コロナ飲み薬、開発急ピッチ 海外先行、塩野義も最終治験
新型コロナウイルスの治療薬で、軽症者用の「飲み薬」の開発が進んでいる。
国内で承認されている軽症者用の薬は点滴薬しかなく、自宅でも使いやすい飲み薬があれば、新型コロナの脅威をおさえるカギになりうる。
ただ、専門家は、効果的に使うには課題もあると指摘する。
飲み薬は世界中でまだ開発段階だが、先行するのは海外の企業だ。
米メルクの「モルヌピラビル」は最終段階の治験に進んでいて、10月にも治験結果をまとめ、年内に米国で緊急使用許可(EUA)を申請する見込みだ。
米ファイザーも治験は最終段階で、年内のEUA申請をめざす。
いずれも米国への申請に伴い、日本の厚労省にも承認申請される可能性がある。
ほかにスイスのロシュも治験は最終段階に入っていて、2022年にも申請するとみられる。
国内企業では、塩野義製薬が29日に都内で会見し、最終段階の治験を開始したと発表した。
国内で無症状や軽症の患者約2千人の治験をし、早ければ年内に厚労省への承認申請をめざす。
薬は1日1回、5日間の服用を想定するという。
抗インフルエンザ薬として承認されている富士フィルム富山化学の「アビガン」は、昨年3月に新型コロナ向けの治験を始め、同10月に承認申請した。
しかし、厚労省の専門部会で審議継続となった。
国内で再び治験を始めていて、10月末まで続ける予定だ。
これらの飲み薬は、細胞に感染したウイルスの増殖を防ぐ。
薬の成分が、ウイルスが増えるために必要な酵素のはたらきを邪魔する。
処方や服用が比較的簡単で、自宅でも使うことができるのが利点だ。
国内で承認されている治療薬は現在5種類あり、「抗体カクテル療法」と呼ばれる「ロナプリーブ」と、「ソトロビマブ」が軽症者に使えるが、どちらも点滴薬だ。
ロナプリーブはすでに自宅療養者への往診でも使え、ソトロビマブも同じように使えるよう検討中だが、点滴中と経過観察を含めて数時間は医療従事者が患者に対応する必要がある。
軽者用「素早い処方が必要」
「第5波」のように自宅療養者が10万人を超えるようになると、すべての患者に対応することは難しい。
二つの点滴薬はいずれも製造に費用がかかるため高価になりやすく、買い上げる国の負担も大きくなる。
このため、飲み薬が実用化されれば、患者に広く使えるようになり、新型コロナを季節性インフルエンザのように扱うことに近づくという見方が政府内にある。
ただ、飲み薬とともに、感染の有無を安価に素早く判断できる検査のしくみを整える必要がある。
インフルエンザの場合、感染を疑われる患者が医療機関を受診すると、抗原検査の簡易キットを使ってすぐに診断し、飲み薬を処方できる体制ができた
ことで重症者を減らせるようになった。
たしかに、飲み薬は必要だ。
ただし、早い段階で使い、ウイルスがこれ以上増えないようにするための薬。
新型コロナに感染したと思ったらすぐに飲み薬を使える体制がなければ、効果を十分に発揮することはできない。
■ 開発中の主な新型コロナ飲み薬
企業名・薬名 開発の状況
メルク・モルヌピラビル 最終段階の治験。
早ければ年内申請
ファイザー・PF-07321332 最終段階の洽験。
早ければ年内申請
ロシュ・AT-527 最終段階の洽験。
22年にも申請
塩野義製薬・S-217622 最終段階の洽験。
早ければ年内申請
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2021.9.30