国内初の「心肺同時移植」手術

脳死判定:初の心肺同時移植、手術が終了…大阪大病院
■日本で初めての心肺同時移植手術は17日夜、大阪大病院(大阪府吹田市)で終わった。
■心臓の奇形や肺の異常がある重い先天性の病気「アイゼンメンジャー症候群」の30代の男性に、心臓と左右の肺を接続した状態で移植された。同病院によると、患者の容体は安定しているという。
■17日夜会見した阪大病院の澤芳樹教授(心臓血管外科)は「手術は予想以上にスムーズに経過した」と話した。
■肝臓は九州大で50歳代男性、腎臓は兵庫医科大で50歳代の男性、もう一方の腎臓と膵臓(すいぞう)は東京女子医科大で40歳代の女性にそれぞれ移植手術が行われる。

■心肺移植は81年、米国で初めて実施され、今も年50~100例が世界で行われている。
■心臓や肺などの単独の移植より感染症や拒絶反応が起こりやすく、術後の管理がむずかしい。
■臓器提供者と血液型などが合致することや、体格が似ていることなどが条件になる。
■日本では日本臓器移植ネットワークが03年から、移植を希望する患者の登録を開始したが、提供者が少ないうえ、心臓と肺の両方が移植に適した状態で提供された例がなく、今回が第1例となった。


臓器移植法に基づく脳死判定は80例目で、脳死移植が行われたのは79例目。
臓器移植法は97年に施行され、99年に法施行後初の脳死判定があり、心臓などが提供された。これまでに脳死した人からの提供は心臓で62件、肺は56件になる。
■心肺同時移植は、臓器提供者から心臓と左右の肺をすべてつながった状態で取り出し、患者に移植する手術。
欧米などで3000例以上行われている。
心肺同時移植の希望者登録は2001年から始まり、手術が予定される男性を含め、4人が登録している。(これまで5人が登録したが、待ちきれず1人は海外渡航移植の道を選択した)
■国内で心肺同時移植ができる施設は大阪大と、岡山大との合同チームがある国立循環器病センター(大阪府吹田市)の計2カ所。


以下は、メルクマニュアル医学百科の「心肺移植」からです。
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec16/ch187/ch187f.html
■移植用の肺を保存することは難しいので、肺が手に入ったらできるだけすみやかに肺移植を実施します。
■肺は、生きているドナーからのものでも、死亡直後のドナーからのものでも移植できます。
ただし、生きているドナーは、片方の肺しか提供できませんし、一般に、提供するのは肺葉という複数ある区画のうちの1つのみです。
一方、死んだ人からは、両方の肺をもらうことも、心臓と両肺をもらうこともできます。
■肺は細菌や病原菌のいる空気に絶えずさらされているため感染症にかかるリスクが高く、ときに気道との接続部位が治りにくいことがあります。
■傷あとに生じた組織のために気道が狭くなり、息が通りにくくなって息切れを起こします。この合併症の治療には、気道にステント(精細な金網の管)を埋め込むなど、気道を広げる処置をします。
■肺移植に対する拒絶反応の診断と治療は容易ではありません。肺移植を受けた人の80%以上が、移植後1カ月以内に拒絶反応の徴候を示します。症状は、発熱、息切れ、脱力感などです。脱力感は、移植された肺が十分な酸素を体内に供給していないことから起こるものです。その後気道が狭まり、徐々にふさがっていくのも、じわじわと拒絶反応が起きているしるしです。肺移植の拒絶反応には、免疫抑制薬の量を増やすか、種類を替えるか追加することで対処します。

<追加1>
ちょっと気になる記事がありました。
患者さんは5年間、ドナーが現れるのを待ってみえたとのことでした。
ニュースでは、心臓の奇形や肺の異常がある重い先天性の病気「アイゼンメンジャー症候群」とのこと。
もう少し詳しく知りたいところです。

話題0063 心肺同時移植「必要なし」
http://www2.kpu-m.ac.jp/~ccn/topics/topics/w0063.html

<追加2>
朝日新聞・朝刊 2009.1.18」に患者さんのことが少し書かれていました。

移植を受けた患者は、5歳でアイゼンメンジャー症候群と診断。
10代の後半から血を吐くようになり、20代から在宅で酸素を吸引しながら暮らした。
03年から吐血がひどくなり、大量に吐くことも。
心臓の奇形が複雑なため、心肺同時移植の対象と判断され03年8月、待機者として登録された。
<コメント>
「在宅で酸素を吸引」は「在宅で酸素を吸入」の間違い。
「吐血がひどくなり」は多分「喀血がひどくなり」の間違い。
http://health.goo.ne.jp/medical/chart/014.html