高齢者のおくすり

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その薬必要ですか? 高齢者、平均4.5種服用 飲み忘れも多く

多種類併用で有害も
年をとると病気にかかりやすくなり、治療のために薬に頼ることが多くなる。
高血圧症や高脂血症など慢性的な疾患をもっている人は服用する薬の種類も増える。
多種類の薬を使っているとその相互作用が出てくるほか、高齢者は使用を控
えた方がいい薬もある。
不適切な服用をどうやって防ぐのか・・・。



国立保健医療科学院(埼玉県和光市)の今井博久疫学部長は、今年3月に『高齢者には
不適切と考えられる薬のリスト』をまとめた。
米国などで使われている『65歳以上の人が使用を避けた方が望ましい薬剤の一覧表』
の日本版だ。

それによると、「常に使用を控えるべき薬剤」の例として長時間作用型ベンゾジアゼピン
系の睡眠薬をあげている。
高齢者では長い時間効くため、転倒を起こしやすく、骨折のリスクが高まるためだ。
短時間作用型ベンゾジアゼピン睡眠薬などの代替薬に変えた方がよいという。

米国では高齢外来患者の約40%が薬の有害作用を経験しているといわれる。
今井部長は「社会の高齢化が進むとともに、高齢者が使う薬が及ぼす影響を考えること
は大きな課題になってきている。
投薬ミスは論外だが、できるだけ多くの人が不適切な使用を避けるべき」とリストを
まとめた理由を説明する。
日本にはこうした基準は少ない。
日本老年医学会がまとめた『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2005』がこれまで
あった唯一のものといえる。

東京大学医学部付属病院老年病科の秋下雅弘准教授は、高齢者で薬の有害作用が増える
背景や対策として、次のことをあげる。

相互作用招く恐れ
まず、「複数の疾患をもっている」「慢性の病気が多い」という事情から、どうしても
多くの薬を長期間服用することになる点だ。

高齢者では臓器の機能が低下しているため、薬の量が処理能力を超えてしまいがち。
物忘れや視力低下などによって服用率も下がる。
「薬剤の数を最小限にするとともに、服用法を簡単にすることが肝要」と秋下准教授は
指摘する。
医師側の留意点として、「薬は少量から開始し、体の生理機能をみて用量を加減する」
ことが欠かせないとも。

同准教授は薬を使用する患者側の注意事項もあげる。
それは「むやみに薬をほしがらない」「他の診療所・病院などで処方された薬を正確に
医師に教える」「薬は定められた通りきちんと飲む」「薬を勝手にやめない」ことだ。

高齢者はいろいろな診療科を受診することが多い。
東京大学杏林大学名古屋大学京都大学金沢医科大学が2003年に老年科の
外来患者597人を調べたところ、高齢者では平均3.5種類の病気をもっており、
4.5種類の薬を服用していた。

服薬数が増えると有害作用の発現頻度も増す。
「多剤を併用することによって薬の相互作用や薬の飲み間違いを招きやすい」と秋下准教授。

処方履歴書きとめ
「薬のせいで眠気が強くなり、一日中ボーッとするなど生活に支障をもたらす体調の変化は
正直に医師に言ってほしい」と筑波大学臨床医学系精神医学の水上勝義准教授は促す。
筋弛緩作用がある薬や血圧が下がりやすい薬を使っているときは、立ち上がったときに
ふらふらっとし、転倒して骨折することにもなりかねない。
医師に説明して、自分に一番適した薬を選んで使ってもらうのが最良だ。

認知症の高齢者の場合、自分では体調の変化などを判断できない問題もある。
「そういったときは家族など周りが代わってみてあげるべきだ」と水上准教授。
ふらつきや便秘、眠気などに気をつける。
決められた通りに薬を服用できているか、あるいは間違って
のみすぎてはいないかを見ることも大切だ。

服薬カレンダーをつくり、薬を飲んだらそれに印を付ける、曜日ごとにピルケースを使うこと
なども飲み忘れを防ぐ手だてだ。
お薬手帳」のように診療所・病院ごとに処方履歴を書きとめ、いま自分がどんな薬を服用
しているかを知ることも、薬の相互作用を防ぐのに効果的だ。
医師に言いにくいケースも多いので、日ごろよく相談できる”かかりつけ薬局”をもっている
ことも役に立つ。

「何よりも と秋下准教授は念押しする。
「なぜこの薬を使うのか、なぜこの薬を飲まなければならないのかを患者が理解することが
一番大切」と。
それが、勝手に服薬をやめるなど誤った薬の飲み方を防ぐことになるという。

出典 日経新聞・朝刊 2008.5.25
版権 日経新聞

<コメント>
お薬は、きちんと服用すると逆に怖いこともあります。
それは薬には副作用がありうるからです。
医療提供側も患者さんも「クスリはリスク」ということを常に念頭におかなければなりません。
最近、病院などでは新たに処方する場合でも1か月ないしはそれ以上を長期投薬するケースが
出てきました。
おまけに、予約診療ということで何か体調の変化が起こっても途中で診察が受けにくいという
雰囲気があります。
お薬を飲んでいてからだの具合がおかしくなったらまずは副作用を疑う必要があります。

そういうことがあったらどうするか。
病院によって対処法が違いますが、薬袋に対処法が書いてあるかも知れません。
日中なら、薬剤師や担当医や看護師が対応してくれると思います。
まずは我慢して服用を続けるのではなく、医療機関に相談してください。

個人開業医が主治医の場合には、気軽に相談できるというメリットがあることもお忘れなく。
そして何よりも毎日同じ医師が外来をやっています。
当たり前のことですが。

我田引水の話になってしまいました。


読んでいただいて有難うございます。
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