含む市販薬は全国的に品薄の状態だ。

都内のあるドラッグストアではアセトアミノフェンのみが有効成分となる薬は全て品切れ状態。

店長は「入荷すればすぐに売れてしまい、次にいつ入荷してくるのかも全く分からない」と話す。

 

接種時に薬を販売し、体調が悪化した場合の服用を推奨する医療機関もある。

解熱鎮痛剤と漢方を2日分セットにして700円で販売する都内のクリニックでは、接種した人の3分の1程度が購入していくという。医師は「自分自身が副作用で苦しかったため販売を始めた」と話す。

「自費診療の枠になるが、ほぼ利益が出ないくらいの値段をつけている。周りの他の医師も対応に悩んでいる」とこぼした。

 

副作用が出た際、働き手が懸念するのは仕事への影響だ。

河野太郎行政改革相は「ワクチン休暇」をとれる仕組みを設けるよう経済界に要請。

経団連は6月、「従業員やその家族が接種を受けやすいよう、休暇の取得促進や就業環境の整備を行う」との提言を発表した。

 

三菱電機明治安田生命保険ソフトバンクなど大企業ではすでに新たな休暇制度を整える動きが出ている。

東京都は6月、接種や副作用に関する休暇制度について相談に応じるため、中小企業向けに社会保険労務士を派遣する仕組みを整えた。

 

若い世代の方が副作用が多くみられるのは免疫反応の強さが影響しており、やむを得ない。

2回目の接種後は高熱や悪寒といったインフルエンザと似た症状が出る人もおり、接種翌日は休暇とするなど事前の調整が重要だ。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2021.6.17