集団食中毒

集団食中毒の記事が朝日新聞・朝刊 2010.2.11に載っていました。
題して「集団食中毒 国の動き鈍く」。
サブタイトルは「焼き肉チェーン店 被害続くが・・・」です。

まずは「集団食中毒」の定義から考えてみたいと思います。

集団発生やアウトブレイクという言葉は、特定の疾病が、特定の(限局した)地域・時期に集中して発生する場合に使われる表現です。

かなり古い資料で恐縮ですが、昭和45年4月14日厚生省公衆衛生局長通知「伝染病発生特殊事例報告について」に記載されている「集団感染」は以下のごとくです。

同一感染経路によることが明らかな場合: 同一施設内で1週間以内に2例以上の発生。
感染経路が明らかでない場合: 同一施設内で、1週間以内におおむね10人以上の発生。
(同居している家族の場合は除外)

結核の場合には独自の定義もあるようです。

『同一の感染源が、2家族以上にまたがり、20人以上に結核を感染させた場合をいい、発病者1人を6人の感染者に相当するとして感染者数を計算するものとする』
厚生労働省結核感染症課長通知 平成19年3月29日付健感第0329002号)

一方、WHOなどでは
『予期されうる以上 の症例が、特定の地域・グループ・期間に発生すること。又は 特定の 疾患が複数確認されること。』
といったようにニュアンスが変わります。
1例や2例でもアウトブレイクという言葉が使われるわけです。


さて、新聞記事にもどります。

新聞の内容は行政の縦・横の風通しの悪さを指摘しています。


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(画像をクリックすると拡大します)

出典 朝日新聞・朝刊 2010.2.11
版権 朝日新聞社



私自身の今までの経験を少し話したいと思います。
間違いなく食中毒という患者さんが来院しても保健所の対応が非常に鈍いのです。
食中毒は、黄色ブドウ球菌セレウス菌貝毒を別にすれば1日以上経ってから症状が出ることが多いのです。
一番多いキャンピロバクターノロウイルスによる食中毒では、普通は2日以上経ってから症状が出ます。
従って、調理する原材料は残っていないという判断が保健所側にも働きます。
要するに最初から「証拠となるべき食材もなく、他の食中毒情報も寄せられていません」という答えを最初から容易されている節があるのです。
もっとも、「あたった」という自覚がなければ当人は医療機関を受診しない場合が多く、医師も食中毒の診断がつけれなければその前の段階で終わってしまいます。

保健所側の対応も随分のんびりしたもので、当方は診察時間中に連絡をいとるのですが、波長が合いません。
結果もフィードバックされないため自然と電話で保健所に報告することが少なくなって来ます。

保健所の時間外対応もまったく期待できません。
午後5時以降や土日祭日には対応していないのです。

当人や関係者を除いては「お役人」の好きな方は少ないと思います。
保健所に連絡する度に、先方には「お役人」らしさを感じてしまいます。
その結果、連絡をとることに躊躇するということになってしまいます。

そんなことでは勿論いけないのでしょうが。



読んでいただいて有難うございます。
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