静脈血栓塞栓症

新着の週間朝日(2009.1.16号)の「新・名医の最新治療」に「静脈血栓塞栓症
が紹介されていました。

2002年3月、日韓ワールドカップを目前に、高原直泰(たかはらなおひろ)選手は静脈血栓
塞栓症という病気に襲われました。

静脈血栓塞栓症は、別名エコノミー・クラス症候群(最近はロング・フライト症候群、
長時間飛行症候群といわれます)とも呼ばれ、長時間にわたって圧迫された足の血管内に
生じた血栓が、はがれて血流に乗り、肺動脈(肺へ静脈血を送る血管)を詰まらせる病気で、
突然死の原因にもなります。

この高原選手。
2006年のワールドカップドイツ大会の際には、ドイツへの移動に際しては、本人だけは
日本サッカー協会からファーストクラスがあてがわれたというエピソードがあります
ジーコ監督以下他のスタッフはビジネスクラスを利用)。
エコノミー・クラス症候群という名前がついていることからビジネスクラスよりファースト
クラスが、より「静脈血栓塞栓症」にならないだろうという発想だったのでしょうか。


ひざや股関節などの下肢(かし)の整形外科手術や腹部手術(特に骨盤内の悪性腫瘍)を
受けた患者ではこのリスクが高いといわれ最近では術中から予防処置を行われるように
なってきています。

日本での年間症例数は約4,000例(2000年)とそれほど多い病気ではありませんが最近では
増加傾向にあります。
新潟地震の際に自家用車の中で寝泊りしていて発症した方がみえたというのは有名な話
です。
したがって災害が起きれば気をつけなければいけない病気です。

発生頻度的には欧米に多く、日本では少なく人種別では黒人に多く、黄色人種に少ないと
いわれています。
年齢別には高齢者に発症しやすいのが特徴です。

以下、週刊朝日の記事からです。
■急性のものは一度発生すると死亡率は約3割。
■肺血栓塞栓症による死亡の4割強は、発症から1時間以内に死亡。
■低リスクでは早期離床と足関節を動かすなどの運動が、中リスクでは弾性ストッキング
あるいは空気圧で足をマッサージする「間欠的空気圧迫法」が推奨されている。


<関連サイト>
静脈血栓塞栓症
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%99%E8%84%88%E8%A1%80%E6%A0%93%E5%A1%9E%E6%A0%93%E7%97%87

血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)は、主に下肢の深部静脈(大腿静脈・
膝窩静脈など、体の深部にある静脈)に形成された血栓が遊離して血流に乗って肺に運ばれ、
肺動脈を閉塞して急性の呼吸循環障害をきたす疾患です。

深部静脈に血栓ができることを深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)、肺血栓
塞栓症と併せて、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)と呼びます。



その時、高原選手に何が起きたか・・・
http://glaxosmithkline.co.jp/press/vte/



読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(~H20.12.10)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(~H20.5.21)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)