自宅療養の厳しい現実

自宅療養の厳しい現実 散らかった嘔吐物「私死ぬの?」

新型コロナウイルスの感染者が急増する地域で、重症化リスクの低い患者は原則、自宅療養とする政府方針が決まった。

「第4波」の関西では、自宅で症状が重くなくても急速に悪化して死亡する患者が相次いだ。

多くの自宅療養者を訪問し、リスクが低いとみられた患者でも死亡する現実に直面した医療関係者は、自宅での医療体制の整備を訴え、東京や関西などでの「第5波」の深刻化に向けて警鐘を鳴らす。

 

自宅療養者は第4波のピーク時、大阪で1万5千人、兵庫では1800人を超えた。

これとは別に入院や宿泊療養を調整中の人も、大阪で3500人、兵庫では1900人を超えていた。

 

「重い肺炎ですぐに入院が必要なのに、亡くなる直前まで入院できない人が何人もいた」

神戸市で訪問看護ステーション経営する社会福祉士のA氏(35)は、目に涙を浮かべながら当時を振り返った。

 

3月末から6月まで、市や病院からの依頼で、高齢者や障害者のコロナ患者140人の自宅を看護師と2人1組で訪問した。

普段通うヘルパーは感染対策のため訪問できない。

患者は動けず、生ごみが散らかり、吐いたものはそのまま。

「痛い」「苦しい」とうめく声が室内に響く。

「私も死ぬの?」と何度も問いかけられた。

 

当時は入院を待っている患者が多く、酸素飽和度が低下し、重い肺炎の症状が出ている人たちが自宅療養を余儀なくされ入院できなかった。

 

ようやく入院の調整がついても、搬送先の医師から「長くは持たない」と言われたケースもある。

病院の設備や人手が足りず、人工呼吸器やエクモ(体外式膜型人工肺)が使えないと家族に伝えることもあった。

 

病床逼迫から入院をあきらめ、自宅で医師の治療を受けていた高齢女性は、急速に悪化して「苦しい。苦しい」と言い、薬も飲ませられなかった。

搬送されたが、その日のうちに亡くなった。

それからは「大丈夫」のような本人や家族を期待させる言葉を言えなくなった。       

 

第4波で自宅を訪問した患者のうち、約40人が悪化して病院に搬送され、うち25人が亡くなった。

 

「自宅療養者について「リスクが低いとされている人でも急速に悪化する例も見て来た」

とA氏は振り返る。

その上で「自治体は、医師や看護師による自宅での医療体制のほか、食事などの生活支援も早急に整えてほしい」と訴える。

コメント;

現時点では軽症の段階で適応となる「抗体カクテル療法」(点滴)の普及に向けて政府が動き出しています。

しかし、在宅や外来では困難で現実問題として入院が望ましい治療法です。

開業医の協力も求められていますが、軽症とはいえ新型コロナ罹患患者の治療に携わることへの抵抗があります。

喫緊の課題のため、いい方法を見出していただきたいものです。

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.8.5

 

<関連サイト>

田村憲久厚生労働相は3日の閣議後会見で、新型コロナウイルスの感染拡大地域で入院できるのは重症者や重症化するリスクの高い患者に限定するとの政府方針について、中等症でも「比較的(症状が)軽い方は在宅(療養)をお願いしていく」と説明し、「場合によっては在宅で酸素吸入することもありえる」との認識を示した。

(朝日デジタル 2021.8.3)

 

<関連サイト>

普通の会話の数分後に急変 新型コロナの恐るべき特性 神奈川で相次ぐ療養中の突然死

新型コロナウイルスの感染が拡大する神奈川県で、軽症・無症状の感染者が自宅や宿泊療養施設での療養中に死亡する事例が相次ぎ、医療関係者が危機感を募らせている。

保健所の担当者らは患者の突然死を防ぐため、監視体制の強化に努めているが、感染者が増え続けるなかで、業務に手が回らなくなっている現状もあり、ジレンマにさいなまれている。

 

神奈川県内の保健所などによると、「第3波」とよばれる感染拡大のなか、昨年12月以降、軽症や無症状と診断され自宅や宿泊療養施設での療養中などに容体が急に悪化し亡くなった事例が、少なくとも計7件起きている。

それ以外にも、自宅で死亡が確認されてから陽性が確認されるといった事例もあり、患者本人や周囲が気づかないまま病状が進行し容体が急変することがあるというこの病気の恐ろしい特性を浮き彫りにしている。

 

既往症なくても

関係者に衝撃を与えたのが1月9日に県が発表した、大磯町の70代女性が亡くなった事例だ。

女性は昨年12月31日にせきなどの自覚症状が現れ、その後PCR検査を受け、年明け後の1月6日に陽性が判明。

7日、自宅で容体が急変し、救急搬送先の医療機関で死亡した。

 

県担当者が驚くのはその急変ぶりだ。

「同居家族と普通に会話をしていて、家族が別の部屋に行って戻ってくるそのわずか数分の間に意識を失っていたようだ。ついさっきまで元気にしゃべり、受け答えができた人が突然、倒れてしまった」という。

この女性に既往症はなかった。

参考・引用一部改変

産経新聞 2021.2.14