新型コロナの飲み薬、臨床試験で高い効果 入院リスク半減
米製薬大手メルクは1日、米英日などで臨床試験していた新型コロナウイルスの飲み薬について、軽症や中等症の患者が入院するリスクを半減できたと発表した。
高い効果が確認されたことを受け、米食品医薬品局(FDA)に近く緊急使用許可を申請する。
すでに薬の製造も始めており、各国の規制当局にも承認申請をするという。米ニューヨーク株式市場ではメルクの株価が急上昇した。
軽症者向けの治療薬では、抗体カクテル療法と呼ばれる抗体医薬が日本でも承認され、効果を上げているが、点滴薬なのが課題だった。
自宅療養を迫られる患者が増えた場合に備えて飲み薬への期待は大きく、米ファイザーやスイスのロシュ、塩野義製薬など国内外の製薬会社が開発を競っている。いずれも臨床試験の最終段階だ。
メルクが米バイオベンチャー「リッジバック・バイオセラピューティクス」と共同開発している飲み薬は「モルヌピラビル」。
12時間おきに計10回、5日間服用する。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、うまく行けば今年の年末までに承認される可能性がある。1人あたりの治療費は約700ドル(約7万7千円)で、抗体医薬の3分の1ほどになりそうだという。
臨床試験は米国や日本を含む世界各国で実施。
軽症や中等症の患者775人を二つのグループに分け、それぞれにモルヌピラビルと偽薬を飲ませた。
偽薬を飲んだ377人では、約1カ月後までに53人が入院し、8人が亡くなった。
一方、モルヌピラビルの385人は、入院が28人と半減、死者もいなかった。
メルクは1550人規模まで患者を増やして試験する計画だったが、今回の中間結果が良好だったため、第三者機関から追加の中止を推奨された。
緊急使用許可の申請を急ぐ。
生産も始めており、年内に1千万人分をつくるとした。
米政府はすでに170万人分の購入契約を結んだという。
ワクチン接種率が頭打ちとなるなか、効果の高い飲み薬が普及すれば、新型コロナで経済活動が制約されるリスクが軽減されるとの期待感が広がる。
自宅で治療できる飲み薬はきわめて必要だ。
治療のパラダイム(枠組み)を変える可能性がある。
試験では副作用の報告が少なく、広く使われる可能性がある。
もっとも現時点では、モルヌピラビルを使った際、症状の改善までにどれぐらい時間がかかるかなど、公表されていないデータもあり、効果がはっきりしないところもある。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2021.10.3