アルツハイマー病、治療研究の最新事情

昨夜のTV番組「報道ステーション」で「アルツハイマー病、治療研究の最新事情」という特集を放送していました。
番組の最後の限られた時間での放送で内容は以下の通りです。
タイトルに惹かれて観られた方も多いのではないでしょうか。


認知症の半分を占めるアルツハイマー病は、これまで発症して初めてわかる病気だった。
アルツハイマー病の原因物質とされる“アミロイド蛋白”。
発症の十数年前から脳に蓄積し始めることもわかってきたが、アミロイド蛋白が脳に溜まっているかを確認するには、脳を解剖する以外、方法はなかった。
しかし、画像診断の技術が進歩を遂げた今、特殊なカメラを使い、脳内にアミロイド蛋白があるかどうかわかるようになった。
さらに、アミロイド蛋白を根本的に取り除く、新薬の開発が急速に進み、世界20カ国以上の医療施設で共同治験が行われている。
これまで難しかったアルツハイマー病の予測と完治へ、希望の光が見え始めてきた。
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/news/detail.php?news_id=7772


番組の中で認知症の不安に怯える2人を紹介していました。
そのうちの1人は、すでに特殊なカメラ(PETカメラ)でアミロイド蛋白の脳への沈着が発見されている方です。
いわば「がんの宣告をされた」ような方で多くのアルツハイマー病に関する本を読んで見えました。
読んだ本の内容をノートに書き写したり、小走りで歩いたり、アミロイド蛋白沈着予防によいと思われるオイルを飲んだり、職業の保険勧誘の仕事を却って増やしたり実に多くの涙ぐましい努力を日々していました。
これらの効果のほどは不明ですが、定期的なPETカメラによる認知症チェックでアミロイド蛋白は増えていないという医師からの診断を受けていました。

もう1人は姉が認知症になった方です。
日頃数独パズルなどをやって何とか姉のようにはなりたくないという努力をしてみえる方です。
勇を奮って、同じ施設を受診し、後日のPETカメラの結果では異常なしということで小躍りする光景が放映されました。

問題の新薬の開発。
「企業もビッグビジネスのため開発の段階や実用化は公表されない」という呆気ないコメントで特集は終わりました。
PETカメラでアミロイド蛋白の沈着が判明しても予防薬がなければ罪作りです。
何となくタイトルとは異なる尻切れトンボの内容ではありました。

<関連サイト>
アルツハイマー病の主な原因として考えられているのがアミロイド仮説です。
脳で作られるタンパク質の一部が切り出されてアミロイドβ(ベータ)タンパク質と呼ばれる物質が作られます。
このアミロイドβタンパク質は、互いにくっつきやすく、脳に蓄積すると老人斑を形成し、神経の活動
を妨げ、やがては死滅させると考えられています。
私たちはアメリカのピッツバーグ大学で開発されたPIBという診断薬を使ったPET検査の研究を進めています。PIBはアミロイドβタンパク質に良く集まる性質があるので、注射して血液の
流れに乗ったPIBは脳に行き、そこにアミロイドβタンパク質があるとそこにくっついて留まるの
で、PETカメラで画像に撮影することができます。アルツハイマー病の早期診断や、アミロイドの
蓄積を減らす薬の有効性の評価に役立つと期待されている診断技術です。
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/books/tihou_pdf/29.pdf
(東京都老人総合研究所のサイトです。きれいなPET画像を折り込んでくわしく、「PETと脳のアミロイド」が解説されています。)

武田病院画像診断センター PETによるがん検診
西暦2000年の時点で、65歳以上の高齢者は人口の17.4%を占めています。
そのうち、ほぼ7%にあたる約160万人が痴呆症の患者であり、そのうちの約1/4がアルツハイマー病と言われています。
高齢化が進むとともに、痴呆症の患者数は2010年には226万人まで増加し、アルツハイマー病の患者数も80万人にまで増加すると予測されています。
アルツハイマー病の初期は、記憶・認知機能などの障害によって診断されますが、PET画像ではCT、MRIなどで病変が出現する前に代謝障害の異常が認められます。
アルツハイマー病では、頭頂葉での代謝障害がみられることが特徴です。
またアルツハイマー病では、運動領野の前頭葉の機能が残存するため痴呆症状として"徘徊"が多くみられます。
因みに、血管性痴呆では前頭葉代謝障害が出るため、痴呆症状として"寝たきり"が多くなります。
もし、アルツハイマー病をご心配されるのならば、脳ドックよりもPET-CT検診をおすすめします。
http://topic.takedahp.jp/petct1.htm

報道ステーションアルツハイマー病・認知症
■アミロイドPET検査:一式32万円・保険適用外
■根治治療薬が世界20か国以上で治験中であり、副作用と効果を確かめる最終段階にきているとのことです。
http://topicsnow.blog72.fc2.com/

認知症の原因 アルツハイマー病の早期診断が可能に!
認知症の原因 アルツハイマー病の早期診断が可能に!アルツハイマー病の原因物質とされるβ(ベータ)アミロイドをPET検査で検出。もの忘れとがんの総合人間ドックの申し込みを受付中です。
財団法人脳神経疾患研究所付属総合南東北病院
【検査費用】
40万円(税込)※人間ドックであるため公的医療保険は適用されません。
http://japan.internet.com/release/46915.html
(この価格を高いとみるか安いとみるか。発症予防薬が実用化された後なら安いでしょうが。またその薬剤が保険適応になればこの検査も保険適応に。今の医療費高騰が糾弾される医療事情ではならないか。)

PETによるアミロイドイメージング - 先端医療センター研究所
イメージ 1

PIB によるアミロイドの PET イメージング。健常者はアミロイドが蓄積せず、 PIB の集積がほとんど見られない。
アルツハイマー病患者では、脳の大脳皮質に広く PIB の強い集積を認め、アミロイドが蓄積していることを示している。
http://www.ibri-kobe.org/laboratory/re_de_1.html


読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
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