疲れを感じる原因となるたんぱく質FF

ちょっと古い記事で恐縮ですが、1年前にこんな記事が出ていました。


以下引用

疲労感じる原因たんぱく質を発見 慈恵医大教授ら
疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。
このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。
元気なマウスに注射すると、急に疲れた。疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。

近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。
水があると眠れないマウスを、底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。
2時間泳がせた場合も、同様に変化した。どちらも休息後は平常値に戻った。

さらに、FFを元気なマウスに注射すると、大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。
疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。
運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、原因物質ではないことが数年前に実証されている。

近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。

出典 asahi.com 2008.9.4
版権 朝日新聞社

このFFについてはNHKの人気番組「ためしてガッテン」でもとりあげられました。
大変な反響だったようですが「世紀の大発見!」なんて大上段なタイトルをつけてしまっていいのでしょうか。
私達医師は「学会で発表された」ということより、「一流の医学雑誌」に掲載されたということで初めて「大発見」を評価します。
そんなにすごい発見なら「Nature」や「Science」誌などに掲載される筈です。
しばらく評価については差し控えたいと思います。


ためしてガッテン」 世紀の大発見!頑固な疲れの原因“物質F”
http://cgi2.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20091104


ついでに
FILE050: 「“あ~疲れた”の正体」
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20081007.html#thistime


<関連サイト>
頑固な疲れの原因“物質F”やFF ・・・ って、結局なんだ?
http://intmed.exblog.jp/9216131/
(今回のNHKのこの番組について批判的な意見が聞かれます)

I'M SO TIRED. 疲労の原因物質FF
http://harahorohirehare.blog.ocn.ne.jp/blog/2009/11/im_so_tiredff_5.html
(同じくちょっと批判的)










<番外編>
#<新型インフル>ワクチン接種後に死亡 70代、肺に持病
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091113-00000094-mai-soci
厚生労働省は13日、新型インフルエンザワクチンを接種した富山県の70代男性が、接種翌日に急性呼吸不全で死亡したと発表した。
男性には肺気腫の基礎疾患があり、主治医は「持病が原因で、ワクチン接種との関連はない」と判断している。
厚労省は専門家に因果関係の検討を依頼し、安全性を改めて評価する。
ワクチン接種後の死亡例は初めて。

厚労省によると、男性は11日午後、通院先の医療機関でワクチンの接種を受けた。
特に異状はなかったが、翌日夜、家族が死亡しているのを見つけた。
男性は肺の機能が低下し、慢性呼吸不全の状態だったという。

使われたワクチンは化学及血清療法研究所(熊本市)の製品で、同じ製造番号のワクチンは約2万6500本(約48万回分)出荷されている。
13日までに、この死亡例以外に58件の副作用報告があったが、頻度は他製品と大差ないという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091113-00000094-mai-soci
出典 毎日新聞 2009.11.13
版権 毎日新聞社

<コメント>
ついに心配していた事態が起きました。
医療従事者への接種が始まっていますが副反応の報告はないのでしょうか。
「持病が原因で、ワクチン接種との関連はない」なんて呑気なコメントを出していますが、歩行か車いすか携帯酸素ボンベか知りませんが外来へ来れるような状態の人が接種の翌日に死亡。
これは「因果関係はない」ではなく、「因果関係がないとはいえない」または「原因の可能性がある」または「原因である」のはずです。

産経新聞2009.11.13では「重度の肺気腫」「主治医と警察官による検視の結果、男性の死因は急性呼吸不全で、ワクチン接種との因果関係はないという」「医療機関からこれまで厚労省に寄せられた新型インフルワクチンの副作用報告は672件。9日までに寄せられた536件のうち重症例は39件」「季節性用では昨年約4740万人が接種し、2人の死亡が報告されている」と報道しています。

このようにアクシデントがあっても基礎疾患のせいにされるだろうということは予想していました。
この主治医のコメントは大いに問題があります。

私自身も接種していないし、そんな自分が今後接種を希望している方々に接種していいのだろうかと悩んでいます。




読んでいただいて有難うございます。
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